
夏になると「自分だけなぜか蚊に刺される」「隣にいる人は刺されないのに」と感じたことはありませんか?実は、蚊に刺されやすいかどうかには、体質や生活習慣、身体的な特徴など、さまざまな要因が関わっています。蚊は単純にランダムに人を選んでいるわけではなく、特定のシグナルに引き寄せられることが科学的にも明らかになっています。本記事では、蚊に刺されやすい人の特徴を医学的・科学的な観点から詳しく解説するとともに、効果的な予防・対策法についてもご紹介します。
目次
- 蚊はどうやって人を見つけるのか
- 蚊に刺されやすい人の身体的特徴
- 血液型と蚊の関係
- 汗・体臭と蚊の関係
- 体温・二酸化炭素と蚊の関係
- 生活習慣・行動が蚊を引き寄せる
- 妊娠中・子どもは蚊に刺されやすい?
- 蚊に刺された後の反応の違い
- 蚊に刺されにくくするための対策
- 蚊が媒介する感染症について知っておこう
- まとめ
この記事のポイント
蚊に刺されやすい人の特徴として、O型血液型・高体温・多汗・活発な代謝・妊娠中などが科学的に示されている。対策は虫よけ剤(ディート・イカリジン)の使用、淡色の服装、こまめな汗の除去が有効。
🎯 蚊はどうやって人を見つけるのか
蚊が人間を見つけて近づいてくるメカニズムは、非常に精巧にできています。蚊は複数の感覚器官を駆使して獲物を探しており、その仕組みを理解することが、「なぜ自分ばかり刺されるのか」という疑問を解く鍵になります。
蚊が人を認識するためのシグナルは大きく以下のようなものに分けられます。まず、呼吸によって放出される二酸化炭素(CO₂)です。蚊はCO₂を感知する優れた受容体を持っており、数十メートル先からでもその濃度の変化を察知することができます。次に、体から発せられる熱(体温)や赤外線も重要な手がかりです。さらに、汗に含まれる乳酸やアンモニア、カルボン酸などの化学物質、皮膚に存在する微生物(常在菌)が生み出す揮発性物質なども蚊を引き寄せます。
また、蚊は視覚的な情報も利用します。動いているもの、暗い色のものをより認識しやすいとされています。これらの複合的なシグナルが組み合わさることで、蚊は人間を効率よく見つけ出し、吸血対象を選択しています。
日本で最もよく見られる蚊は「ヒトスジシマカ(ヤブ蚊)」と「アカイエカ」の2種類です。ヒトスジシマカは主に昼間に活動し、アカイエカは夜間に活動します。どちらも人間の出すさまざまなシグナルに反応して近づいてくるという点では共通しています。
Q. 蚊が人を見つける仕組みはどうなっていますか?
蚊は複数のシグナルを使って人を探します。呼吸で放出される二酸化炭素(CO₂)を数十メートル先から感知し、体温や赤外線、汗に含まれる乳酸・アンモニア・カルボン酸などの化学物質にも反応します。さらに視覚も活用し、暗い色や動くものを認識しやすい特性を持っています。
📋 蚊に刺されやすい人の身体的特徴
蚊に刺されやすいかどうかには、その人の体質や身体的な特徴が大きく関わっています。科学的な研究によって、蚊に刺されやすい人にはいくつかの共通した特徴があることがわかっています。
🦠 皮膚の常在菌の種類と量
近年の研究で特に注目されているのが、皮膚に生息している常在菌(細菌叢)の違いです。皮膚に存在する細菌はさまざまな揮発性物質を産生しており、その種類や量によって体臭が異なります。蚊が好む揮発性物質を多く産生する菌が多い人ほど、蚊を引き寄せやすいとされています。
実際に、アフリカでの研究では、皮膚常在菌の構成がマラリアを媒介するハマダラカへの引き寄せやすさと関連していることが示されています。皮膚常在菌の構成は遺伝的な要因のほか、食生活や生活環境、衛生習慣などによっても変化します。
👴 皮膚の露出面積
単純な話ではありますが、肌の露出が多い人ほど蚊に刺されるリスクは高まります。屋外では長袖・長ズボンを着用している人に比べて、半袖・短パンを着用している場合、圧倒的に刺される面積が多くなります。これは物理的な要因ですが、無視できない重要なポイントです。
🔸 代謝が活発な人
代謝が活発な人は、呼吸や皮膚から放出される二酸化炭素の量が多くなります。また、体温も高くなりやすく、体から発散される揮発性の化学物質の量も多くなります。これらはいずれも蚊を引き寄せる要因となるため、代謝が活発な人は蚊に刺されやすい傾向があります。
💊 血液型と蚊の関係
「O型の人は蚊に刺されやすい」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。実はこれは科学的な根拠が存在する話です。
2004年に日本で行われた研究(Shirai Y, et al.)では、血液型と蚊(ヒトスジシマカ)の吸血行動の関係について調べられました。その結果、O型の人はA型の人に比べて約2倍の頻度で蚊に刺されやすかったという結果が出ています。B型、AB型はその中間程度でした。
この原因として考えられているのが、血液型に対応した分泌型の物質(血液型物質)です。人間の体は血液型に応じた糖鎖抗原(ABH抗原)を持っており、「分泌型」と呼ばれる約80%の人はこれを唾液や汗などの体液にも分泌しています。蚊がこの分泌された血液型物質を感知し、好みの血液型を選択している可能性があるとされています。
ただし、この研究は特定の条件下での実験であり、すべての状況に当てはまるわけではありません。血液型以外の要因(体温・汗・体臭など)の影響も非常に大きいため、血液型だけで蚊への刺されやすさが決まるわけではありません。また、「非分泌型」と呼ばれる約20%の人は体液への抗原分泌が少ないため、血液型の影響を受けにくい可能性もあります。
Q. 血液型によって蚊の刺されやすさは変わりますか?
2004年の研究では、O型の人はA型の人に比べて約2倍の頻度で蚊に刺されやすい結果が出ています。血液型に応じた糖鎖抗原(ABH抗原)を蚊が感知している可能性が指摘されています。ただし体温・発汗・体臭など他の要因も大きく影響するため、血液型だけで刺されやすさが決まるわけではありません。
🏥 汗・体臭と蚊の関係
汗と蚊の関係は非常に深く、蚊に刺されやすい人の特徴を語るうえで欠かせない要素です。蚊は汗に含まれる複数の化学物質に強く反応します。
💧 乳酸
汗に含まれる乳酸は、蚊を引き寄せる最も重要な物質の一つです。乳酸は運動後や緊張時に多く産生されます。特に激しい運動をした後は乳酸が大量に分泌されるため、蚊に狙われやすくなります。また、乳酸の産生量には個人差があり、体質によって多い人と少ない人がいます。
✨ アンモニア・カルボン酸
汗に含まれるアンモニアやカルボン酸(特に酪酸など)も蚊を引き寄せる物質として知られています。これらの物質は皮膚に生息する細菌が汗の成分を分解することで産生されます。つまり、汗をかいた後にそのままにしておくと、細菌が増殖してより多くのこれら物質が生成され、蚊を引き寄せやすくなってしまいます。
📌 汗の量
単純に汗の量が多い人ほど、蚊を引き寄せる化学物質を多く発散することになります。多汗症の方や、運動量が多い方、暑がりな方などは蚊に刺されやすくなる傾向があります。
▶️ アルコール摂取後
お酒を飲んだ後は蚊に刺されやすくなるという研究結果もあります。アルコールを摂取すると、体内での代謝が促進されて体温が上昇し、皮膚から発散されるエタノールの量も増加します。また、アルコール分解の過程で二酸化炭素の産生量も増えるため、複合的に蚊を引き寄せやすくなると考えられています。
⚠️ 体温・二酸化炭素と蚊の関係
蚊が人を選ぶ際に重要な役割を果たす体温と二酸化炭素について、詳しく見ていきましょう。
🔹 体温が高い人
蚊は赤外線センサーのような器官を持っており、周囲の熱源を感知する能力があります。体温が高い人や、皮膚温度が高い部分(血管が多い部位など)は蚊に認識されやすくなります。体温は個人差があるほか、運動後・入浴後・発熱時などに一時的に上昇します。また、妊娠中は体温が上昇しやすいため、これも蚊に刺されやすくなる要因となります。
また、体温が高いと汗の量も増えるため、体温と汗は互いに関連しながら蚊を引き寄せる効果を相乗的に高めます。
📍 二酸化炭素(CO₂)の排出量
蚊は二酸化炭素に対して非常に敏感です。数十メートル先からでもCO₂の濃度勾配を感知し、濃度が高い方向へ飛んでくることができます。CO₂の排出量が多い人ほど、蚊に発見されやすくなります。
一般的に、体が大きい人ほど呼吸で排出するCO₂の量が多くなります。また、運動中・運動後は呼吸が深く速くなるため、CO₂排出量が増加します。子どもより大人の方がCO₂排出量が多い傾向があり、一説では大人の方が子どもより蚊に見つかりやすいとも言われています(ただし、子どもでも皮膚の体臭など他の要因で蚊を引き寄せることがあります)。
🔍 生活習慣・行動が蚊を引き寄せる
身体的な特徴だけでなく、日常の生活習慣や行動パターンも蚊に刺されやすさに影響しています。
💫 運動習慣
運動後は体温が上昇し、発汗量が増え、CO₂排出量も多くなります。これらはすべて蚊を引き寄せる要因です。特に屋外でのスポーツやジョギングなどの後は、蚊に狙われやすい状態になっています。運動後はシャワーで汗を流し、体を清潔に保つことが重要です。
🦠 服の色
蚊は視覚も使って獲物を認識します。研究によると、蚊は暗い色(黒・紺・赤など)に引き寄せられやすく、白や明るい色には近づきにくい傾向があることがわかっています。2022年に発表されたカリフォルニア大学の研究では、蚊はCO₂を感知した後、特定の色(赤・オレンジなど長波長の色)に向かって飛ぶ行動をとることが示されました。夏場に暗い色の服を着ている場合、蚊に見つかりやすくなる可能性があります。
👴 香水・化粧品
特定の香水や化粧品の香りは蚊を引き寄せることがあります。一方で、花の香りなど植物由来の成分が蚊を引き寄せる場合もあります。ただし、これは香りの種類によって異なり、一概には言えません。逆に、蚊が嫌がる香り(後述の忌避剤に含まれるものなど)を活用することで、蚊を遠ざけることができます。
🔸 屋外での活動時間帯
蚊の活動が活発になる時間帯に屋外にいる機会が多い人は、当然刺されやすくなります。ヒトスジシマカ(ヤブ蚊)は日中(特に早朝と夕方)に活動が活発で、アカイエカは夜間に活動します。蚊が多い環境(草むら・水辺・公園など)に頻繁に出かける方も、刺されるリスクが高くなります。
Q. 妊娠中は蚊に刺されやすくなりますか?
妊娠中は基礎代謝の上昇により体温が高くなり、呼吸量の増加でCO₂排出量も多くなります。さらに発汗量も増えるため、蚊を引き寄せる要因が重なります。研究では妊婦は非妊婦に比べて約2倍刺されやすいとの報告もあり、虫よけ剤の使用などしっかりとした対策が特に重要です。
📝 妊娠中・子どもは蚊に刺されやすい?
妊娠中の方や小さな子どもについて、蚊への刺されやすさという観点から見てみましょう。
💧 妊娠中の方
妊娠中の女性は、複数の要因から蚊に刺されやすいとされています。まず、妊娠中は基礎代謝が上昇し、体温が通常より高くなる傾向があります。また、呼吸数・呼吸量ともに増加するため、CO₂の排出量も多くなります。さらに、妊娠中は発汗量が増えることもあり、これらの複合的な効果によって蚊を引き寄せやすい状態になると考えられています。
ある研究では、妊婦さんは非妊婦さんに比べて蚊(ハマダラカ)に約2倍刺されやすかったという報告もあります。妊娠中は特に虫よけ対策をしっかり行うことが推奨されます。
✨ 子ども
子どもが蚊に刺されやすいかどうかについては、一般的な認識と科学的な見解が必ずしも一致しない部分があります。大人に比べてCO₂排出量は少ないものの、子どもは活発に動き回ることが多いため運動後の状態(体温上昇・発汗)になりやすく、また肌の露出も多い場合があります。
また、子どもは皮膚が薄く、血管が透けて見えやすいため、蚊が吸血しやすいという見方もあります。さらに、子どもは蚊に刺されても最初のうちは気づかなかったり、かゆみを訴えない場合もあり、気づいたときには複数か所刺されているということも少なくありません。
💡 蚊に刺された後の反応の違い
蚊に刺される頻度だけでなく、刺された後の反応にも大きな個人差があります。同じ人数の人が同じように蚊に刺されても、赤みや腫れ、かゆみの程度は人によって大きく異なります。
📌 アレルギー反応の仕組み
蚊に刺されると、蚊の唾液に含まれるタンパク質に対して免疫系が反応することで、かゆみや赤み・腫れが生じます。これはアレルギー反応の一種です。蚊の唾液には、血液が固まるのを防ぐ物質や麻酔作用のある物質が含まれており、これらに対する免疫反応の強さが人によって異なります。
▶️ 年齢による反応の変化
蚊に刺された後の反応は、年齢によっても変化します。一般的に、子どもの頃は蚊に刺された経験が少ないため免疫系が過敏に反応し、腫れやかゆみが強く出やすい傾向があります。成長して蚊に刺される経験を積むにつれて免疫系が慣れてきて、反応が和らぐことが多いです。高齢者では逆に反応が弱まる傾向があります。
🔹 グレレン反応・遅延型反応
蚊に刺された後の反応には大きく2種類あります。刺された直後から数時間以内に現れる「即時型反応(Ⅰ型アレルギー)」と、数時間から数日後に現れる「遅延型反応」です。即時型反応では赤みやかゆみ・膨疹(じんましんのような腫れ)が現れ、遅延型反応では硬い腫れや強いかゆみが持続します。
一部の人では「虫刺されアレルギー」として特に強い反応が出ることがあり、非常に大きく腫れ上がったり、発熱を伴ったりすることもあります。また、非常にまれではありますが、蚊に刺されることで全身性のアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こる場合もあります。
📍 EBウイルスと蚊刺過敏症
まれな疾患として「蚊刺過敏症(こうしかびんしょう)」があります。これはEBウイルス(Epstein-Barrウイルス)に感染したNK細胞やT細胞が、蚊の唾液抗原に反応して過剰に活性化される疾患です。蚊に刺された後に高熱・リンパ節腫脹・潰瘍形成などの重篤な症状を繰り返す場合は、この疾患が疑われます。特に小児に多く、アジア人に多いとされています。このような症状がある場合は早めに医療機関を受診してください。
Q. 蚊に刺された後どんな症状があれば受診が必要ですか?
刺された部位が大きく腫れて数日経っても改善しない場合、38度以上の発熱が続く場合、患部が化膿している場合、全身にじんましんや呼吸困難が現れた場合は早めの受診が必要です。海外渡航後に発熱・頭痛・関節痛が現れた際は感染症の可能性もあるため、アイシークリニックへお早めにご相談ください。
✨ 蚊に刺されにくくするための対策

蚊に刺されやすい体質や特徴は完全にコントロールすることは難しいですが、適切な対策を取ることで刺されるリスクを大幅に減らすことができます。以下に効果的な対策をご紹介します。
💫 虫よけ剤の使用
蚊よけに最も効果的な対策の一つが、虫よけ剤(忌避剤)の使用です。代表的な成分として以下のものがあります。
ディート(DEET)は最も広く使用されている忌避成分で、蚊や他の虫に対して高い効果を発揮します。日本では12歳以上は30%以下の濃度、6ヵ月以上12歳未満の小児には10%以下の濃度のものが使用可能です(6ヵ月未満の乳児への使用は禁止されています)。成分が神経系に作用するため、正しい使い方を守ることが重要です。
イカリジン(ピカリジン)はディートと同等以上の効果があるとされており、皮膚への刺激が少なく、プラスチックや合成繊維を痛めないという利点があります。日本では2016年から市販品に配合されるようになりました。子どもにも比較的使いやすい成分とされています。
エチル ブチルアセチルアミノプロピオネート(IR3535)も忌避効果がある成分ですが、ディートやイカリジンに比べると効果持続時間がやや短い傾向があります。
🦠 服装の工夫
蚊に刺されないためには、肌の露出をなるべく減らすことが基本です。屋外では長袖・長ズボンを着用し、靴下を履くことで刺されるリスクを下げられます。また、色については白や淡い色の服を選ぶと、蚊に見つかりにくくなる可能性があります。蚊は黒・紺・赤などの暗い色や濃い色に引き寄せられる傾向があるためです。
また、ゆったりとした服よりも身体に密着した服の方が蚊が布を通して刺しにくいとも言われています。
👴 汗をこまめに洗い流す
汗に含まれる乳酸やアンモニアなどの物質が蚊を引き寄せるため、こまめに汗を拭いたり洗い流したりすることが効果的です。特に運動後は汗をそのままにせず、シャワーや濡れタオルなどで体を清潔に保つようにしましょう。ウェットティッシュや制汗シートも効果的です。
🔸 蚊が嫌いな植物・香りを活用する
蚊が嫌いとされる香りを持つ植物には、ハーブ類を中心にいくつかの種類があります。シトロネラ(レモングラスの一種)、ラベンダー、ユーカリ、ペパーミントなどのエッセンシャルオイルは蚊を忌避する効果があるとされています。これらを使ったスプレーやキャンドル、アロマディフューザーなどを活用することで、蚊の接近を防ぐ効果が期待できます。ただし、化学的な忌避剤と比較すると効果の持続時間は短く、効果の強さも劣る場合が多いため、補助的な手段として考えるとよいでしょう。
💧 蚊の発生源を減らす
蚊は水たまりで繁殖します。庭やベランダにある植木鉢の受け皿・バケツ・古タイヤなどに水が溜まらないよう注意しましょう。小さな水たまりでも蚊の産卵場所になります。定期的に確認して水を捨てる習慣をつけることが、蚊の発生を根本から抑える対策になります。
✨ 蚊帳・網戸・蚊取り器具の活用
室内への蚊の侵入を防ぐために、網戸をきちんと整備し、隙間がないか定期的に確認しましょう。就寝時には蚊帳を使用することも効果的です。また、蚊取り線香・電気蚊取り器(液体タイプ・マットタイプ)・UV光を使った蚊取り機なども室内外での蚊対策に役立ちます。
📌 食事・体内環境の管理
ある研究では、ビタミンB1(チアミン)の摂取が体から発散される物質を変化させ、蚊を遠ざける可能性があるとも言われていますが、現時点では科学的なエビデンスとしては十分ではありません。一方、アルコールの摂取は蚊を引き寄せることが研究で示されているため、特に屋外での活動中はアルコールを控えることが対策の一つになります。
📌 蚊が媒介する感染症について知っておこう
蚊に刺されることは単純なかゆみや不快感にとどまらず、場合によっては感染症のリスクを伴います。蚊が媒介する感染症について正しく理解しておくことは、適切な予防行動につながります。
▶️ 日本国内でのリスク
日本国内では、かつて日本脳炎が深刻な問題でしたが、ワクチンの普及により現在では年間数件程度に抑えられています。日本脳炎はコガタアカイエカが媒介するウイルス性の疾患で、重症化すると脳炎・死亡に至ることもあります。日本では乳幼児期から予防接種が推奨されています。
また、2014年に東京の代々木公園周辺でデング熱の国内感染事例が確認されて以降、日本でもヒトスジシマカによるデング熱感染のリスクが認識されるようになりました。デング熱は高熱・頭痛・関節痛・発疹などを引き起こすウイルス性の疾患で、重症化すると出血熱を起こすことがあります。
🔹 海外渡航時のリスク
海外では蚊が媒介する感染症の種類がさらに増えます。主なものとして以下が挙げられます。マラリアはハマダラカが媒介する原虫感染症で、アフリカ・東南アジア・南米など熱帯・亜熱帯地域での罹患リスクがあります。高熱・悪寒・頭痛などを繰り返し、重症化すると生命を脅かすこともあります。ジカ熱はジカウイルスによる感染症で、中南米・東南アジア・太平洋諸島などで流行しています。妊婦さんが感染した場合、生まれてくる赤ちゃんに小頭症などの先天性異常が生じるリスクがあります。チクングニア熱はチクングニアウイルスによる感染症で、高熱と関節痛が主な症状です。ウエストナイル熱はウエストナイルウイルスによる感染症で、北米・中東・アフリカ・ヨーロッパなどで発生が確認されています。
海外旅行を計画している方は、渡航先での感染症リスクを事前に確認し、適切な虫よけ対策と必要に応じたワクチン接種(日本脳炎・黄熱など)を検討することが重要です。渡航前に旅行外来や感染症専門の医療機関に相談することをお勧めします。
📍 蚊に刺された後に注意が必要な症状
通常の蚊刺症では数日以内にかゆみ・腫れは治まりますが、以下のような症状がある場合は医療機関を受診することを検討してください。刺された部位が非常に大きく腫れ上がり、数日経っても改善しない場合、38度以上の発熱が続く場合、刺された部位から赤い筋が伸びていたり、化膿している場合(二次感染の可能性)、全身にじんましんや呼吸困難などのアレルギー症状が現れた場合(アナフィラキシーの可能性あり)、海外渡航後に発熱・頭痛・関節痛などが現れた場合(感染症の可能性)などが挙げられます。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「当院では、夏になると蚊刺症によるかゆみや腫れでご来院される患者様が多く、「なぜ自分だけ刺されるのか」というご質問を日常的にいただきます。体温・発汗・皮膚常在菌など複数の要因が重なって蚊への引き寄せやすさが決まるため、まずは虫よけ剤の適切な使用と汗をこまめに洗い流すことを組み合わせた対策が効果的です。また、刺された後に大きく腫れる・発熱が続くといった場合や、海外渡航後に体調不良が現れた場合は感染症の可能性もありますので、どうぞお早めにご相談ください。」
🎯 よくある質問
2004年の研究では、O型の人はA型の人に比べて約2倍の頻度で蚊に刺されやすかったという結果が出ています。血液型に対応した分泌物質を蚊が感知している可能性があります。ただし、体温・汗・体臭など他の要因の影響も大きく、血液型だけで刺されやすさが決まるわけではありません。
運動後は体温の上昇・発汗量の増加・二酸化炭素排出量の増加が重なり、蚊を引き寄せやすい状態になります。また、汗に含まれる乳酸も蚊を誘引する主要な物質です。運動後はできるだけ早くシャワーで汗を洗い流し、虫よけ剤を併用することをお勧めします。
妊娠中は基礎代謝の上昇・体温の上昇・呼吸量の増加により、蚊に約2倍刺されやすくなるという研究報告があります。子どもは活発に動き回るため体温・発汗が上がりやすく、肌の露出も多い傾向があります。どちらも虫よけ剤を適切に使用するなど、しっかりとした対策が重要です。
代表的な成分はディート(DEET)とイカリジン(ピカリジン)です。ディートは高い効果がある一方、年齢により使用できる濃度が異なります。イカリジンは皮膚刺激が少なく子どもにも使いやすいとされています。いずれも正しい用法・用量を守って使用することが大切です。
刺された部位が大きく腫れて数日経っても改善しない場合、38度以上の発熱が続く場合、患部が化膿している場合、全身にじんましんや呼吸困難が現れた場合は早めの受診が必要です。また、海外渡航後に発熱・頭痛・関節痛が現れた際は感染症の可能性もあるため、当院へお早めにご相談ください。
📋 まとめ
蚊に刺されやすい人の特徴について、多角的な視点からご説明してきました。蚊が人を選ぶ際には、血液型・体温・汗の成分・皮膚常在菌・二酸化炭素排出量など、さまざまな要因が複合的に関わっています。
特にO型の血液型の方、代謝が活発な方、多汗症の方、妊娠中の方などは蚊に刺されやすい傾向があります。また、運動後やアルコール摂取後は一時的に蚊を引き寄せやすい状態になります。服の色についても、暗い色の服は蚊に見つかりやすくなる可能性があります。
一方で、これらの要因の多くは生まれ持った体質や生理的な現象であるため、完全にコントロールすることはできません。しかし、適切な虫よけ剤の使用・服装の工夫・汗をこまめに拭く・蚊の発生源を減らすなどの対策を組み合わせることで、蚊に刺されるリスクを大幅に低減することは可能です。
また、蚊刺症の多くは自然に改善しますが、症状が強い場合や海外渡航後に発熱などがある場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
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📚 参考文献
- 厚生労働省 – 蚊が媒介する感染症(デング熱・日本脳炎・マラリア・ジカ熱など)の予防・対策に関する公式情報、および虫よけ剤(ディート・イカリジン)の使用上の注意・年齢別使用制限に関する情報
- 国立感染症研究所 – 蚊が媒介する感染症(日本脳炎・デング熱・チクングニア熱・ジカ熱・マラリア・ウエストナイル熱)の国内外における発生状況・疫学情報、およびヒトスジシマカ・アカイエカなど媒介蚊の種類と生態に関する科学的情報
- WHO(世界保健機関) – 蚊を含むベクター(媒介生物)が引き起こす感染症の世界的な流行状況・リスク評価、および妊娠中の方への蚊刺症リスク(ジカ熱・マラリアの母子感染リスク含む)に関する国際的なガイドライン情報
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務