
「特に暑くもないのに、気づいたら汗びっしょりになっている」「冷房の効いた室内でも、手や脇から汗が止まらない」――そんな経験をしたことはないでしょうか。汗は体温調節に欠かせない生理機能ですが、気温や運動量とは無関係に汗が出る場合、何らかの体の異変が隠れていることがあります。暑くないのに汗が出る症状は、自律神経の乱れや更年期障害、多汗症、あるいは内科的な疾患まで、さまざまな原因が考えられます。この記事では、その原因・メカニズム・対策・治療法について詳しく解説します。気になる症状がある方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
- 汗のメカニズムを知ろう
- 暑くないのに汗が出る主な原因
- 自律神経の乱れと発汗の関係
- 更年期障害による発汗(ホットフラッシュ)
- 多汗症とはどんな状態か
- 内科的疾患が原因の場合
- 精神的なストレスと発汗の関係
- 薬の副作用として現れる発汗
- 暑くないのに汗が出るときのセルフケア・対策
- 病院に行くべき目安とは
- 多汗症の治療法について
- まとめ
この記事のポイント
暑くないのに汗が出る原因は、自律神経の乱れ・更年期障害・多汗症・内科疾患・精神的ストレス・薬の副作用など多岐にわたる。日常生活に支障が出る場合はボトックス注射や塗り薬など有効な治療法があり、アイシークリニックでは原因に応じた適切な治療を提供している。
🎯 1. 汗のメカニズムを知ろう
まず、汗がどのように分泌されるのか、基本的なメカニズムを理解しておきましょう。
人間の体には、「汗腺(かんせん)」と呼ばれる汗を分泌する器官があります。汗腺には大きく分けて2種類あります。
一つ目は「エクリン汗腺」です。全身に約200〜500万個分布しており、体温調節に関わる汗を出します。無色・無臭であることが特徴で、手のひらや足の裏、額など、体のほぼ全域に存在します。
二つ目は「アポクリン汗腺」です。主に脇の下・耳の中・乳頭周辺などに分布しており、タンパク質や脂質を含んだ粘性の高い汗を分泌します。この汗が細菌によって分解されると、体臭の原因になることがあります。
汗の分泌は、脳の視床下部にある体温調節中枢がコントロールしています。体温が上昇すると、視床下部から自律神経(交感神経)を通じて汗腺に指令が出て、発汗が始まります。体温が下がると発汗は止まります。この一連の流れが正常に機能していることで、私たちは体温を一定に保てるのです。
しかし、このコントロールシステムが乱れると、体温が高くないにもかかわらず汗が過剰に分泌されることがあります。これが「暑くないのに汗が出る」状態の根本にある仕組みです。
Q. 暑くないのに汗が出る主な原因は何ですか?
暑くない状況で汗が出る原因は多岐にわたります。代表的なものとして、自律神経の乱れ、更年期障害によるホルモンバランスの変化、多汗症、甲状腺機能亢進症や糖尿病などの内科的疾患、不安障害などの精神的要因、抗うつ薬などの薬の副作用が挙げられます。
📋 2. 暑くないのに汗が出る主な原因
暑くない状況で汗が出る原因は、大きく以下のようなカテゴリーに分類できます。
まず、自律神経の乱れです。ストレスや生活習慣の乱れ、睡眠不足などによって自律神経のバランスが崩れると、発汗コントロールに支障をきたします。
次に、ホルモンバランスの変化です。更年期やPMS(月経前症候群)、甲状腺疾患などによってホルモン分泌が変化し、発汗に影響を与えることがあります。
また、多汗症も重要な原因の一つです。体温調節とは無関係に、特定の部位から過剰に汗が出る状態で、遺伝的な要因や精神的な緊張が関係しているとされています。
さらに、内科的な疾患も考えられます。糖尿病・低血糖・感染症・悪性リンパ腫などの病気によって、全身の発汗量が増えることがあります。
精神的要因も見逃せません。不安障害・パニック障害・うつ病などの精神疾患も、発汗増加の原因となることがあります。
最後に、薬の副作用があります。抗うつ薬・解熱鎮痛薬・降圧薬など、特定の薬剤によって汗が増えることもあります。
これらの原因ごとに、症状の特徴や対処法が異なります。以下では、それぞれについて詳しく掘り下げていきましょう。
💊 3. 自律神経の乱れと発汗の関係
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類があり、これらがバランスよく働くことで体の機能が維持されています。発汗に関しては、主に交感神経が関与しており、交感神経が過剰に活性化されると、体温に関係なく汗が出やすくなります。
自律神経が乱れる主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
慢性的なストレスは、交感神経を継続的に刺激します。仕事や人間関係のプレッシャーが続くと、常に「緊張状態」が続き、発汗しやすい体質になってしまいます。
睡眠不足も大きな要因です。睡眠中は副交感神経が優位になり、体をリセットする時間です。睡眠が不足すると、このリセットがうまくいかず、交感神経優位の状態が続いてしまいます。
不規則な生活習慣も自律神経のリズムを乱します。食事・睡眠・運動のリズムが崩れると、体内時計が狂い、自律神経の調節能力が低下します。
また、急激な気温変化や季節の変わり目も、体が環境変化に対応しきれず、自律神経が乱れやすい時期です。冷暖房の普及により、室内外の温度差が大きくなっていることも、現代人の自律神経を疲弊させる一因となっています。
自律神経の乱れによる発汗の特徴としては、手のひらや足の裏・脇などに汗が出やすく、緊張した場面や精神的に不安定なときに悪化しやすいという傾向があります。全身がじっとりと汗ばむ感覚や、突然汗が噴き出すような症状が見られることもあります。
Q. 多汗症の診断基準と治療法を教えてください。
多汗症は、6ヶ月以上にわたる過剰な発汗に加え、両側対称性の発汗・日常生活への支障・週1回以上の発汗・25歳以下の発症・家族歴・睡眠中の発汗停止のうち2つ以上を満たす場合に診断されます。治療法には塩化アルミニウム外用薬、イオントフォレーシス、ボトックス注射、抗コリン薬の内服などがあります。
🏥 4. 更年期障害による発汗(ホットフラッシュ)
女性の場合、40代後半から50代にかけての更年期に入ると、突然顔や上半身がカーッと熱くなり、大量の汗が出る「ホットフラッシュ」と呼ばれる症状が現れることがあります。これは更年期障害の代表的な症状の一つです。
更年期になると、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が急激に低下します。エストロゲンは体温調節中枢にも影響を与えているため、その低下によって視床下部の体温調節機能が不安定になります。その結果、実際には体温が大きく上昇していないにもかかわらず、過剰な発汗が起こるのです。
ホットフラッシュの特徴として、突然上半身に熱感が生じて大量の汗が出ること、持続時間は数分程度で、その後に寒気が来ることがある点が挙げられます。夜間に起きることも多く(寝汗)、睡眠の質を大きく低下させることもあります。
男性にも更年期があり、男性ホルモン(テストステロン)の低下によって発汗などの症状が現れることがあります。これは「男性更年期障害(LOH症候群)」と呼ばれ、女性の更年期と同様に、ホルモン補充療法などの治療が有効な場合があります。
更年期による発汗が疑われる場合は、婦人科や内分泌科、あるいは更年期外来を受診することで、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬、生活習慣の改善などを組み合わせた治療を受けることができます。
⚠️ 5. 多汗症とはどんな状態か
多汗症とは、体温調節に必要な量を超えて、過剰に汗が分泌される状態のことを指します。暑くないのに汗が止まらない代表的な疾患の一つであり、日常生活に支障をきたすほどの発汗が続く場合には、医療的な治療の対象となります。

多汗症には大きく分けて2つのタイプがあります。
一つ目は「原発性局所多汗症(げんぱつせいきょくしょたかんしょう)」です。明確な原因疾患がなく、手のひら・足の裏・脇の下・顔面・頭部など特定の部位に限定して過剰な発汗が起こるタイプです。思春期ごろから症状が現れることが多く、精神的な緊張や暑さで悪化しますが、睡眠中は汗が止まることが特徴です。遺伝的な要因が関係していると考えられています。
二つ目は「続発性全身性多汗症」です。何らかの基礎疾患(甲状腺機能亢進症・糖尿病・感染症・悪性腫瘍など)や、薬の副作用によって引き起こされる全身性の発汗増加です。原因となっている疾患を治療することで改善が期待できます。
原発性局所多汗症の診断基準としては、6ヶ月以上にわたり明らかな原因なく、目に見える過剰な発汗が起きており、かつ以下のうち2つ以上を満たすことが目安となっています。両側性かつほぼ対称的な発汗であること、日常生活の支障になっていること、週1回以上発汗エピソードがあること、発症が25歳以下であること、家族歴があること、睡眠中は発汗が止まることなどが診断の参考にされます。
日本人の多汗症の有病率はおよそ5.3%とされており、決して珍しい疾患ではありません。しかし「汗かきだから」と自己診断してしまい、適切な治療を受けていない方も多いのが実情です。
🔍 6. 内科的疾患が原因の場合
暑くないのに汗が出る症状の背後には、内科的な疾患が隠れていることもあります。以下に代表的な疾患を挙げます。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。甲状腺ホルモンは代謝を高める作用があるため、過剰になると体がいつも「熱産生モード」になり、体温が高くなって汗が出やすくなります。動悸・体重減少・手の震え・眼球突出なども特徴的な症状です。
糖尿病・低血糖は、血糖値が急激に下がる低血糖状態のときに、冷や汗・動悸・手の震えなどが現れることがあります。インスリン治療中の糖尿病患者に多く見られますが、健康な人でも食事を抜いたりした場合に起こることがあります。
感染症(結核・HIV・心内膜炎など)は、慢性的な感染症では夜間の多量の発汗(寝汗)が特徴的な症状として現れることがあります。特に夜間に大量の寝汗が続く場合は注意が必要です。
悪性リンパ腫などの血液疾患でも、夜間の寝汗・発熱・体重減少が三大症状(「B症状」と呼ばれる)として知られています。これらの症状が重なる場合は早急な受診が必要です。
褐色細胞腫は、副腎にできる腫瘍で、アドレナリンなどのカテコラミンを過剰に分泌します。発作的な高血圧・頭痛・動悸・発汗が特徴的です。比較的稀な疾患ですが、放置すると命に関わることもあるため、疑われる場合は速やかに検査を受けることが大切です。
神経系の疾患(パーキンソン病など)も、自律神経の機能異常を引き起こし、発汗の調節がうまくいかなくなることがあります。
これらの疾患が原因の場合、発汗以外にも何らかのサインが出ていることがほとんどです。「おかしいな」と感じたら、自己判断せずに医療機関を受診することが重要です。
Q. 夜間の大量の寝汗が続く場合はどんな病気が疑われますか?
夜間に大量の寝汗が継続する場合、結核やHIV、心内膜炎などの慢性感染症や、悪性リンパ腫などの血液疾患が疑われます。特に寝汗に加えて発熱・体重減少・倦怠感が重なる場合は、血液疾患で「B症状」と呼ばれる典型的なサインであり、早急に内科などの医療機関を受診することが重要です。
📝 7. 精神的なストレスと発汗の関係
精神的なストレスや感情の変化が、発汗を引き起こすことはよく知られています。緊張したときに手に汗をかく、不安なときに冷や汗が出る、といった経験は多くの人が持っているでしょう。これは、ストレス・緊張・不安などの感情が脳に伝わり、交感神経が活性化されることで汗腺が刺激されるためです。
問題は、この反応が慢性的・過剰になる場合です。不安障害やパニック障害では、実際には危険でない状況でも脳が「危機状態」と判断してしまい、大量の発汗・動悸・過呼吸などの症状が現れます。社交不安障害(あがり症)の方では、人前に出るたびに大量の汗をかいてしまい、それが新たなストレスになるという悪循環に陥ることもあります。
うつ病でも、自律神経の乱れを通じて発汗症状が出ることがあります。また、PTSD(心的外傷後ストレス障害)では、フラッシュバックの際に大量の冷や汗をかくことがあります。
精神的な原因による発汗は、根本的なメンタルヘルスの問題を治療することで改善することが多く、心療内科や精神科での治療が有効です。認知行動療法や薬物療法(抗不安薬・抗うつ薬など)を組み合わせた治療が行われます。
また、社交不安障害による発汗が強く、日常生活に支障をきたしている場合は、多汗症の治療と並行してメンタルケアを行うことが効果的です。
💡 8. 薬の副作用として現れる発汗
特定の薬を服用することで、副作用として発汗が増えることがあります。服薬中に汗が増えたと感じる場合は、薬との関連を疑ってみることも大切です。
発汗を増やす可能性がある代表的な薬としては、まず抗うつ薬(特にSSRI・SNRI)が挙げられます。セロトニンやノルアドレナリンに作用する薬は、発汗を促進することがあります。服薬初期に多く、慣れてくると軽減することもあります。
解熱鎮痛薬(アスピリンなど)も、解熱作用によって体温が下がるときに汗をかかせる効果があります。風邪薬の多くにも同様の成分が含まれています。
降圧薬(カルシウム拮抗薬など)、インスリン製剤や経口糖尿病薬(低血糖を引き起こすことで発汗が起こる)、ステロイド薬(長期使用で代謝が変化する)、抗がん剤(ホルモン系薬剤を含む)なども発汗に影響を与えることがあります。
薬の副作用による発汗が疑われる場合は、自己判断で服薬をやめることは危険です。必ず主治医や薬剤師に相談し、薬の変更や用量調整を検討してもらいましょう。
✨ 9. 暑くないのに汗が出るときのセルフケア・対策
原因によって対策は異なりますが、日常生活の中で取り組めるセルフケアについて解説します。
🦠 自律神経を整える生活習慣
自律神経の乱れが原因と考えられる場合は、生活習慣の見直しが基本となります。毎日同じ時間に起床・就寝する規則正しい生活リズムを作ることが大切です。睡眠は7〜8時間を目安に確保しましょう。
食事は3食バランスよく摂ることが重要で、特に朝食は体内時計をリセットする効果があります。適度な運動(ウォーキング・ヨガ・軽い筋トレなど)は自律神経を整える効果があります。特に有酸素運動は、ストレス発散と自律神経のバランス改善に役立ちます。
入浴については、38〜40度程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かると、副交感神経が優位になりリラックス効果が得られます。熱すぎるお湯は逆効果になることがあります。
👴 ストレスマネジメント
ストレスと発汗の関係は切り離せません。自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。趣味の時間を設ける、自然の中で過ごす、好きな音楽を聴くなど、リラックスできる時間を意識的に作りましょう。
深呼吸や瞑想(マインドフルネス)は、副交感神経を優位にする効果があり、緊張や不安が高まったときに即効性があります。腹式呼吸を意識した深呼吸を1日数回行うだけでも、自律神経の安定につながります。
🔸 汗による不快感を軽減する工夫
発汗そのものをすぐに止めることはできなくても、汗による不快感を軽減する工夫は可能です。吸湿性・速乾性に優れた素材の衣類を選ぶことで、汗をかいても不快感が少なくなります。天然素材(コットン・麻など)は肌への刺激が少なくおすすめです。
汗ふきシートや制汗剤を活用することも有効です。市販の制汗剤には塩化アルミニウムなどの成分が含まれており、汗腺を一時的に収縮させる効果があります。ただし、肌への刺激が強いものもあるため、敏感肌の方は注意が必要です。
手のひらの汗が気になる場合は、手洗いを頻繁に行ったり、ハンカチやタオルを常に携帯したりして対処することで、心理的な負担を和らげることができます。
💧 食事・飲み物の工夫
カフェイン(コーヒー・紅茶・緑茶など)やアルコール、辛い食べ物は交感神経を刺激して発汗を促進することがあります。これらを控えることで、発汗量が減ることがあります。
一方で、水分補給は適切に行うことが大切です。過剰な発汗が続くと脱水になる可能性があるため、こまめな水分補給を心がけましょう。
Q. 発汗を抑えるためのセルフケアには何がありますか?
発汗を抑えるセルフケアとして、毎日同じ時間に起床・就寝する規則正しい生活リズムの維持、7〜8時間の十分な睡眠確保、ウォーキングなどの適度な有酸素運動、38〜40度のぬるめの入浴によるリラックスが効果的です。また、交感神経を刺激するカフェイン・アルコール・辛い食べ物を控えることも発汗軽減につながります。
📌 10. 病院に行くべき目安とは
セルフケアで対処できる場合もありますが、以下のような場合は医療機関への受診を検討してください。
日常生活・仕事・人間関係に支障が出ている場合は、多汗症などの治療が有効な疾患が隠れている可能性があります。改善を試みても発汗が続く場合や、急に症状が現れた場合も注意が必要です。もともと汗かきでなかったのに突然汗が増えた場合は、内科的な疾患や薬の影響を疑う必要があります。
夜間に大量の寝汗が続く場合は要注意です。特に体重減少・発熱・倦怠感などが重なる場合は、感染症や血液疾患の可能性があります。動悸・息切れ・体重減少・手の震えなどの症状を伴う場合は、甲状腺機能亢進症など内分泌疾患の可能性があります。
発作的な高血圧・激しい頭痛を伴う場合は、褐色細胞腫などの疾患が疑われ、早急な検査が必要です。精神的なつらさが強く、不安・憂うつ感・パニックなどを伴う場合は、心療内科や精神科への相談が助けになります。
受診の際は、どの部位から汗が出るか、いつ頃から症状があるか、汗が出やすい状況や時間帯、他に気になる症状はあるか、服薬中の薬があるか、といった情報を整理しておくと、診察がスムーズに進みます。
🎯 11. 多汗症の治療法について
多汗症と診断された場合、症状の部位や重症度に応じてさまざまな治療法が選択されます。
✨ 塗り薬(外用薬)
塩化アルミニウムを含む外用薬が最初の選択肢として使われることが多いです。汗腺の開口部をふさぐことで発汗を抑える効果があります。市販品もありますが、医療機関で処方される高濃度のものがより効果的です。手のひらや脇への使用が一般的で、比較的手軽に始められる治療法です。
📌 イオントフォレーシス
水道水に手や足を浸し、弱い電流を流すことで発汗を抑制する治療法です。手のひら・足の裏の多汗症に対して有効とされており、副作用が少ないことが特徴です。複数回の施術が必要ですが、維持療法として継続することで効果が持続します。
▶️ ボトックス(ボツリヌス毒素)注射
ボツリヌス毒素(ボトックス)を発汗が多い部位に注射することで、神経から汗腺への信号を一時的にブロックし、発汗を抑える治療法です。脇の多汗症に特に有効で、効果は半年〜1年程度持続します。保険適用(脇の場合)と自由診療(手のひら・足の裏など)があります。注射の際の痛みが気になる方には、麻酔クリームを使用することで不快感を軽減できます。
🔹 内服薬(抗コリン薬)
汗腺への神経伝達を阻害する抗コリン薬(プロバンサインなど)を内服することで、全身の発汗を抑える治療法です。ただし、口の渇き・便秘・目のかすみなどの副作用が現れることがあります。全身性の多汗症や、局所療法が難しい部位に有効です。
📍 マイクロ波治療(ミラドライなど)
マイクロ波を脇の皮下に照射し、エクリン汗腺とアポクリン汗腺を直接破壊する治療法です。一度の施術で長期的な効果が期待でき、再生しないため永続的な効果があるとされています。自由診療になるため費用がかかりますが、「脇汗を根本的に解決したい」という方に選ばれています。

💫 外科的治療
重症の多汗症に対して、胸部の交感神経の一部を切断する「ETS手術(内視鏡的胸部交感神経切除術)」が行われることがあります。手のひらの多汗症に対して高い効果がありますが、代償性発汗(お腹・背中・太ももなど他の部位に汗が増える)という副作用が問題となることがあります。他の治療法で効果が得られない重症例に限定して検討される治療です。
多汗症の治療は、症状の部位・重症度・生活スタイルに合わせて選択することが大切です。一人で悩まずに、皮膚科や多汗症専門外来に相談してみましょう。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「当院では、「汗が多くて恥ずかしい」「体質だから仕方ない」と長年悩みを抱えたまま受診される患者様が多くいらっしゃいますが、多汗症をはじめとする発汗のお悩みには、症状の原因や部位に応じた有効な治療法が存在します。最近の傾向として、自律神経の乱れや精神的ストレスが背景にある方も増えており、発汗症状だけでなく生活習慣や心身の状態を丁寧に確認したうえで、一人ひとりに合った治療をご提案するよう心がけています。「汗のことで困っているけれど、どこに相談すればよいかわからない」という方も、ぜひお気軽にご相談ください。」
📋 よくある質問
主な原因として、自律神経の乱れ、更年期障害によるホルモンバランスの変化、多汗症、甲状腺機能亢進症や糖尿病などの内科的疾患、不安障害などの精神的要因、薬の副作用などが挙げられます。原因によって症状の特徴や対処法が異なるため、気になる場合は医療機関への相談をおすすめします。
多汗症の診断は、6ヶ月以上続く過剰な発汗や、両側対称性・日常生活への支障・家族歴などの基準をもとに行われます。治療法には塩化アルミニウムの塗り薬、イオントフォレーシス、ボトックス注射、抗コリン薬の内服などがあり、症状の部位や重症度に応じて選択されます。アイシークリニックでは一人ひとりに合った治療をご提案しています。
夜間の大量の寝汗が続く場合は注意が必要です。結核やHIVなどの慢性感染症、悪性リンパ腫などの血液疾患では、寝汗・発熱・体重減少が代表的な症状として現れることがあります。これらの症状が重なる場合は、自己判断せず早めに内科などの医療機関を受診することをおすすめします。
はい、男性にも更年期障害があります。男性ホルモン(テストステロン)の低下によって発汗などの症状が現れる「男性更年期障害(LOH症候群)」と呼ばれる状態で、女性の更年期と同様にホルモン補充療法などの治療が有効な場合があります。気になる症状がある場合は、内分泌科や泌尿器科への受診をご検討ください。
規則正しい生活リズムの維持、7〜8時間の十分な睡眠、適度な有酸素運動、38〜40度のぬるめの入浴などが自律神経を整えるのに効果的です。また、深呼吸や瞑想でストレスをマネジメントすることも有効です。カフェインやアルコール、辛い食べ物を控えることで発汗が軽減されることもあります。症状が改善しない場合は医療機関への受診をおすすめします。
💊 まとめ
暑くないのに汗が出るという症状は、自律神経の乱れ・更年期障害・多汗症・内科的疾患・精神的ストレス・薬の副作用など、さまざまな原因によって引き起こされます。
汗は体温調節のために必要な機能ですが、日常生活に支障をきたすほどの発汗が続く場合は、適切な診断と治療を受けることが大切です。特に、急に症状が現れた場合や、発汗以外にも気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
多汗症については、以前は「体質だから仕方ない」と諦めていた方も多かったのですが、現在はボトックス注射や塗り薬・イオントフォレーシスなど、有効な治療法が数多く存在します。日々のストレスや不快感を軽減するためにも、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
アイシークリニック池袋院では、多汗症をはじめとする発汗に関するお悩みに対して、丁寧な診察と適切な治療を提供しています。「汗のことで困っているけれど、相談できていない」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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📚 参考文献
- 日本皮膚科学会 – 多汗症の診断基準・治療法(塩化アルミニウム外用・イオントフォレーシス・ボトックス注射・外科的治療など)に関する診療ガイドラインの参照
- 厚生労働省 – 自律神経の乱れ・精神的ストレス・不安障害・パニック障害・うつ病など、精神的要因による発汗症状に関連するこころの健康情報の参照
- PubMed – 原発性局所多汗症の有病率・診断基準・病態メカニズム・各種治療法の有効性に関する国際的な医学的エビデンスの参照
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務