
ふと気づくと、片目だけ涙がじわじわとあふれてくる。そんな経験はありませんか?感情的な場面でもないのに、特定の片方の目だけが涙っぽくなる状態は、単なる疲れ目や気のせいではなく、目や鼻の構造・機能に何らかの問題が生じているサインである可能性があります。片目だけ涙が出るという症状は、実はさまざまな疾患や原因によって引き起こされます。放置してしまうと視力低下や感染症につながるケースもあるため、原因を正しく理解して適切に対処することが大切です。この記事では、片目だけ涙が出る原因として考えられる疾患や状態を詳しく解説し、症状別の見分け方や受診のタイミングについてもわかりやすくご紹介します。
目次
- 涙が出る仕組みと「片目だけ」が起こる理由
- 片目だけ涙が出る主な原因①:流涙症(鼻涙管閉塞・狭窄)
- 片目だけ涙が出る主な原因②:逆さまつ毛(睫毛乱生・内反症)
- 片目だけ涙が出る主な原因③:ドライアイ
- 片目だけ涙が出る主な原因④:結膜炎・角膜炎
- 片目だけ涙が出る主な原因⑤:眼瞼下垂・眼瞼外反・眼瞼内反
- 片目だけ涙が出る主な原因⑥:異物・刺激
- 片目だけ涙が出る主な原因⑦:緑内障・ぶどう膜炎などの眼疾患
- 年齢・性別・生活習慣による違い
- 症状別セルフチェックと受診のタイミング
- 眼科でおこなわれる検査と治療法
- まとめ
この記事のポイント
片目だけ涙が出る原因は、鼻涙管閉塞・逆さまつ毛・ドライアイ・結膜炎・まぶたの異常・緑内障など多岐にわたる。数日以上続く場合や痛み・充血・視力変化を伴う場合は早急に眼科を受診することが重要。
🎯 涙が出る仕組みと「片目だけ」が起こる理由
涙は、目の外上側にある「涙腺」で常に少量ずつ産生されています。産生された涙は、まぶたのまばたきによって目の表面全体に均一に広げられ、目頭の上下にある小さな穴(涙点)から吸い込まれ、涙小管・涙嚢・鼻涙管を通って最終的に鼻の中へと排出されます。この涙の産生から排出までの流れを「涙液排出経路」または「涙道」と呼びます。
涙が目からあふれる状態を「流涙」と言い、大きく2つのメカニズムに分けられます。一つは涙の産生量が過剰になる「分泌過多型」、もう一つは涙の排出経路が詰まるなどして排出できなくなる「排出障害型」です。この2つが重なることもあります。
なぜ「片目だけ」涙が出るのかというと、左右の目はそれぞれ独立した涙道・涙腺・角膜・結膜などを持っているためです。たとえば右目の涙道だけが詰まっていれば右目だけ涙があふれますし、左目の角膜だけに異物が入れば左目だけが流涙します。つまり、片目だけに特定の病変や異常がある場合、涙の症状も片側にのみ現れるのです。両目に同じ疾患があっても、片方が重症であれば涙が出るのは一方だけに感じられることもあります。
Q. 片目だけ涙が出るのはなぜですか?
左右の目はそれぞれ独立した涙腺・涙道・角膜などを持っているため、片方だけに異常があると涙の症状も片側に現れます。主な原因として鼻涙管閉塞、逆さまつ毛、ドライアイ、結膜炎、まぶたの位置異常、緑内障などが挙げられます。
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📋 片目だけ涙が出る主な原因①:流涙症(鼻涙管閉塞・狭窄)
片目だけ涙があふれる最も代表的な原因の一つが「流涙症」です。流涙症は、涙の排出経路(涙道)のどこかが詰まったり狭くなったりすることによって起こります。中でも最も多いのが「鼻涙管閉塞」または「鼻涙管狭窄」と呼ばれる状態です。
鼻涙管とは、涙を目頭から鼻腔へと流し込む細い管状の組織です。この管が炎症・加齢・先天的な形成不全・鼻の病気などの影響で詰まると、涙がうまく鼻に流れず、目からあふれ出てしまいます。片側の鼻涙管だけが詰まっているケースが多いため、片目だけ涙が出る症状として現れやすいのが特徴です。
鼻涙管閉塞には、生まれつきの先天性のものと、後天的に発症するものがあります。先天性の場合は新生児・乳幼児に多く、片目が常に涙や目やにで潤んでいる状態として気づかれることが多いです。多くの場合は生後1年以内に自然に開通しますが、開通しない場合はプロービング(細い金属の棒で涙道を開通させる処置)が必要です。
一方、成人や高齢者に多い後天性の鼻涙管閉塞は、慢性的な鼻副鼻腔炎・目頭周囲の炎症・加齢による組織の変化などが原因となることが多いです。特に高齢女性に多く見られ、片目だけが常に涙っぽい・目頭から涙がこぼれるという訴えで来院されるケースが多いです。放置すると、詰まった涙道に細菌が繁殖して「涙嚢炎」を起こすこともあります。涙嚢炎になると目頭の腫れや痛み・膿のような目やにが出るなど症状が悪化するため、早めの受診が重要です。
また、「涙点閉塞」や「涙小管閉塞」といった、涙道のより上流部分が詰まるケースもあります。これらも片目だけ涙があふれる原因になります。眼科では涙道内視鏡や涙道プロービングなどで原因部位を特定し、手術的に解決することが可能です。
💊 片目だけ涙が出る主な原因②:逆さまつ毛(睫毛乱生・内反症)
「逆さまつ毛」とは、まつ毛が本来向くべき方向(外側)とは逆の方向、つまり眼球側に向かって生えてしまう状態のことです。医学的には「睫毛乱生(しょうもうらんせい)」または、まぶた全体が内側に向いている場合を「眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)」と呼びます。
逆さまつ毛のまつ毛が角膜(黒目)や結膜(白目の表面を覆う薄い膜)に触れると、その刺激によって涙の分泌が促進されます。角膜は非常に敏感な組織であり、わずかな刺激でも反射的に涙があふれる仕組みになっているためです。まつ毛の生え方の問題は左右で異なることが多く、片目だけに逆さまつ毛がある場合は、その目だけ涙が出やすくなります。
症状としては、涙が出るだけでなく、目の違和感・異物感・まぶしさなどを伴うことがあります。長期間放置すると、まつ毛による角膜への繰り返しの刺激で角膜に傷がつき(角膜びらん)、視力低下につながることもあるため注意が必要です。
治療法としては、軽症の場合はまつ毛を抜く処置(定期的な抜去)で対応しますが、再発することが多いため、根本的な解決には手術が必要です。まつ毛の生え方を矯正する手術や、まぶたの向きを直す手術(眼瞼手術)が行われます。子どもに多い先天性の内反症は成長とともに自然に改善することもありますが、角膜への影響が強い場合は手術が検討されます。
Q. ドライアイなのに涙が出ることはありますか?
ドライアイで目の表面が乾燥すると、脳がその刺激に反応して反射的に大量の涙を分泌する「反射性流涙」が起こります。この涙は油分やムチンのバランスが崩れているため目に留まらずすぐ流れ落ちます。片目だけドライアイが強い場合は片側にのみ症状が出ることもあります。
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🏥 片目だけ涙が出る主な原因③:ドライアイ
「ドライアイで涙が出る?」と不思議に思われるかもしれませんが、実はドライアイも片目だけ涙が出る原因になり得ます。これは少し矛盾しているように感じられるかもしれませんが、ドライアイのメカニズムを知ると理解できます。
ドライアイとは、涙の量が不足している、あるいは涙の質(成分バランス)が低下して目の表面が乾燥しやすい状態のことです。目の表面が乾くと、その刺激に反応して脳が「涙が必要だ」と判断し、反射的に大量の涙を分泌する「反射性流涙」が起こります。この反射性の涙は、普段の涙よりも水分が多く、涙の保護成分(油分・ムチンなど)のバランスが崩れているため、目に留まらずすぐに流れ落ちてしまいます。
ドライアイ自体は両目に起こることが多いですが、スマートフォンやパソコンを使う際の目の使い方、コンタクトレンズの装用状況、目の露出の大きさなどは左右で異なる場合があります。また、片側の顔に風が当たりやすい環境にいる人や、片目だけコンタクトレンズを使っている人などは、片目だけドライアイの症状が強く出ることがあります。
ドライアイによる流涙の特徴は、目がゴロゴロする・乾く・目が疲れやすいといった症状を伴うことが多い点です。また、風の強い日・エアコンの効いた室内・長時間の画面作業後に涙が出やすくなるという訴えも多く聞かれます。治療は、人工涙液の点眼・涙点プラグの挿入・生活習慣の改善などが中心となります。
⚠️ 片目だけ涙が出る主な原因④:結膜炎・角膜炎
結膜炎や角膜炎も、片目だけ涙が出る一般的な原因です。これらの炎症性疾患は、涙の反射的な産生を促すため、影響を受けた目だけが涙っぽくなることがあります。
結膜炎には、細菌性・ウイルス性・アレルギー性・クラミジア性などさまざまな種類があります。細菌性結膜炎では充血・目やに・涙が多くなるといった症状が出ます。ウイルス性結膜炎(流行性角結膜炎など)は非常に感染力が強く、最初は片目だけに発症して数日後にもう片方の目にも広がることがあります。アレルギー性結膜炎は両目に症状が出ることが多いですが、抗原(花粉・ハウスダストなど)への暴露の差から、片目だけ症状が先に出る場合もあります。
角膜炎は黒目の表面(角膜)に炎症が起きた状態で、細菌・ウイルス・真菌(カビ)・アカントアメーバ(微生物)などが原因となります。コンタクトレンズの不適切な使用が角膜炎のリスクを大幅に高めます。角膜炎では目の痛み・異物感・光をまぶしく感じる・涙が出るといった症状が現れます。片目だけコンタクトレンズを使う方や、片目だけ汚染された水が入ったような場合は、片目だけ角膜炎が起こることがあります。
結膜炎・角膜炎はいずれも放置すると症状が悪化したり、感染が拡大したりするリスクがあります。特に角膜炎は視力に直接影響することがあるため、早めに眼科を受診することが重要です。自己判断で市販の目薬を使用することで悪化するケースもあるため、注意が必要です。
🔍 片目だけ涙が出る主な原因⑤:眼瞼下垂・眼瞼外反・眼瞼内反
まぶた(眼瞼)の形や位置に異常が生じることによっても、片目だけ涙が出る症状が現れます。代表的なものとして眼瞼下垂・眼瞼外反・眼瞼内反があります。
眼瞼下垂は、上まぶたが下がって目が開きにくくなる状態です。眼瞼下垂になると、まぶたが正常な位置よりも低い位置にあるため、涙点(涙の排出口)の位置がずれてしまい、涙の排出がうまくいかなくなることがあります。加齢によって筋力が落ちることで片側だけに起こることが多く、片目だけ涙があふれる原因となります。
眼瞼外反は、下まぶたが外側にめくれてしまう状態です。下まぶたには涙点(涙の排出口)があるため、まぶたが外側を向いてしまうと涙点が正常に機能せず、涙が目からこぼれ落ちてしまいます。加齢や顔面神経麻痺が主な原因で、片側に起こることが多いです。涙が常に頬を伝って流れ落ちる・皮膚がただれるといった症状が出ることもあります。
眼瞼内反は、まぶたが内側に向いてしまう状態で、まつ毛が角膜に当たって逆さまつ毛と同様の刺激を与えます。高齢者に多く、片側に起こることがあります。これらまぶたの異常は、外見からも比較的判断しやすい場合があります。治療は手術による形態の修正が基本です。
Q. 赤ちゃんの片目だけ涙が多い原因は何ですか?
生後数週間から数か月の赤ちゃんの片目に涙や目やにが多い場合、鼻涙管の開口部が生まれつき膜で覆われている「先天性鼻涙管閉塞」が主な原因として考えられます。多くは生後12か月以内に自然に治りますが、目頭の腫れや目やにが多い場合は眼科への受診が推奨されます。
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📝 片目だけ涙が出る主な原因⑥:異物・刺激
日常的なシーンでも、片目だけに異物が入ったり、片目だけに刺激が加わったりすることで、一時的に片目だけ涙が出ることがあります。これは涙の正常な防御反射の結果であり、多くの場合は一時的なものです。
異物の代表的なものとして、砂・ほこり・花粉・まつ毛・虫などがあります。これらが片方の目に入ると、角膜や結膜への刺激で反射的に涙が大量に分泌されます。この場合は異物が取り除かれると涙も止まることが多いです。ただし、眼球内に異物が刺さったり、化学物質が入ったりした場合は、すぐに水で洗い流し、眼科を受診する必要があります。
また、紫外線・強い光・煙・化粧品・洗顔料・プールの塩素なども目への刺激となります。これらが片目により多く当たった場合、その目だけに涙が出ることがあります。コンタクトレンズを片目だけ使用している場合は、装用している方の目に刺激が集中しやすい傾向もあります。
一時的な異物・刺激が原因であれば特別な治療は必要ありませんが、涙が長時間続く・取り除いたはずなのに症状が続く・目が痛い・視力が落ちたと感じるなどの場合は、角膜に傷がついている可能性があるため眼科の受診をお勧めします。
💡 片目だけ涙が出る主な原因⑦:緑内障・ぶどう膜炎などの眼疾患
緑内障や、ぶどう膜炎などの眼疾患によっても、片目だけ涙が出ることがあります。これらは失明に繋がる可能性もある重大な疾患であるため、注意が必要です。
緑内障は、眼圧(目の中の圧力)の上昇などによって視神経が傷つき、視野が欠けていく疾患です。急性緑内障発作が起きると、急激な眼圧上昇によって目の痛み・頭痛・吐き気・視力低下・涙が出るといった症状が突然現れることがあります。多くの場合は片目だけに発症し、非常に激しい痛みを伴います。急性緑内障発作は眼科的緊急事態であり、早急な治療が必要です。
ぶどう膜炎は、眼球の中にあるぶどう膜(虹彩・毛様体・脈絡膜の総称)に炎症が起こる疾患です。ぶどう膜炎では目の痛み・充血・光過敏・視力低下・涙が出るといった症状が現れます。全身性疾患(サルコイドーシス・ベーチェット病・関節リウマチなど)と関連していることも多く、片目または両目に起こります。
また、目の腫瘍(角膜デルモイド・眼瞼腫瘍など)が涙道や目の表面に影響を与えることで涙の症状が出ることもあります。これらは比較的まれですが、原因不明の片目の涙が続く場合には眼科での精密検査が必要です。
緑内障やぶどう膜炎による流涙は、涙だけが症状として出ることはまれで、目の痛み・充血・視力変化などを伴うことがほとんどです。このような症状の組み合わせがある場合は、速やかに眼科を受診してください。
✨ 年齢・性別・生活習慣による違い
片目だけ涙が出る症状は、年齢・性別・生活習慣によってもかかりやすい原因が異なります。それぞれの特徴を理解しておくことで、自分に当てはまりやすい原因を絞り込む参考になります。
新生児・乳幼児では、先天性鼻涙管閉塞が片目だけ涙が出る最も多い原因です。生まれつき鼻涙管の開口部が膜で覆われている状態で、特に産後から数週間以内に気づかれることが多いです。多くは生後12か月以内に自然に治りますが、目やにが多い・目頭が腫れているなどの場合は早めの受診を勧めします。
小学生・思春期の子どもでは、逆さまつ毛(眼瞼内反症)が比較的多く見られます。まぶたの脂肪が多い時期には内反しやすく、成長とともに改善することが多いですが、角膜への影響が大きい場合は手術が必要です。
20〜40代の現役世代では、ドライアイ・コンタクトレンズによる角膜炎・アレルギー性結膜炎が多い傾向があります。デジタルデバイスの長時間使用・空調環境・コンタクトレンズの長時間装用などが涙の症状を引き起こすリスク因子となっています。
50代以降・高齢者では、鼻涙管閉塞・眼瞼外反・眼瞼下垂・眼瞼内反が増えてきます。加齢に伴う組織の弛緩・筋力低下・骨格の変化が原因となります。特に高齢女性では、涙道の萎縮・狭窄による流涙症が多いとされています。また、緑内障は高齢になるほど有病率が上がるため、涙の症状と合わせて視力や視野の変化がないかも確認することが重要です。
生活習慣としては、コンタクトレンズの使用(特にソフトレンズの長時間装用・使い捨てレンズの使い回し)・パソコン・スマートフォンの長時間使用・喫煙・アレルゲンへの暴露・睡眠不足・栄養不足などが涙の症状を悪化させる要因となることがあります。
Q. 片目だけ涙が続く場合、眼科ではどんな検査をしますか?
眼科では問診・視力・眼圧測定のほか、細隙灯顕微鏡で角膜やまぶたの状態を観察します。涙道の詰まりを確認する「涙道洗浄(通水試験)」や、ドライアイを評価するシルマーテストも行われます。原因によって点眼薬・涙道手術・眼瞼手術など治療法は大きく異なります。
📌 症状別セルフチェックと受診のタイミング

片目だけ涙が出る症状があっても、すべてが緊急を要するわけではありません。しかし、以下のポイントを参考に、受診が必要かどうかを確認することが大切です。
まず、症状が一時的なものかどうかを確認してみましょう。異物が入った・煙や花粉にさらされたなど明らかな原因があり、その原因がなくなれば涙も止まる場合は、通常の防御反射の涙です。この場合は様子を見ても問題ありません。
一方、以下のような場合は早めに眼科を受診することをお勧めします。
数日以上にわたって片目だけ涙が続く場合は、涙道の問題や炎症が疑われます。異物感・目の痛み・目が開けにくいといった症状を伴う涙は、角膜炎・結膜炎・逆さまつ毛などの可能性があります。充血(白目が赤くなっている)を伴う場合は、感染性の結膜炎・角膜炎・ぶどう膜炎などが考えられます。目やにが多い場合は、細菌性またはウイルス性の感染が疑われます。目頭周辺の腫れや痛みがある場合は、涙嚢炎の可能性があります。視力低下・視野の欠け・光を極端にまぶしく感じるなどの症状を伴う場合は、緑内障・ぶどう膜炎・角膜炎など重篤な疾患の可能性があります。急激な目の痛みと涙が同時に起こった場合は、急性緑内障発作が疑われるため緊急受診が必要です。
また、子どもの場合は特に注意が必要です。生後数週間から数か月の赤ちゃんの片目が常に涙や目やにで潤んでいる場合は先天性鼻涙管閉塞を疑い、小児科または眼科への受診を検討してください。学童期の子どもで片目が涙っぽく、目をよくこすっている場合は逆さまつ毛の可能性があります。
セルフチェックとして、鏡で目頭を確認することも有用です。目頭周辺が赤く腫れている・皮膚がただれているといった所見があれば涙嚢炎やまぶたの異常が疑われます。また、下まぶたを引っ張ってみて、涙点(目頭の小さな穴)が正常な位置にあるかどうかも確認できます。涙点がまぶた内側に向いていれば排出障害の可能性があります。
🎯 眼科でおこなわれる検査と治療法
片目だけ涙が出る症状で眼科を受診した際には、症状の原因を特定するためにさまざまな検査が行われます。適切な検査によって正確な診断が下され、それに基づいた治療法が選択されます。
主な検査としては、まず問診と視力・眼圧の測定が行われます。いつから・どのような状況で・どの程度の涙が出るのかを詳しく聞くことで、原因を絞り込む手がかりになります。細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)検査では、角膜・結膜・まぶたの状態を詳しく観察することができます。角膜の傷・結膜の炎症・まつ毛の生え方・まぶたの位置などを確認します。
涙道の検査としては、「涙道洗浄(通水試験)」がよく行われます。涙点から生理食塩水を流し込み、鼻の奥に流れ出てくるかどうかで涙道の通り具合を確認します。流れが悪ければ涙道閉塞・狭窄が疑われます。さらに詳しく調べる場合は、涙道内視鏡(ダクリオエンドスコープ)を使って涙道の内部を直接観察したり、涙道造影CT・MRIを行ったりすることもあります。
シルマーテスト(シルマー試験)は、目の中に細長いろ紙を入れて涙の量を測定するドライアイの診断に使われる検査です。涙の蒸発しやすさを調べるTBUT(涙液層破壊時間)検査もドライアイの評価に用いられます。アレルギーが疑われる場合は、血液検査によるアレルゲン特定や皮膚テストが行われることもあります。
治療法は原因によって大きく異なります。涙道閉塞に対しては、涙道プロービング(細い棒で詰まりを開通させる処置)・シリコンチューブ挿入術(涙道に細いシリコン管を入れて開通を維持する)・涙嚢鼻腔吻合術(新しい排出経路を作る手術)などが行われます。逆さまつ毛には、定期的なまつ毛の抜去または眼瞼手術が適応となります。眼瞼外反・内反・下垂には眼瞼形成手術が行われます。
ドライアイには、人工涙液・ヒアルロン酸点眼液の使用・涙点プラグ挿入・マイボーム腺へのアプローチ(温罨法・IPL治療など)が行われます。結膜炎・角膜炎は原因菌・ウイルスに応じた抗菌薬・抗ウイルス薬・抗真菌薬の点眼・内服治療が中心です。アレルギー性結膜炎には、抗アレルギー薬点眼・ステロイド点眼が使用されます。緑内障には眼圧を下げる点眼薬・レーザー治療・手術が必要です。ぶどう膜炎は原因疾患の治療と並行して、消炎治療が行われます。
このように、片目だけ涙が出るという同じ症状でも、原因によって治療法はまったく異なります。自己判断で市販の点眼薬を使うだけでは改善しないケースも多く、特に涙道閉塞やまぶたの異常は点眼薬では対応できないため、眼科への受診が不可欠です。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「片目だけ涙が続くという症状でお悩みの患者さまの中に、鼻涙管閉塞やまぶたの位置異常など、点眼薬では対応できない原因が隠れているケースが少なくありません。最近の傾向として、ドライアイによる反射性の流涙を「目が潤っているから大丈夫」と勘違いされたまま長期間放置されている方も見受けられます。片目だけの涙が数日以上続く場合や、痛み・充血・視力の変化を伴う場合は、ぜひお早めに医療機関へご相談ください。原因を正確に特定することが、最適な治療への近道です。」
📋 よくある質問
左右の目はそれぞれ独立した涙腺・涙道・角膜などを持っているため、片方の目だけに異常があると涙の症状も片側にのみ現れます。涙道の詰まり・逆さまつ毛・ドライアイ・炎症・まぶたの異常など、さまざまな原因が考えられます。両目に同じ疾患があっても、片方が重症であれば片目だけ涙が出るように感じられることもあります。
ドライアイで目の表面が乾燥すると、その刺激に反応して脳が「涙が必要」と判断し、反射的に大量の涙を分泌する「反射性流涙」が起こります。この涙は保護成分のバランスが崩れているため目に留まらずすぐ流れ落ちます。「目が潤っているから大丈夫」と放置せず、症状が続く場合は眼科への受診をお勧めします。
一時的な異物や刺激が原因で涙がすぐ止まる場合は様子を見ても問題ありません。ただし、数日以上涙が続く・目の痛みや充血を伴う・視力に変化がある・目頭が腫れているといった場合は早めに眼科を受診してください。特に急激な目の痛みと涙が同時に起こった場合は、急性緑内障発作の疑いがあるため緊急受診が必要です。
生後数週間から数か月の赤ちゃんの片目が常に涙や目やにで潤んでいる場合は、「先天性鼻涙管閉塞」が主な原因として考えられます。生まれつき鼻涙管の開口部が膜で覆われている状態で、多くは生後12か月以内に自然に治りますが、目頭の腫れや目やにが多い場合は小児科または眼科への受診を検討してください。
眼科では問診・視力・眼圧測定のほか、細隙灯顕微鏡で角膜やまぶたの状態を観察します。涙道の詰まりを調べる「涙道洗浄(通水試験)」や、ドライアイを評価するシルマーテストなども行われます。治療は原因によって異なり、涙道閉塞にはプロービングや手術、ドライアイには点眼薬や涙点プラグ、結膜炎には抗菌薬など、当院では症状に合わせた適切な治療をご提案しています。
💊 まとめ
片目だけ涙が出るという症状は、一見ささいなことのように感じられるかもしれませんが、その背後にはさまざまな眼科的疾患が隠れている可能性があります。今回ご紹介した主な原因をまとめると、流涙症(鼻涙管閉塞・狭窄)・逆さまつ毛・ドライアイ・結膜炎・角膜炎・まぶたの異常(眼瞼下垂・外反・内反)・異物・刺激・そして緑内障やぶどう膜炎などの重篤な眼疾患が挙げられます。
涙の症状は、左右の目がそれぞれ独立した器官を持つため、片側だけに異常がある場合は片目だけに症状が現れます。年齢・性別・生活習慣によってかかりやすい原因が異なることも理解しておくと、自分の状況に合わせた対応がしやすくなります。
一時的な異物などが原因の場合は問題ありませんが、数日以上涙が続く・痛みや充血を伴う・視力に変化がある・目頭が腫れているといった場合は、早めに眼科を受診することをお勧めします。特に急激な目の痛みと涙が同時に起こった場合は、急性緑内障発作の可能性があるため緊急受診が必要です。
片目だけ涙が出るという症状を放置せず、適切なタイミングで眼科専門医に相談することが、目の健康を守るための第一歩です。症状が気になる場合は、専門の医療機関の受診をおすすめします。
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📚 参考文献
- 厚生労働省 – 目の疾患(緑内障・ドライアイ・結膜炎など)に関する一般向け情報。涙の異常や眼疾患の受診タイミング・治療方針の根拠として参照
- 国立感染症研究所 – ウイルス性結膜炎(流行性角結膜炎)の病原体・感染経路・症状に関する情報。片目から発症して両目へ広がる感染性結膜炎の解説根拠として参照
- PubMed – 鼻涙管閉塞・流涙症(epiphora)に関する国際的な臨床研究・論文データベース。先天性・後天性鼻涙管閉塞の有病率・治療法(プロービング・涙嚢鼻腔吻合術)の科学的根拠として参照
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務