
アウトドアや農作業、ペットとの散歩など、自然の多い環境に出かけた後に皮膚の異変に気づいたとき、「もしかしてマダニに刺されたのでは?」と不安になる方は少なくありません。マダニは蚊やブヨとは異なり、皮膚に長時間吸血し続けるという特徴を持っており、刺された跡の見た目や症状も独特です。また、マダニが媒介する感染症のなかには重症化するものもあるため、正しい知識を持って早めに対処することが非常に重要です。この記事では、マダニに刺された跡の特徴や他の虫刺されとの見分け方、注意すべき症状、そして受診のタイミングについて詳しく解説していきます。
目次
- マダニとはどんな生き物か
- マダニに刺された跡の見た目と特徴
- 普通の虫刺されとの違いを見分けるポイント
- マダニに刺された後に現れる症状
- マダニが媒介する主な感染症
- 刺された跡を発見したときの正しい対処法
- 絶対にやってはいけないNG行動
- 受診すべきタイミングと診療科
- マダニに刺されやすい環境と予防策
- まとめ
この記事のポイント
マダニは麻酔作用のある唾液で痛みなく吸血し、SFTSや日本紅斑熱などを媒介する。刺し跡発見後は火やアルコールでの除去を避け速やかに皮膚科を受診し、2週間以内の発熱は感染症内科へ。
🎯 マダニとはどんな生き物か
マダニは、クモやサソリと同じクモ綱に属するダニの一種で、節足動物です。体長は吸血前で1〜3mm程度ですが、吸血後には1cm以上に膨らむこともあります。日本国内で生息が確認されているマダニの種類は約40種とされており、代表的なものにシュルツェマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニなどがあります。
マダニは山林や草むら、河原など、動植物が豊富な自然環境に広く生息しています。宿主となる動物(シカ、イノシシ、野鳥、ウサギなど)が通る場所で待ち伏せし、体温や二酸化炭素、振動などを感知して宿主に飛び移ります。その後、皮膚の柔らかい部分(耳の後ろ、わきの下、足の付け根、首回りなど)を選んで咬みつき、数日間にわたって吸血を続けます。
マダニが特に活発になるのは春から秋にかけての時期で、気温が上がる4月〜11月ごろが刺されるリスクの高いシーズンとされています。しかし、暖冬の年には冬場でも活動していることがあるため、一年を通じて注意が必要です。
マダニが問題視されるのは、その吸血行為そのものよりも、吸血時に様々なウイルスや細菌、原虫を宿主の体内に送り込む「媒介生物」としての役割にあります。世界的に見ても、マダニは感染症の媒介生物として非常に重要視されており、日本においても近年、マダニが原因となる感染症の報告数が増加傾向にあります。
Q. マダニに刺された跡の見た目の特徴は?
マダニに刺された跡は、中心に小さな刺し口のある赤い丘疹として現れ、周囲に直径1〜3cmの発赤を伴うことが多いです。ライム病を発症した場合は、刺し口を中心に同心円状に広がる遊走性紅斑(ターゲットサイン)が現れることがあります。
📋 マダニに刺された跡の見た目と特徴
マダニに刺された跡は、他の虫刺されと比べていくつかの際立った特徴があります。まず最も大きな特徴は、マダニがまだ皮膚に咬みついたままの状態で発見されることが多い点です。吸血を完了するまでの数日間、マダニは同じ場所に留まり続けるため、皮膚上に茶色や赤茶色の小さな粒のようなものがくっついているのが見えることがあります。吸血が進むと体が膨らみ、黒いゴマやダニと分かるサイズになることもあります。
刺された直後から数時間は、皮膚の変化がほとんどわからない場合が多いです。マダニは咬みつく際に、麻酔作用のある唾液を分泌するため、刺されたときの痛みをほとんど感じません。そのため、気づかないうちにマダニが皮膚に付着していたというケースが珍しくありません。
マダニが離脱した後の跡は、中心部に小さな刺し口のある赤い丘疹(きゅうしん)として現れます。刺し口周辺の皮膚は赤く腫れ、直径1〜3cm程度の発赤(ほっせき)を伴うことが多いです。刺された部位はしばらくの間、かゆみや軽い痛みを伴うことがあります。
また、マダニに刺されてから数日〜数週間後に、感染症の一つであるライム病を発症した場合、「遊走性紅斑(ゆうそうせいこうはん)」と呼ばれる特徴的な皮膚症状が現れることがあります。これは刺し口を中心に同心円状に広がる環状の赤み(ターゲットサイン)で、直径が5cm以上になることもあります。ライム病は日本では北海道を中心に報告されており、この皮膚症状が現れた場合は早急な受診が必要です。
刺された直後は目立たないことが多いため、アウトドア後は入浴時などに全身をくまなくチェックする習慣が大切です。特に耳の後ろ、わきの下、ひざの裏、足の付け根、陰部周辺など、皮膚が柔らかく血管が豊富な部位は念入りに確認してください。
💊 普通の虫刺されとの違いを見分けるポイント
マダニによる刺し跡と、蚊やブヨ、アブなどによる虫刺されを正確に見分けることは、適切な対処をする上で非常に重要です。いくつかの点を比較することで、ある程度の判断が可能になります。
まず「皮膚に何か付いているかどうか」という点が最も分かりやすい違いです。蚊やブヨは吸血後に飛び去りますが、マダニは吸血中も皮膚にくっついたままです。もし皮膚に小さな茶色や黒い粒状のものがくっついていて、取ろうとしても簡単に取れない場合は、マダニである可能性が高いです。
次に「かゆみの程度と発症のタイミング」も参考になります。蚊に刺された場合は比較的すぐにかゆみが始まりますが、マダニに刺された場合は麻酔作用のある唾液の影響でしばらく症状が出にくいです。強いかゆみよりも、じわじわとした違和感や軽い痛みで気づくことが多いです。
「腫れの大きさと広がり方」も重要な判断材料です。蚊による腫れは通常、刺されてから数時間でピークを迎え、1〜2日で改善していきます。一方、マダニの場合は刺し口周辺の腫れが比較的長く続くことがあり、感染症を伴う場合は時間の経過とともに皮膚症状が広がることもあります。
「刺された状況と場所」も手がかりになります。草むらや森の中など自然豊かな環境に行った後で皮膚の異変に気づいた場合、またペットが外に出る習慣がある家庭では、マダニの可能性を考慮する必要があります。刺される場所も、蚊は露出した部位(手足、首など)を選ぶことが多いのに対し、マダニは衣服の中や皮膚の折れ目に入り込んで刺すことが多いという特徴があります。
「複数箇所に刺し跡があるかどうか」という点でも違いがあります。蚊は複数箇所に刺し跡を残すことがよくありますが、マダニは一箇所に長時間留まって吸血するため、通常は刺し跡が1〜2か所に限られます。ただし、複数のマダニに同時に刺される場合もあるため、一概には言えません。
Q. マダニ除去時に絶対やってはいけない行動は?
マダニを強引に引きちぎったり、指でつぶしたりすると、口器が皮膚内に残ったりマダニの体液が押し出され感染リスクが高まります。また、火やアルコールで刺激を与えると唾液を多量に分泌させる危険があります。除去はできるだけ医療機関で行うのが最善です。
🏥 マダニに刺された後に現れる症状
マダニに刺された後の症状は、大きく「刺し跡そのものによる局所症状」と「感染症による全身症状」の二つに分けられます。
局所症状としては、刺された部位の赤み、腫れ、かゆみ、痛みが挙げられます。多くの場合、マダニが離脱した後も数日間は赤みや腫れが続きます。まれに、マダニの唾液に対するアレルギー反応が起きることがあり、その場合は強いかゆみや大きな発赤が生じることがあります。非常にまれなケースですが、マダニが長時間吸血を続けることで「マダニ麻痺」と呼ばれる神経症状(全身の脱力、歩行困難など)が起きることも報告されています。
全身症状は、マダニが媒介する病原体に感染した場合に現れます。感染症の種類によって症状の出方は異なりますが、共通して見られることが多い症状としては、発熱(38〜40度台の高熱が多い)、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、食欲不振などがあります。これらの症状はマダニに刺されてから数日〜2週間程度の潜伏期間を経て現れることが多く、この時期に「最近虫に刺されたかもしれない」という情報を医師に伝えることが診断の助けになります。
重症の場合は、意識障害、出血傾向(皮膚の点状出血など)、多臓器不全を引き起こすこともあり、適切な治療が遅れると生命に関わる危険性があります。特に高齢者や免疫力が低下している方は重症化しやすいと言われています。
マダニに刺された後、2週間以内に発熱などの全身症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診することが非常に重要です。受診の際には「いつ、どこで(草むらや山林など)、マダニに刺された可能性がある」という情報を必ず医師に伝えるようにしてください。
⚠️ マダニが媒介する主な感染症
マダニが媒介する感染症は複数あり、日本においても報告されています。それぞれの感染症の特徴を知っておくことで、症状が出た際に適切に対応できます。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、SFTSウイルスを原因とする感染症で、2013年に日本で初めて確認されました。主にフタトゲチマダニなどが媒介します。潜伏期間は6〜14日程度で、発熱、消化器症状(嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)、血小板減少、白血球減少などが特徴です。致死率が比較的高く、日本では10〜30%程度とされており、特に高齢者での重症化が問題となっています。現時点では特効薬が承認されておらず、対症療法が中心となります。西日本を中心に報告されていますが、近年は報告地域が拡大しています。
日本紅斑熱は、リケッチア・ジャポニカという細菌を原因とする感染症で、キチマダニなどが媒介します。発熱、発疹(手足の末梢から体幹に向かって広がる)、刺し口が三徴とされています。抗菌薬(テトラサイクリン系)が有効で、早期に治療を開始すれば予後は良好ですが、重症化すると死亡例もあります。関東以南、特に西日本での報告が多い感染症です。
ライム病は、ボレリアという細菌を原因とする感染症で、シュルツェマダニなどが媒介します。日本では主に北海道で報告されています。初期症状として、刺し口周辺に遊走性紅斑(ターゲットサイン)と呼ばれる特徴的な皮膚症状が現れます。治療せずに放置すると、関節炎や神経症状、心臓への影響など多彩な症状が現れることがあります。抗菌薬が有効で、早期発見・早期治療が重要です。
つつが虫病は、厳密にはマダニではなくツツガムシ(チリダニ科)が媒介する感染症ですが、マダニと混同されることがあるため触れておきます。リケッチア・ツツガムシを原因とし、発熱、発疹、刺し口が特徴です。秋から冬にかけて多く、山形・秋田・新潟などの農村地帯での発生が多く見られます。
その他にも、ダニ媒介性脳炎(TBE)がヨーロッパや北海道の一部で報告されています。高熱、頭痛、嘔吐から始まり、脳炎や髄膜炎を引き起こすことがあります。ヨーロッパに渡航する方はワクチン接種を検討するとよいでしょう。
Q. マダニが媒介する主な感染症と致死率は?
日本で報告される主なマダニ媒介感染症には、致死率10〜30%とされるSFTS(重症熱性血小板減少症候群)、発熱・発疹・刺し口が三徴の日本紅斑熱、遊走性紅斑を特徴とするライム病などがあります。いずれも早期発見・早期治療が重症化予防に重要です。
🔍 刺された跡を発見したときの正しい対処法
マダニが皮膚に咬みついているのを発見したとき、あるいは刺し跡に気づいたとき、適切な対処をすることが非常に重要です。
まず、マダニが皮膚にまだ付いている状態であれば、できる限り早く医療機関を受診することをお勧めします。医師による専用の器具を使った除去が最も安全で確実な方法です。マダニを除去する際は、マダニの体を圧迫したり、無理に引き抜いたりすることが感染リスクを高める可能性があるため、自己処置には注意が必要です。
医療機関をすぐに受診できない場合、先の細いピンセットを使って対処する方法があります。ピンセットでマダニの口器部分(皮膚に刺さっている部分のできるだけ根元)をつかみ、皮膚に対して垂直にゆっくりと引き抜きます。この際、マダニの体を捻ったり、左右に揺らしたりしないよう注意してください。口器の一部が皮膚内に残った場合は、無理に取り出そうとせず、医療機関に相談してください。
マダニを取り除いた後は、刺された部位を石けんと流水でしっかり洗い、アルコールや消毒薬で消毒します。除去後のマダニは素手で触らず、ビニール袋などに入れて密封処分するか、医療機関に持参する(感染症の診断に役立つ場合がある)とよいでしょう。
マダニをすでに取り除いてしまった後で刺し跡に気づいた場合は、刺し跡の写真を撮っておくと医療機関での診察に役立ちます。また、いつ・どこで(具体的な場所・状況)を記録しておくことも有用です。
刺し跡が判明した時点で皮膚科や内科を受診し、状況を説明することをお勧めします。症状がない場合でも、今後の経過観察の仕方や、感染症の症状が出た際の対処について医師からアドバイスをもらうことができます。マダニに刺された後は最低でも2〜3週間は体調の変化に注意し、発熱などの症状が現れた際はすぐに受診するようにしてください。
📝 絶対にやってはいけないNG行動
マダニに刺されたときに行いがちな対処法の中に、実は逆効果になるものがいくつかあります。これらのNG行動を知っておくことで、余分なリスクを避けることができます。
まず絶対にやってはいけないのが、マダニの体を無理に引きちぎることです。マダニを強引に引っ張ると、口器が皮膚内に残ってしまうことがあります。残った口器は炎症の原因となり、また除去が困難になる場合があります。さらに、強引に引っ張ることでマダニの体液が皮膚内に押し出され、感染リスクが高まる可能性があります。
マダニを指でつぶすことも避けてください。素手でマダニをつぶすと、マダニの体液が手に付着し、皮膚の小さな傷などから感染する可能性があります。SFTSウイルスは感染したマダニの体液から人に感染することが報告されています。
マダニにライターやタバコの火を近づけたり、アルコールやマニキュアのリムーバーなどを塗ったりして、マダニを無理に離させようとする方法も推奨されません。こうした刺激を与えると、マダニがストレスを感じて体液や唾液を多量に分泌し、感染リスクが高まる可能性があるとされています。
マダニを素手で触ることも避けるべきです。除去する際は必ず手袋を着用するか、ビニール袋などで手を覆ってから作業してください。除去後は必ず手を石けんと流水でしっかり洗いましょう。
また、刺し跡が気になるからといって、自己判断で市販の抗アレルギー薬やステロイド外用薬のみで対処し、医療機関への受診を先延ばしにすることも避けてください。マダニが媒介する感染症は早期治療が重要なものが多く、症状が出る前から医師に相談しておくことが大切です。
Q. マダニに刺された後の受診タイミングと診療科は?
マダニが皮膚に付着している場合は速やかに皮膚科を受診してください。刺された後2週間以内に38度以上の発熱・頭痛・全身倦怠感などが現れた場合は、内科または感染症内科を受診し「いつ・どこでマダニに刺された可能性があるか」を必ず医師に伝えることが重要です。
💡 受診すべきタイミングと診療科
マダニに刺されたことが分かった場合、あるいは可能性がある場合に、いつ・どの診療科を受診すればよいのかを理解しておくことは非常に重要です。
まずマダニがまだ皮膚に付着している状態であれば、できるだけ早く受診することをお勧めします。マダニの正確な除去と、刺された箇所の処置を医療機関で行ってもらうのが最善です。受診する診療科としては、皮膚科が適しています。皮膚科医はマダニの除去処置に慣れており、刺し跡の状態を確認した上で適切な対応を取ってくれます。
マダニがすでに離脱していて刺し跡だけが残っている場合でも、皮膚科に相談することをお勧めします。刺し跡の状態を確認してもらい、今後の経過観察の仕方や、感染症が疑われる場合の対処についてアドバイスをもらえます。
マダニに刺されてから数日〜2週間以内に、発熱(特に38度以上の高熱)、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、発疹などの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。この場合は内科または感染症内科への受診が適切です。受診の際には「○○日ごろに、△△(場所)でマダニに刺された可能性がある」という情報を必ず医師に伝えてください。この情報が感染症の診断に非常に重要になります。
遊走性紅斑(刺し口周辺が同心円状に広がる赤み)が現れた場合は、ライム病の可能性があるため、できるだけ早く受診してください。皮膚科または感染症内科が対応できます。
症状が重篤で、意識障害や激しい嘔吐、出血傾向(皮膚の点状出血など)が見られる場合は、救急外来に連絡・受診してください。SFTS(重症熱性血小板減少症候群)などの重症感染症が疑われる場合は、入院管理が必要になることがあります。
なお、マダニに刺された後、症状がないからといって安心しすぎないことが大切です。潜伏期間中は症状が全くない場合もあるため、刺された後2〜3週間は体調の変化を注意深く観察し、少しでも異変を感じたら早めに受診するようにしましょう。
✨ マダニに刺されやすい環境と予防策

マダニによる被害を防ぐためには、刺されやすい環境を把握した上で、適切な予防策を講じることが重要です。
マダニが多く生息する環境としては、山林や森林の中、草丈の高い草むら、河川敷、農地、公園の茂みなどが挙げられます。特に動物の通り道になっているような場所はマダニが集まりやすい傾向があります。また、野生動物が庭に侵入しやすい環境の住宅の庭にもマダニが生息することがあります。ペット(犬や猫)が外に出る場合、ペットがマダニを持ち帰るケースも多く、ペットが外から帰ってきた際にはダニのチェックを行う習慣が大切です。
服装による予防が最も基本的な対策です。山林や草むらに入る際は、長袖・長ズボンを着用し、靴下の上からズボンの裾を入れることでマダニが皮膚に直接触れるのを防ぎます。帽子や首に巻くスカーフなども有効です。服の色は、マダニが見つけやすい白や薄い色を選ぶと、付いたマダニを早期に発見しやすくなります。
虫よけ剤の使用も効果的です。ディート(DEET)またはイカリジン(ピカリジン)を有効成分とする虫よけ剤は、マダニに対しても忌避効果があるとされています。肌の露出部分や衣服に塗布・噴霧することで、マダニが近づくのを防ぐ効果が期待できます。使用する際は各製品の使用方法を守り、特に小児への使用は成分と年齢制限を確認してください。
アウトドア活動後は、なるべく早く体全体を確認する習慣をつけることが大切です。屋外から帰ったら、まず服をよく払い、できれば洗濯してから室内に持ち込みましょう。その後、入浴やシャワーを浴び、鏡を使って全身の皮膚をくまなくチェックします。特にマダニが好む部位(耳の後ろ、わきの下、首の後ろ、ひざの裏、足の付け根、陰部周辺)は念入りに確認してください。
ペットのマダニ対策も重要です。動物病院で処方されるマダニ予防薬(スポットオン剤や経口薬など)を定期的に使用することで、ペットへのマダニの寄生を防ぐとともに、ペットを介した人へのマダニの媒介を減らすことができます。ペットが外から帰ったら、ブラッシングをしながらマダニが付いていないか確認しましょう。
庭の草刈りや落ち葉の除去など、自宅周辺の環境整備もマダニの生息環境を減らすために有効です。草丈を低く保ち、落ち葉や枯れ草が溜まらないよう管理することで、マダニが生息しにくい環境を作ることができます。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「アウトドアやペットの散歩後に「皮膚に小さな黒い粒がくっついている」と気づきながら、マダニに刺されたことに気づかないまま数日が経過しているケースも少なくありません。マダニは麻酔作用のある唾液を分泌するため痛みを感じにくく、刺された後2週間以内に発熱や倦怠感などの症状が現れた場合はSFTSや日本紅斑熱などの感染症を念頭に置いた早急な対応が必要ですので、「たかが虫刺され」と自己判断せず、ためらわずに専門の医療機関へご相談ください。
📌 よくある質問
マダニは咬みつく際に麻酔作用のある唾液を分泌するため、刺されたときの痛みをほとんど感じません。そのため、気づかないうちに皮膚に付着していたというケースが珍しくありません。アウトドアや農作業の後は、痛みがなくても入浴時に全身をくまなくチェックする習慣が大切です。
できるだけ早く医療機関を受診して除去してもらうのが最善です。どうしても受診できない場合は、先の細いピンセットで口器の根元をつかみ、皮膚に対して垂直にゆっくり引き抜いてください。体を捻ったり、火やアルコールを使ったりする方法は感染リスクを高める可能性があるため、絶対に避けてください。
マダニに刺されてから2週間以内に、38度以上の発熱・頭痛・筋肉痛・全身倦怠感・発疹などの症状が現れた場合は、すぐに内科または感染症内科を受診してください。また、刺し口を中心に同心円状に広がる赤み(遊走性紅斑)が現れた場合もライム病の疑いがあるため、早急な受診が必要です。
最も分かりやすい違いは「皮膚に何か付いているかどうか」です。蚊は吸血後に飛び去りますが、マダニは吸血中も皮膚にくっついたままです。また、マダニは衣服の中や皮膚の折れ目など柔らかい部位を選んで刺すことが多く、かゆみがすぐに出にくいという特徴もあります。自然環境に出かけた後に気づいた場合はマダニの可能性を考慮してください。
基本的な予防策は3つです。①長袖・長ズボンを着用し、靴下の上からズボンの裾を入れて肌の露出を減らす、②ディートやイカリジンを含む虫よけ剤を肌や衣服に使用する、③帰宅後は入浴しながら耳の後ろ・わきの下・足の付け根など皮膚の柔らかい部位を念入りにチェックする。ペットを飼っている方は動物病院でマダニ予防薬を処方してもらうことも重要です。
🎯 まとめ
マダニは小さな生き物ですが、その吸血行為を通じて様々な感染症を媒介するため、決して軽視できない存在です。マダニに刺された跡の最大の特徴は、マダニが皮膚に咬みついたまま残っていることで、麻酔作用のある唾液によって刺されたことに気づかないケースが多いです。刺し跡は赤い丘疹として現れ、感染症を伴う場合には遊走性紅斑のような特徴的な皮膚症状が現れることもあります。
マダニに刺された場合は、無理に引きちぎったり、火やアルコールを使って除去しようとするのは避け、できるだけ早く医療機関を受診して適切な処置を受けることが最善です。また、刺された後2〜3週間は体調の変化に注意し、発熱などの症状が現れた場合はすぐに内科や感染症内科を受診し、マダニに刺された可能性があることを伝えてください。
予防の面では、アウトドア時の適切な服装、虫よけ剤の使用、帰宅後の全身チェックが基本的かつ重要な対策です。ペットを飼っている方は、ペットへのマダニ予防薬の使用も忘れずに行いましょう。
自然の中で過ごすことは心身にとって豊かな体験をもたらしますが、マダニについての正しい知識と予防策を持ち、万が一刺された際には適切に対処することで、感染症のリスクを大幅に減らすことができます。少しでも不安な点や気になる症状がある場合は、自己判断せずに専門の医療機関に相談することをお勧めします。
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📚 参考文献
- 厚生労働省 – マダニ対策や重症熱性血小板減少症候群(SFTS)・日本紅斑熱・ライム病などマダニ媒介感染症に関する予防策・感染症情報の公式情報
- 国立感染症研究所 – SFTS・日本紅斑熱・ライム病・ダニ媒介性脳炎などマダニが媒介する各種感染症の病原体・疫学・症状・発生動向に関する詳細な専門情報
- CDC(米国疾病予防管理センター) – マダニの種類・刺された際の正しい除去方法・NG行動・媒介感染症の国際的な予防・対処ガイドラインに関する情報
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務