耳下腺のしこりを押すと痛い原因と対処法|症状別に解説

耳の前から顎のあたりにしこりや腫れを感じていませんか?

💬 「押すと痛い…これって何?」
💬 「病院、行くべき?でも何科に行けばいい?」

そんな不安、この記事を読めば原因・受診タイミング・治療の流れまでまるごと解決できます。

耳下腺(じかせん)のしこりは、良性から悪性まで原因がさまざま放置すると手遅れになるケースも。正確な診断には専門的な検査が必要です。

🚨 こんな症状があるなら要注意!

  • 📌 2〜4週間以上しこりが続いている
  • 📌 顔面麻痺・しびれを伴っている
  • 📌 しこりが急激に大きくなっている

目次

  1. 耳下腺とはどんな器官か
  2. 耳下腺にしこりができる主な原因
  3. 押すと痛い場合に考えられる疾患
  4. 押しても痛くない場合に考えられる疾患
  5. 耳下腺のしこりに伴う症状のチェックポイント
  6. 受診すべきタイミングと診療科
  7. 耳下腺のしこりに対する検査と診断
  8. 治療の選択肢と流れ
  9. 日常生活で気をつけること
  10. まとめ

この記事のポイント

耳下腺のしこりを押すと痛い場合は急性耳下腺炎・唾石症・おたふく風邪などの炎症性疾患が多く、痛みがなくても良性・悪性腫瘍の可能性があるため、2〜4週間以上続く場合や顔面麻痺を伴う場合は耳鼻咽喉科への早期受診が重要。

💡 耳下腺とはどんな器官か

耳下腺は、唾液腺のなかでも最も大きな腺組織です。左右それぞれに一つずつ存在し、耳の前下方から顎の角(エラのあたり)にかけて広がっています。耳下腺から分泌された唾液は、ステノン管(耳下腺管)という細い管を通り、頬の内側から口腔内へと流れ込みます。

唾液は食べ物の消化を助けるだけでなく、口腔内を潤して粘膜を保護したり、細菌の増殖を抑えたりと、多くの重要な役割を担っています。耳下腺はこの唾液の約25〜30%を産生すると言われており、特に食事中に多くの唾液を分泌します。

また、耳下腺の周囲には顔面神経が走っています。顔面神経は顔の表情筋を動かすための神経であり、耳下腺に関連した病気や手術の際には、この神経への影響がとても重要な問題となります。耳下腺に何らかの異常が生じた場合、しこりや腫れとして感じられることが多く、場合によっては顔面の動きにも影響を及ぼすことがあります。

Q. 耳下腺のしこりを押すと痛い場合に考えられる病気は?

耳下腺のしこりを押すと痛みがある場合、急性耳下腺炎(細菌性)、唾石症、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、慢性耳下腺炎、リンパ節炎などの炎症性疾患が主な原因として考えられます。ただし、悪性腫瘍が神経に浸潤した場合にも痛みが生じることがあるため、自己判断は禁物です。

📌 耳下腺にしこりができる主な原因

耳下腺にしこりができる原因はさまざまで、大きく「炎症性」「腫瘍性」「その他」に分類されます。それぞれについて理解しておくことが、適切な受診につながります。

✅ 炎症性のもの

炎症によるしこりや腫れは、感染症や免疫反応などが原因で起こります。代表的なものとして、細菌や唾液腺結石による急性耳下腺炎、ウイルス感染によるおたふく風邪(流行性耳下腺炎)、慢性的な炎症を繰り返す慢性耳下腺炎などが挙げられます。炎症性の場合は、痛みや発赤、発熱などの症状を伴うことが多いのが特徴です。

📝 腫瘍性のもの

耳下腺には良性腫瘍と悪性腫瘍のどちらも発生します。耳下腺腫瘍のうち約70〜80%は良性とされており、代表的なものとして多形腺腫(たけいせんしゅ)やワルチン腫瘍があります。悪性腫瘍としては、粘表皮癌や腺様嚢胞癌などがあり、耳下腺悪性腫瘍全体のなかでもこれらが比較的頻度が高いとされています。腫瘍性のしこりは、痛みを伴わないことが多い傾向にありますが、必ずしもそうではありません

🔸 その他

リンパ節の腫れがしこりとして触れることもあります。耳下腺の周囲にはリンパ節が多く存在しており、風邪や歯の炎症、皮膚のトラブルなどをきっかけにリンパ節が腫れることがあります。また、シェーグレン症候群のような自己免疫疾患でも耳下腺が腫れることがあり、この場合は口の乾燥(ドライマウス)や目の乾燥(ドライアイ)などの症状を伴うことが特徴的です。

✨ 押すと痛い場合に考えられる疾患

耳下腺のしこりを押したときに痛みを感じる場合、炎症性の疾患が関与していることが多いです。代表的な疾患をいくつか紹介します。

⚡ 急性耳下腺炎(細菌性)

急性細菌性耳下腺炎は、口腔内の細菌が耳下腺管を逆行して腺組織に侵入することで発症します。高齢者や口腔内の衛生状態が悪い方、脱水状態の方、抗コリン薬など唾液分泌を抑制する薬を服用している方に多く見られます

症状としては、耳下腺の急激な腫れと強い痛みが特徴で、押すとさらに強い痛みを感じます。皮膚が赤くなったり、発熱が出たりすることも多く、口を大きく開けようとするだけで痛みが走ることもあります。重症化すると膿瘍(うみのたまり)を形成することもあるため、早めの受診が必要です

🌟 唾石症(だせきしょう)

唾石症とは、唾液腺の管や腺組織の中にカルシウムなどのミネラルが沈着して石(結石)ができる病気です。耳下腺よりも顎下腺(がっかせん)に多い疾患ですが、耳下腺にも発生します

唾石が管を塞ぐと唾液の流れが妨げられ、食事のときに唾液分泌が増えるタイミングで痛みや腫れが起きることが特徴です。「食事をすると耳の前が痛くなる」「食後しばらくすると症状が和らぐ」というパターンがあれば、唾石症が疑われます。炎症を伴うと押したときの痛みも強くなります。

💬 流行性耳下腺炎(おたふく風邪)

ムンプスウイルスの感染によって起こる流行性耳下腺炎は、いわゆる「おたふく風邪」として知られています。子どもに多い病気ですが、大人でもワクチン未接種の場合や免疫が不十分な場合は発症します

耳下腺が両側または片側に腫れ、押すと痛みがあります。発熱、倦怠感、食欲不振なども伴うことが多く、通常は数日から1〜2週間で自然に軽快します。ただし、成人が罹患した場合は、精巣炎(男性の場合)や卵巣炎、髄膜炎、難聴などの合併症リスクが高まるため注意が必要です。

✅ 慢性耳下腺炎

急性耳下腺炎を繰り返したり、唾石症が慢性化したりすることで、慢性耳下腺炎に移行することがあります。また、子どもに多い反復性耳下腺炎という病態もあり、これは原因が完全には解明されていませんが、細菌感染や免疫の問題などが関与していると考えられています。

慢性耳下腺炎では、耳下腺が慢性的に硬くなったり、しこりのように触れたりすることがあります。押したときに軽度の痛みや不快感を感じる場合もあります。急性増悪(症状が急に悪化すること)を繰り返すことが特徴で、その際は痛みや腫れが強くなります。

📝 リンパ節炎

耳下腺周囲のリンパ節が感染や炎症によって腫れた場合も、しこりとして触れることがあります。歯の根っこの炎症(根尖性歯周炎)、中耳炎、皮膚感染症などが原因となることが多く、リンパ節炎でも押すと痛みを感じることが一般的です。

風邪などの上気道感染症の後に一時的にリンパ節が腫れることもありますが、通常は感染が治まるとともに腫れも引いていきます。2〜4週間以上にわたって腫れや痛みが続く場合は、別の疾患を考慮した精密検査が必要です。

🔸 耳下腺腫瘍(一部)

良性・悪性にかかわらず、腫瘍が急速に増大したり、内部に出血や壊死が起きたりした場合には痛みを伴うことがあります。また、悪性腫瘍が周囲の神経や組織に浸潤すると、圧痛だけでなく自発痛(何もしなくても感じる痛み)や顔面神経麻痺を引き起こすことがあります。腫瘍によるしこりは一般的に痛みを伴わないことが多いですが、痛みがあるからといって必ずしも炎症性であるとは言えません。

Q. 食事のたびに耳の前が腫れて痛む原因は何ですか?

食事のタイミングで耳下腺が腫れて痛む場合、唾石症(だせきしょう)が疑われます。唾液腺の管にカルシウムなどが沈着してできた結石が唾液の流れを妨げ、食事中に唾液分泌が増えることで痛みや腫れが起きます。「食後しばらくすると症状が和らぐ」というパターンが典型的な特徴です。

🔍 押しても痛くない場合に考えられる疾患

押しても痛みがないしこりの場合、腫瘍性疾患の可能性をより慎重に考える必要があります

⚡ 多形腺腫(良性混合腫瘍)

耳下腺良性腫瘍のなかで最も多いのが多形腺腫です。中年女性に比較的多く、ゆっくりと増大する、表面が平滑で硬めのしこりとして触れます。痛みを伴わないことがほとんどで、長期にわたって存在することもあります。良性ですが、放置すると悪性化(悪性多形腺腫)するリスクがあるとされているため、診断がついた場合には手術による摘出が推奨されます

🌟 ワルチン腫瘍(腺リンパ腫)

ワルチン腫瘍は耳下腺良性腫瘍の中で多形腺腫に次いで多い腫瘍で、中高年の男性に多く、喫煙との関連が指摘されています。両側に発生したり、複数のしこりができたりすることがあるのも特徴です。柔らかく弾性のあるしこりとして触れることが多く、痛みは通常ありません。

💬 耳下腺悪性腫瘍

悪性腫瘍には粘表皮癌、腺様嚢胞癌、腺房細胞癌などさまざまな種類があります。悪性腫瘍の場合、初期には痛みがないことも多く、しこりが徐々に増大していきます。進行すると顔面神経麻痺(顔の片側が動きにくくなる)や皮膚への浸潤、リンパ節転移などが起こることがあります。しこりが2〜4週間以上続く場合や増大傾向がある場合は、必ず専門医を受診してください

✅ シェーグレン症候群

シェーグレン症候群は、自己免疫の異常によって唾液腺や涙腺が障害される病気です。中年女性に多く、両側の耳下腺や顎下腺が腫れることがあります。口や目の乾燥感が主な症状で、腫れたしこりは比較的柔らかく、痛みを伴わないことが多いです。血液検査や組織検査によって診断されます。

💪 耳下腺のしこりに伴う症状のチェックポイント

耳下腺のしこりを評価する際には、以下のような点を観察・確認することが大切です。これらは受診時に医師に伝えることで、診断の助けになります。

📝 しこりの硬さと性状

しこりが柔らかくて動きやすいか、硬くて動きにくいかによって、考えられる疾患が異なります。炎症性のしこりは周囲と癒着して動きにくいことがありますが、炎症が治まると動くようになることもあります。腫瘍性のしこりは一般的に硬めで、悪性の場合は周囲組織に固定されて動かないことがあります

🔸 しこりの大きさと変化

しこりがいつ頃から気になり始めたか、徐々に大きくなっているか、食事のタイミングで変化するかなどを記録しておくと診断に役立ちます。食事のたびに腫れて食後に引くという変化は唾石症を疑わせ、数週間〜数ヶ月かけてゆっくり大きくなる場合は腫瘍性を考えます

⚡ 痛みの程度と性質

押したときだけ痛いのか、何もしなくても痛みがあるのか、食事のときに特に痛むのかといった痛みの性質も重要な情報です。自発痛がある場合は、炎症や神経への浸潤などを考慮する必要があります

🌟 発熱や全身症状の有無

発熱、倦怠感、食欲不振などの全身症状を伴う場合は、感染症(急性耳下腺炎やおたふく風邪など)の可能性が高まります。一方、全身症状がなく局所のしこりだけが存在する場合は、腫瘍性疾患も視野に入れて検査を行う必要があります。

💬 顔面の動きに異常があるか

顔面神経麻痺の症状(顔の表情が非対称になる、目が閉じにくい、口角が下がるなど)が伴う場合は、非常に重要なサインです。耳下腺の悪性腫瘍が顔面神経に浸潤しているケースが疑われるため、緊急性が高い状況として早急に専門医を受診してください

✅ 口の中の乾燥や目の乾燥

口の乾燥(ドライマウス)や目の乾燥(ドライアイ)が著明な場合は、シェーグレン症候群の可能性があります。食事中につばが出にくくなった、目がゴロゴロすると感じるなどの症状が伴っていれば、血液検査も含めた精密検査が必要です。

Q. 耳下腺のしこりが痛くない場合も受診が必要ですか?

痛みがない耳下腺のしこりでも受診が必要な場合があります。多形腺腫やワルチン腫瘍などの良性腫瘍、さらには悪性腫瘍も初期には痛みを伴わないことが多いためです。特に2〜4週間以上しこりが続く場合や徐々に大きくなる場合、顔面の動きに異常がある場合は、速やかに耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診してください

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🎯 受診すべきタイミングと診療科

耳下腺のしこりに気づいたとき、どの程度で受診すればよいのか迷う方も多いと思います。以下のような状況であれば、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

まず、強い痛みや発熱を伴う場合は、急性の感染症が疑われるため、できるだけ早く受診してください。抗菌薬による治療が必要な場合があります。次に、2〜4週間以上にわたってしこりが続いている場合や、しこりが徐々に大きくなっている場合も、腫瘍性疾患を除外するために受診が必要です。さらに、顔面神経麻痺の症状を伴う場合は、悪性疾患の可能性があるため、できる限り早急に専門医を受診してください。

受診する診療科としては、耳鼻咽喉科(頭頸部外科)が最も適しています。耳下腺や唾液腺の疾患を専門的に扱う診療科であり、必要な検査から治療まで一貫した対応が可能です。かかりつけ医(内科や一般外科など)に相談してから紹介を受けるという方法も一般的です。

なお、アイシークリニック池袋院のような形成外科・美容外科クリニックでも、皮膚や皮下のしこりについては対応している場合がありますが、耳下腺そのものの疾患が疑われる場合は耳鼻咽喉科・頭頸部外科への受診をおすすめします

💡 耳下腺のしこりに対する検査と診断

耳下腺のしこりに対しては、問診と視診・触診のほかに、いくつかの検査が行われます。それぞれの検査の目的と内容について解説します。

📝 超音波検査(エコー検査)

超音波検査は、耳下腺のしこりを評価する際に最初に行われることが多い検査です。放射線被曝がなく、外来で簡単に行えるため、広く利用されています。しこりの大きさ、形、内部の性状(液体か固形か)、周囲組織との関係などを確認できます。炎症によるリンパ節の腫れと腫瘍性のしこりをある程度区別することも可能です。

🔸 CT検査(コンピュータ断層撮影)

CTは、しこりの位置や大きさ、周囲構造との関係、リンパ節転移の有無などを三次元的に評価するために用いられます。特に悪性腫瘍が疑われる場合や、周囲への広がりを把握する必要がある場合に有用です。造影剤を使用することで、腫瘍への血流の状態なども確認できます。

⚡ MRI検査(磁気共鳴画像)

MRIは軟部組織の描出に優れており、耳下腺内のしこりの性状や顔面神経との位置関係を詳しく評価するのに役立ちます。特に手術前の検討において重要な検査であり、良性か悪性かの鑑別にも情報を提供します。

🌟 細胞診(穿刺吸引細胞診)

細い針をしこりに刺して細胞を吸引採取し、顕微鏡で観察する検査です。耳下腺のしこりの良性・悪性を術前に判断するために行われることがあります。ただし、採取できる細胞が少量であることや、腫瘍の一部しか反映されないことなどから、あくまでも参考情報として取り扱われます。最終的な診断は手術で摘出した組織を詳しく調べる病理組織検査によって行われます

💬 血液検査

炎症反応(CRP、白血球数など)の評価や、シェーグレン症候群の診断のための自己抗体(抗SS-A抗体、抗SS-B抗体)の測定などが行われます。おたふく風邪の疑いがある場合は、ムンプスウイルスに対する抗体価を測定することもあります。

✅ 唾液腺造影検査

造影剤を耳下腺の管(ステノン管)から注入してX線撮影を行う検査で、管の形状や閉塞・狭窄の有無を確認します。唾石症や慢性耳下腺炎の評価に用いられることがありますが、近年はCTやMRIの技術向上により、施行する機会は減っています。

Q. 耳下腺の健康を守るために日常生活でできることは?

耳下腺のトラブル予防には、口腔内を清潔に保つ(歯磨き・洗口)、十分な水分補給で唾液の流れを正常に保つ、食事中によく噛んで唾液分泌を促す、喫煙を避けてワルチン腫瘍のリスクを下げる、おたふく風邪ワクチンの接種を検討するといった習慣が効果的とされています。

📌 治療の選択肢と流れ

耳下腺のしこりに対する治療は、原因疾患によって大きく異なります。主な疾患ごとの治療方針を解説します。

📝 急性耳下腺炎(細菌性)の治療

細菌性耳下腺炎に対しては、抗菌薬の投与が基本的な治療です。軽症であれば内服抗菌薬で対応できますが、重症の場合は入院して点滴による抗菌薬投与が必要になることがあります。膿瘍を形成している場合は、切開して膿を排出する処置(切開排膿)が必要なこともあります。また、水分を十分に摂取して脱水を防ぐこと、口腔内を清潔に保つことが大切です。

🔸 唾石症の治療

唾石の治療法は結石の大きさや位置によって異なります。小さな唾石の場合は、水分を多く摂る、梅干しなどの酸味のある食品で唾液分泌を促すなどの保存的治療で自然に排出されることがあります。管の入口付近にある唾石は、口腔内から切開して摘出することが可能です。腺組織の奥深くにある唾石や慢性化した場合は、腺組織ごと摘出する手術(耳下腺切除術)が必要になることもあります。近年では、内視鏡を使って管の内部を直接観察しながら結石を除去する唾液腺内視鏡手術も一部の施設で行われています。

⚡ 流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の治療

ウイルスによるおたふく風邪には特効薬がなく、症状を和らげる対症療法が中心です。解熱鎮痛薬で発熱や痛みをコントロールし、十分な水分補給と安静を保ちます。合併症(精巣炎、難聴など)が生じた場合は、それぞれに応じた治療が必要です。感染力があるため、腫れが引くまでの間は学校や職場への出席を控える必要があります

🌟 良性耳下腺腫瘍の治療

多形腺腫やワルチン腫瘍などの良性腫瘍に対しては、手術による摘出が標準的な治療です。特に多形腺腫は放置すると悪性化するリスクがあるため、診断がついたら基本的に手術を勧められます。手術の方法は腫瘍の位置や大きさによって異なりますが、耳下腺の一部または全体を摘出します(耳下腺部分切除術または全摘術)。最も重要な点は顔面神経を温存することであり、専門的な技術が必要な手術です

💬 悪性耳下腺腫瘍の治療

悪性腫瘍の場合は、手術による切除が第一選択です。腫瘍の種類や進行度によって、顔面神経を温存できるかどうかが変わります。リンパ節転移がある場合は、頸部のリンパ節も一緒に切除する頸部郭清術が行われます。手術後には、再発予防や残存腫瘍の制御を目的として放射線療法を組み合わせることも多く、一部の腫瘍に対しては化学療法も用いられます。治療方針は腫瘍の種類・ステージ・患者さんの全身状態を考慮して総合的に決定されます。

✅ シェーグレン症候群の治療

シェーグレン症候群は根治療法がなく、症状に応じた対症療法が中心です。ドライマウスには人工唾液や保湿ジェル、唾液分泌を促す薬(ピロカルピンなど)が用いられます。ドライアイには人工涙液点眼薬が使われます。全身症状が強い場合や合併症がある場合には、免疫抑制薬や副腎皮質ステロイドなどが使用されることもあります。リウマチ科や膠原病科での管理が推奨されます

✨ 日常生活で気をつけること

耳下腺の健康を守り、しこりや炎症のリスクを減らすために、日常生活でできることがいくつかあります。

📝 口腔内の清潔を保つ

口腔内の細菌が耳下腺に逆行感染することで耳下腺炎が起こることがあります。歯磨きや洗口液などを用いて口腔内の清潔を保つことが、急性耳下腺炎の予防につながります。特に高齢者や全身状態が低下している方は、口腔ケアが重要です。

🔸 十分な水分補給

脱水になると唾液の分泌が減り、耳下腺管内で細菌が繁殖しやすくなります。また、唾液の量が少ないと唾石が形成されやすくなるという側面もあります。日頃から十分な水分を摂取することで、唾液の流れを正常に保つことが大切です。

⚡ 食事の工夫

食事の際によく咀嚼することは、唾液分泌を促す効果があります。梅干しや柑橘系の食品など唾液分泌を促す食品を適度に取り入れることも、唾石の予防や唾液腺の機能維持に役立つとされています

🌟 喫煙を避ける

喫煙はワルチン腫瘍の発症リスクを高めるとされています。また、喫煙は唾液の分泌を抑制したり、口腔内環境を悪化させたりするため、耳下腺の健康維持のためにも禁煙を心がけることが大切です。

💬 ワクチン接種を検討する

おたふく風邪(ムンプス)ワクチンを接種することで、流行性耳下腺炎の発症を防ぐことができます。幼少期に接種していない方や接種歴が不明な方は、かかりつけ医に相談してワクチン接種を検討してみてください。特に成人がおたふく風邪にかかると重症化しやすいため、予防が重要です。

✅ しこりの経過を観察する

耳下腺のあたりで何か触れるものがあった場合、自己判断で放置するのではなく、変化を観察することが大切です。しこりの大きさや硬さ、痛みの有無、発熱などの変化を記録しておき、2〜4週間以上続く場合や変化がある場合には医療機関を受診してください

👨‍⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】

高桑康太 医師(当院治療責任者)より

「当院では、耳下腺のしこりを主訴にご来院される方の中で、「押すと痛みがある」とおっしゃる患者さんの多くは急性耳下腺炎や唾石症などの炎症性疾患が原因であることが多いですが、痛みがないからといって安心できるわけではなく、腫瘍性疾患が隠れているケースもあるため、しこりが2〜4週間以上続く場合は早めに専門医を受診されることをおすすめします。最近の傾向として、耳下腺のしこりをしばらく様子見していたものの、なかなか改善しないためにご来院される方も少なくなく、早期に適切な検査を受けることが、より早く安心していただくことにつながります。顔面の動きに違和感を覚えた場合は特に緊急性が高いサインですので、どうぞ一人で不安を抱え込まず、お気軽にご相談ください。」

🔍 よくある質問

耳下腺のしこりを押すと痛い場合、どんな病気が考えられますか?

押すと痛みがある場合、急性耳下腺炎(細菌性)、唾石症、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、慢性耳下腺炎、リンパ節炎などの炎症性疾患が原因であることが多いです。ただし、腫瘍が急速に増大した場合や悪性腫瘍が神経に浸潤した場合にも痛みが生じることがあるため、自己判断は禁物です。

耳下腺のしこりが痛くない場合は安心していいですか?

痛みがないからといって安心できるわけではありません。多形腺腫やワルチン腫瘍などの良性腫瘍、さらには悪性腫瘍も初期には痛みを伴わないことが多いです。特に2〜4週間以上しこりが続く場合や徐々に大きくなる場合は、早めに耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診することをおすすめします

食事のたびに耳の前が腫れて痛くなるのはなぜですか?

食事のタイミングで耳下腺が腫れて痛む場合、唾石症(だせきしょう)が疑われます。唾液腺の管に結石ができると唾液の流れが妨げられ、食事中に唾液分泌が増えるタイミングで痛みや腫れが起きます。「食後しばらくすると症状が和らぐ」というパターンが典型的です。早めに耳鼻咽喉科を受診してください。

耳下腺のしこりに気づいたら、何科を受診すればよいですか?

耳下腺のしこりには、耳鼻咽喉科(頭頸部外科)の受診が最も適しています。唾液腺疾患を専門的に扱う診療科であり、検査から治療まで一貫した対応が可能です。まずかかりつけ医に相談して紹介状を受け取る方法も一般的です。顔面の動きに異常がある場合は特に緊急性が高いため、できるだけ早く受診してください。

耳下腺のしこりを予防するために日常生活でできることはありますか?

以下のことを日常的に心がけると、耳下腺のトラブル予防に役立ちます。①口腔内を清潔に保つ(歯磨き・洗口)、②十分な水分補給で唾液の流れを正常に保つ、③食事中によく噛んで唾液分泌を促す、④喫煙を避ける(ワルチン腫瘍のリスク軽減)、⑤おたふく風邪ワクチンの接種を検討する、などが効果的とされています。

💪 まとめ

耳下腺のしこりを押すと痛い場合、急性耳下腺炎、唾石症、流行性耳下腺炎、慢性耳下腺炎、リンパ節炎など炎症性の疾患が原因であることが多いです。一方、押しても痛みがないしこりの場合は、多形腺腫やワルチン腫瘍などの良性腫瘍、あるいは悪性腫瘍が疑われることもあります。

いずれの場合も、しこりが2〜4週間以上続く、大きくなっている、顔面の動きに異常がある、強い痛みや発熱を伴うといった場合は、速やかに耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診することが大切です。耳下腺の疾患は正確な診断のもとで適切な治療を受けることが重要であり、自己判断で経過を見続けることはリスクを伴います。

超音波検査やCT・MRI検査、細胞診などを組み合わせることで、しこりの性質を詳しく評価することができます。炎症性であれば抗菌薬や対症療法で改善が見込め、腫瘍性であれば手術などの適切な治療が選択されます。普段から口腔内の衛生管理や十分な水分補給を心がけ、気になるしこりを見つけたら早めに専門医に相談するようにしましょう。

📚 関連記事

📚 参考文献

  • 国立感染症研究所 – 流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の病原体・感染経路・症状・合併症・ワクチン予防に関する公式情報として参照
  • 厚生労働省 – 感染症対策および予防接種(ムンプスワクチン)に関する行政情報として参照
  • PubMed – 耳下腺腫瘍(多形腺腫・ワルチン腫瘍・悪性腫瘍)の診断・治療・疫学に関する学術文献として参照

監修者医師

高桑 康太 医師

保有資格

ミラドライ認定医

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任
  • 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
  • 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
  • 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
  • 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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