はじめに
耳の周りに気がついたらしこりができていた、耳たぶを触るとコリコリした塊がある、耳の後ろに何か盛り上がりがある——このような症状でお悩みの方は少なくありません。その正体は「粉瘤(ふんりゅう)」かもしれません。
粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に古い角質や皮脂がたまることで形成される良性の皮膚腫瘍です。「アテローム」や「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」とも呼ばれ、全身のどこにでも発生する可能性がありますが、特に顔、首、背中、そして耳の周辺にできやすいことが知られています。
本記事では、耳にできる粉瘤について、その症状や原因、放置した場合のリスク、治療法、費用、術後のケアまで、池袋エリアで粉瘤治療をお考えの方に向けて詳しく解説いたします。

粉瘤とはどのような疾患か
粉瘤の基本的な仕組み
粉瘤は、皮膚の内側に袋状の構造物(嚢腫)ができ、その袋の中に本来は皮膚の表面から剥がれ落ちるはずの角質や皮脂が蓄積されることで形成される良性腫瘍です。私たちの皮膚は常にターンオーバー(新陳代謝)を繰り返しており、古くなった角質は垢として自然に剥がれ落ちていきます。しかし、何らかの原因で皮膚の一部が内側にめくれ込み、袋状の構造を作ってしまうと、本来外に出るべき老廃物がその袋の中に溜まり続けることになります。
この袋状の構造物は「嚢腫壁」または「被膜」と呼ばれ、袋の中身は外に排出されることなく少しずつ蓄積されていくため、粉瘤は時間の経過とともに徐々に大きくなっていく傾向があります。
粉瘤の特徴的な症状
粉瘤には以下のような特徴があります。
皮膚の下にコロコロとしたしこりとして触れることができます。大きさは数ミリメートルから数センチメートル程度が一般的ですが、放置すると10センチ以上になることもあります。しこりの表面は正常な皮膚と同じ色をしていることが多く、よく見ると中央部に黒い点(開口部、いわゆる「へそ」)が確認できることがあります。
この黒い点を強く押すと、独特の不快な臭いを伴うドロドロとした白〜黄色の物質が出てくることがあります。これは袋の中に溜まった角質や皮脂であり、「脂肪のかたまり」と誤解されることがありますが、実際は垢の塊です。
通常、粉瘤自体には痛みやかゆみはありません。しかし、細菌感染を起こすと炎症が生じ、赤く腫れて痛みを伴うようになります。この状態を「炎症性粉瘤」または「化膿性粉瘤」と呼びます。
粉瘤の種類
粉瘤にはいくつかの種類があり、発生する部位や原因によって分類されます。
表皮嚢腫は最も一般的なタイプで、全身のあらゆる場所にできますが、特に耳の後ろ、顔、首、背中などに発生しやすい特徴があります。多くの場合、表皮の一部が真皮層に入り込んで袋状になり、その中に皮膚の垢が溜まってしこりになります。
外毛根鞘性嚢腫は主に頭部にできる粉瘤で、毛根由来の細胞が袋状の空間を作ることで発生すると考えられています。表皮嚢腫よりもしこりが硬いのが特徴です。
多発性毛包嚢腫は背中や脇の下、胸、首などに20〜30個程度発生することがある粉瘤です。
耳に粉瘤ができやすい理由
耳周辺の皮膚構造
耳の周囲は粉瘤が発生しやすい部位の一つとして知られています。その理由として、耳周辺の皮膚は比較的薄く、皮脂腺が密集していることが挙げられます。また、マスクやメガネのツル、イヤホン、ヘッドホン、ピアスなど、外的刺激を受けやすい構造であることも関係しています。
耳の粉瘤ができやすい部位
耳たぶ(耳垂)は粉瘤が発生しやすい代表的な部位です。耳たぶは皮膚が薄く、外的刺激に弱いため、粉瘤が発生しやすいとされています。特にピアスホール周囲では、穿孔時の微細な外傷や金属アレルギー、不十分な消毒やケアによって毛包や皮脂腺が損傷され、表皮の一部が皮下に入り込むことで嚢胞形成が始まることがあります。
耳の後ろは粉瘤ができやすい代表的な部位です。マスクのゴムやメガネのツルが常に接触するため、毛穴や皮脂腺が刺激を受けやすく、その結果として粉瘤が形成されやすくなります。
耳の付け根(耳介と側頭部の境界部分)も粉瘤ができやすい部位です。この部位は皮脂腺が多く、髪の毛やマスク、メガネのツルなどが接触しやすいため、毛穴が刺激を受けやすい構造になっています。
耳の軟骨部分(耳輪や対輪、耳甲介の外縁など)にできる粉瘤は比較的まれですが、一度できると炎症を起こしやすく、治療が難航することもあるため注意が必要です。軟骨部は血流が少なく、外傷や感染からの回復が遅れやすい構造をしています。
耳の粉瘤の原因
原因は明確に解明されていない
粉瘤ができる原因は、実は明確に解明されていません。多くの場合、原因を特定することができず、なぜ粉瘤ができたのか分からないことがほとんどです。
一般的には、毛穴が狭まったり詰まったりすることが原因の一つと考えられています。また、切り傷や打撲などの外傷をきっかけに発症することもあります。ごく稀に、遺伝子の影響やヒトパピローマウイルス(HPV)への感染によって粉瘤が発生するケースも報告されています。
ピアスやイヤホンとの関係
耳に粉瘤ができた方の中には、「ピアスが原因ではないか」「イヤホンやヘッドホンを長時間使用しているからではないか」と心配される方がいらっしゃいます。
結論から申し上げると、ピアスやヘッドホン、イヤホン、インカムなど耳に直接触れるものが粉瘤発生の直接的な原因になるという根拠は確認されていません。また、インターネット上で見かけることがある「お風呂に入っていなかったり、身体を洗わなかったりすることで不衛生となり粉瘤が発生する」という情報についても、不衛生が原因で粉瘤ができるという根拠はありません。
ただし重要な点として、これらの器具や習慣が粉瘤の直接的な原因にはならないものの、すでにできている粉瘤を「悪化させる可能性」はあります。ピアスやイヤホンによる圧迫や摩擦が粉瘤を刺激し、炎症や感染を引き起こす可能性があるためです。
粉瘤ができやすい人の特徴
粉瘤ができやすい傾向がある人には、以下のような特徴が見られることがあります。
ピアスの炎症を繰り返している人、マスクやイヤホンを長時間使用する人、皮脂が多く毛穴が詰まりやすい体質の人は粉瘤ができやすい傾向にあります。また、過去にニキビができやすかった人、毛嚢炎を起こしやすい人、遺伝的に粉瘤ができやすい体質の人も同様です。
耳の粉瘤を放置するとどうなるか
自然治癒はしない
粉瘤の特徴として最も重要なのは、放置しても自然に治ることはないという点です。粉瘤は袋状の構造(嚢腫)の中に老廃物が溜まり続けるため、時間とともに少しずつ大きくなっていきます。「そのうち小さくなるだろう」「様子を見ていれば消えるかもしれない」という期待は残念ながら叶いません。
放置によるリスク
粉瘤を放置することで、以下のようなリスクが生じます。
粉瘤は時間の経過とともに徐々に大きくなります。小さいうちに治療すれば傷跡も小さく済みますが、大きくなってからでは切除後の傷跡も目立つようになり、手術後の出血や感染などの合併症リスクも大きくなります。
粉瘤の袋の中は細菌が増殖しやすい環境です。中央に開いている小さな穴(開口部)から細菌が侵入すると、感染を起こして赤く腫れ上がり、強い痛みを伴う「炎症性粉瘤」になることがあります。炎症が進行すると眠れないほどの激しい痛みが生じることもあります。
炎症が進むと粉瘤内部に溜まった膿が分解され、強い悪臭を放つことがあります。この臭いは周囲にも感じられるほど強烈な場合があります。
炎症性粉瘤が破裂して膿が皮膚表面に出てくることがあります。自壊した後の組織は色素沈着が残りやすく、瘢痕(傷跡)となってしまうこともあります。
感染を生じた場合、すぐに腫瘍を切除することは困難なことが多く、最初に切開排膿をして感染が落ち着いて傷が一旦治ってから、後日残っている腫瘍を切除する必要があります。そのため、治療が長期化してしまいます。
非常に稀なケースですが、粉瘤が悪性化する可能性も報告されています。特に中高年男性のお尻に生じた粉瘤で悪性化が多いとの報告がありますが、耳を含む他の部位でも可能性はゼロではありません。
炎症性粉瘤とは
炎症性粉瘤とは、粉瘤に炎症が起こり、急速に大きくなって腫れて痛みが現れる状態のことです。赤みや熱感を伴うことが多く、ひどい場合は発熱や倦怠感などの全身症状が出現することもあります。
炎症性粉瘤の原因は主に2つあります。1つ目は細菌感染で、粉瘤の開口部から細菌が侵入して感染を起こすものです。2つ目は異物反応で、粉瘤の袋が圧迫や摩擦などで破裂し、袋の中に溜まった角質や皮脂が皮膚内部に漏れ出すことで、体がこれを異物として認識し、免疫反応として炎症を起こすものです。現在では、細菌感染よりもこの異物反応が炎症の主な原因であることが分かっています。
耳の粉瘤と他の疾患との見分け方
粉瘤とニキビの違い
粉瘤はニキビと見た目が似ていることがあり、混同されることがあります。しかし両者には明確な違いがあります。
ニキビは毛穴に皮脂が詰まることで発生し、アクネ菌の増殖によって炎症を起こします。通常は数ミリメートル程度の大きさで、適切なケアや治療によって治癒します。一方、粉瘤は皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に老廃物が溜まり続けるため、放置すると徐々に大きくなり、自然治癒することはありません。
粉瘤の特徴として、中央部に黒い点(開口部)があることが多く、圧迫すると独特の臭いを伴うドロドロした物質が出てくることがあります。
粉瘤と脂肪腫の違い
脂肪腫は脂肪細胞から構成される良性腫瘍で、皮下組織に発生します。粉瘤と脂肪腫は以下の点で区別されます。
脂肪腫はゴムのような柔らかい感触がありますが、粉瘤は硬いしこりとして感じられます。脂肪腫はドーム状に盛り上がり、通常は痛みや炎症を伴わず、色調の変化も見られません。一方、粉瘤は中央に黒い点がある場合が多く、炎症を起こすと赤く腫れて痛みを伴います。
耳周辺の他のしこり
耳の周辺にできるしこりは粉瘤だけではありません。以下のような疾患も考えられます。
リンパ節炎は耳の下や後ろにできるしこりの原因となることがあります。扁桃炎や中耳炎、虫歯などの感染症をきっかけに耳周辺のリンパ節が腫れて起こる炎症性疾患です。押すと強い痛みを伴い、赤みや熱感、発熱などの全身症状が出ることもあります。
ケロイドはピアスの穴を開けた後などに傷跡が盛り上がり、赤く硬くなった状態です。ケロイド体質の方に起こりやすく、ピアスケロイドとして知られています。
耳瘻孔(じろうこう)は生まれつき耳の前や付け根あたりに見られる小さな穴で、先天性の皮膚形成異常の一つです。粉瘤とは構造や原因が異なりますが、感染を起こすと腫れることがあります。
これらの疾患は見た目だけでは区別が難しいことがあるため、気になるしこりを見つけた場合は医療機関を受診し、正確な診断を受けることが重要です。
耳の粉瘤の治療法
治療の基本は外科的摘出
粉瘤の根本的な治療は、外科手術によって袋状の構造物(嚢腫)を完全に取り除くことです。粉瘤は袋の中に溜まった内容物を押し出しても、袋自体が残っている限り再び老廃物が溜まり、再発してしまいます。そのため、袋(被膜)ごと完全に摘出することが根治のための唯一の方法となります。
日本皮膚科学会でも、粉瘤の治療について「外科的に切除する」ことが基本であると示されています。
手術方法の種類
粉瘤の手術方法には主に2種類あります。
くり抜き法(へそ抜き法)は、現在では粉瘤治療の一般的な手術方法として広く行われています。粉瘤の中央にある開口部(へそ)を中心に、トレパン(円筒状のメス)やパンチを使って4〜6ミリメートル程度の小さな穴を開け、その穴から粉瘤の内容物を押し出した後、しぼんだ袋を丁寧に取り除く方法です。
くり抜き法の利点は、切開範囲が小さいため傷跡が目立ちにくいこと、手術時間が短いこと、基本的に縫合が不要なため抜糸の必要がないこと、炎症を起こしている粉瘤にも対応できる場合があることです。一方、袋を完全に取り切れていない場合は再発するリスクがあること、皮膚が分厚い部分や大きな粉瘤、何度も炎症を繰り返して癒着が強い粉瘤には適用できないことが注意点として挙げられます。
切開法(紡錘形切除)は、粉瘤の真上の皮膚を紡錘形(葉っぱの形)に切開し、粉瘤を袋ごと一塊として摘出する方法です。最も一般的で確実な術式とされています。
切開法の利点は、粉瘤を確実に除去できるため再発リスクが低いこと、大きな粉瘤や炎症を繰り返している粉瘤、皮膚との癒着が強い粉瘤にも対応できることです。注意点としては、くり抜き法に比べて切開範囲が広くなるため傷跡が残りやすいこと、縫合と抜糸が必要になることが挙げられます。
耳たぶにできた粉瘤の場合、くり抜き法を行うと皮膚がたるむ可能性があるため、単純切除して縫合する切開法が選択されることもあります。手術方法の選択は、粉瘤の大きさ、できた場所、炎症の有無、過去の既往歴などを総合的に判断して決定されます。
炎症性粉瘤の治療
炎症を起こしている粉瘤(炎症性粉瘤)の治療は、炎症を起こしていない粉瘤とは対応が異なります。
抗生物質の内服については、炎症性粉瘤に対して処方されることがありますが、その効果は限定的であることが知られています。粉瘤の炎症は細菌感染が原因である可能性はそれほど高くなく、異物反応が主な原因であることが多いためです。また、たとえ細菌感染が原因であっても、粉瘤内には血管が通っていないため、抗生物質の有効成分が炎症を起こしている部位まで十分に届きません。抗生物質はあくまで感染の予防や感染拡大の予防という位置づけであり、根治的な治療ではないことを理解しておく必要があります。
切開排膿は、炎症が強く膿が溜まっている場合に行われる応急処置です。患部を切開して内部の膿や老廃物を排出することで、腫れや痛みを一時的に緩和することができます。しかし、これはあくまで応急処置であり、袋状の構造が残っている限り再発のリスクがあります。
炎症性粉瘤を根本的に治療するためには、炎症が落ち着いてから袋ごと摘出する手術が必要です。ただし、医療機関によっては炎症がある状態でも日帰り手術で袋を取り除くことができる場合もあります。
耳の粉瘤手術の流れ
手術前の流れ
粉瘤手術を受ける際の一般的な流れをご説明します。
まず診察において、医師が視診・触診を行い、粉瘤であるかどうかを確認します。必要に応じて超音波検査(エコー検査)を行うこともあります。腫瘍の大きさ、部位、炎症の有無、エコーでの所見などを総合的に判断し、治療方針を決定します。
手術方法の決定では、粉瘤の状態や患者さんのご希望を伺いながら、くり抜き法か切開法かを選択します。耳という目立つ部位であることを考慮し、傷跡が最小限になるような方法が検討されます。
手術当日の流れ
手術当日は、まず手術を行う部位の周囲にマーキングを行い、消毒を行います。次に局所麻酔を注射します。麻酔の注射時には痛みを感じますが、麻酔が効いた後は手術中の痛みはありません。
麻酔が十分に効いたことを確認してから手術を開始します。くり抜き法の場合は粉瘤の中央に小さな穴を開け、内容物を押し出してから袋を摘出します。切開法の場合は皮膚を紡錘形に切開し、粉瘤を袋ごと摘出した後、丁寧に縫合します。
手術時間は粉瘤の大きさや状態によって異なりますが、一般的に10〜30分程度で終了します。ほとんどの場合、日帰り手術が可能です。
摘出した組織は、確定診断をつけるために病理検査に提出されることがあります。
手術後の注意点
手術後の生活では、以下の点に注意が必要です。
手術当日は、出血のリスクを考慮して入浴は避けてください。シャワーについては、患部を濡らさなければ可能な場合もありますが、医師の指示に従ってください。飲酒や運動は血行を促進し出血のリスクを高めるため、手術当日と翌日は控えるようにしましょう。
翌日以降は、傷口を清潔に保つことが重要です。石鹸をよく泡立ててから傷口をシャワーで優しく流し、その後軟膏の塗布とガーゼ保護を行います。入浴や温泉、プールは傷が上皮化するまで(汁が出なくなるまで)控えましょう。
縫合を行った場合は、約1週間後に抜糸のために来院します。術後約1ヶ月後には傷の状態確認と病理検査の結果説明のために再度受診していただきます。
手術後のわずかな出血は通常の反応ですが、出血が続いたり量が多かったりする場合は、すぐに医療機関に連絡してください。
耳の粉瘤手術の費用
健康保険が適用される
粉瘤の手術は健康保険が適用されます。診察、検査、手術、病理検査といった一連の治療すべてが保険適用の対象となるため、経済的な負担を抑えて治療を受けることができます。
費用の目安
粉瘤手術の費用は、粉瘤の大きさと発生した部位によって異なります。保険診療では、粉瘤ができた場所が「露出部」か「非露出部」かによって保険点数(医療費)が変わります。
露出部とは、半袖・半ズボンを着た状態でも外から見える部位のことで、頭、首、顔、肘から指先まで、膝から足先までを指します。耳は露出部に該当します。非露出部は露出部以外の部位で、胸部、腹部、腰部、上腕部、大腿部などです。一般的に、露出部にある粉瘤の方が非露出部にあるものより手術費用が高くなります。
3割負担の場合の手術費用の目安として、露出部(耳を含む)で直径2センチメートル未満の場合は約5,000〜6,000円程度、2〜4センチメートル未満では約11,000〜12,000円程度、4センチメートル以上では約13,000〜14,000円程度となります。これに加えて、診察料、処方料、血液検査、病理検査などの費用がかかります。
耳にできる粉瘤は比較的小さい(4センチメートル未満)ことが多いため、3割負担の方であれば手術費・診察料・検査費・病理検査費を合わせて10,000〜15,000円程度で治療が受けられることが一般的です。
民間の医療保険について
民間の生命保険会社や共済組合の医療保険に加入されている場合、契約内容によっては手術給付金を受けられる可能性があります。粉瘤の手術は「皮膚・皮下腫瘍摘出術」という術式名で行われます。
ただし、保険商品によっては「皮膚切開術」を支払対象外としているケースもあるため、事前に加入している保険会社に確認することをお勧めします。給付金の申請には診断書などの書類が必要になることがあるため、早めに確認しておくと良いでしょう。
粉瘤の再発防止と術後ケア
再発の原因
粉瘤が手術後に再発する主な原因は、袋状の構造物(被膜)が手術時に取り残されることです。袋が皮膚内に残っていると、再び老廃物が溜まり始め、粉瘤が再発してしまいます。
袋の取り残しが起こる理由としては、炎症が非常に強くて応急処置(切開排膿のみ)を行った場合、粉瘤が大きすぎる場合、皮膚の深い場所にあって袋を完全に取り除けなかった場合などがあります。
再発を防ぐためのポイント
再発を防ぐためには、まず治療経験が豊富な医師や医療機関を選ぶことが大切です。袋を完全に取り除くためには、丁寧な手術が必要だからです。
また、炎症を起こす前に治療することも重要です。炎症がない状態の方が袋をきれいに取り除きやすく、傷跡も目立ちにくく、結果的に再発リスクを低く抑えられます。
術後の消毒やガーゼ交換などは、必ず医師の指示に従って行ってください。
日常生活でのセルフケア
粉瘤の発生や再発を完全に予防する方法は確立されていませんが、以下の点に気をつけることで悪化を防ぐことができます。
気になっても粉瘤を潰そうとしたり、むやみに触ったりするのは避けましょう。炎症を悪化させたり、細菌が入り込んで感染したりする原因となります。
耳に粉瘤ができた場合、その周辺に新しくピアス穴を開けたり、イヤホンやヘッドホンを長時間使用したりすることは控えましょう。粉瘤への刺激が炎症を引き起こす可能性があります。
皮膚を常に清潔に保つことは、毛穴の詰まりや細菌感染を予防する上で基本です。粉瘤の直接的な予防にはなりませんが、発生・悪化するリスクを間接的に低減させる効果が期待できます。
バランスの取れた食生活や適度な保湿、皮脂のコントロールなども、肌の健康を保つ上で重要です。
何より大切なのは、粉瘤かなと思ったら放置せず、できるだけ早く医療機関を受診することです。早期受診が、結果的に再発リスクの低い適切な治療につながります。
粉瘤治療は皮膚科と形成外科どちらを受診すべきか
皮膚科と形成外科の違い
粉瘤の治療を受ける際、皮膚科と形成外科のどちらを受診すべきか迷われる方も多いでしょう。両者にはそれぞれ特徴があります。
皮膚科は全身の皮膚全般の疾患を内科的・外科的に幅広く診療する診療科です。皮膚の病気を内服薬や塗り薬を用いて治療することを得意としています。粉瘤の初期対応や投薬が中心となることが多いですが、医療機関によっては手術も行っています。
形成外科は皮膚や皮下組織など体の表面に生じた病変を、整容面にも配慮しながら外科的に治療する診療科です。粉瘤や脂肪腫などの切除を日常的に行っており、「袋ごときれいに取り除く」ことを前提とした手術を行います。手術後の傷跡の仕上がりにもこだわっており、目立ちにくく治すための縫合技術やデザイン力に優れているのが特徴です。
受診先の選び方
粉瘤の根本的な治療には外科的な摘出手術が必要です。そのため、特に以下のような場合は形成外科での治療が推奨されます。
耳という目立つ部位に粉瘤ができた場合、傷跡をできるだけ目立たないようにしたい場合、日帰り手術を希望する場合などは、形成外科の受診を検討すると良いでしょう。
一方、粉瘤かニキビか分からない場合や、まず診断を受けたい場合、炎症が強く緊急の対応が必要な場合は、皮膚科を受診するのも一つの選択肢です。皮膚科で診察を受け、手術が必要と判断された場合に形成外科を紹介されることもあります。
いずれの診療科を選ぶにしても、粉瘤手術の症例経験が豊富な医師が担当してくれる医療機関を選ぶことが重要です。

よくある質問
絶対に自分で潰さないでください。粉瘤を自分で潰すと、細菌感染を引き起こして炎症を悪化させる恐れがあります。また、中身を押し出しても袋が残っている限り再発してしまいます。さらに、不適切な処置によって傷跡が残ったり、周囲の組織にダメージを与えたりする可能性もあります。
粉瘤がある状態でピアスやイヤホンを使用することは避けた方が良いでしょう。ピアスやイヤホンによる圧迫や摩擦が粉瘤を刺激し、炎症や感染を引き起こす可能性があります。痛みや炎症がなかったとしても、症状悪化のリスクを避けるために使用を控え、医療機関を受診することをお勧めします。
粉瘤があるところにピアスを開けられますか?
粉瘤の位置にピアスを開けたい場合は、まず粉瘤を摘出してから、傷が治った後にピアス穴を開けることをお勧めします。粉瘤が直下にない場所であればピアスを開けることは可能ですが、感染の危険性があるため、医師に相談してから判断することが大切です。
手術の傷跡は目立ちますか?
個人差はありますが、耳たぶは比較的きれいに治りやすい部位とされています。くり抜き法であれば傷跡は小さく、最終的にはニキビ跡程度のへこみが残る程度です。切開法の場合は線状の傷跡が残りますが、通常1年程度で目立たなくなります。ケロイド体質の方は術後管理(テーピング、シリコン、ステロイドなど)を強化して目立ちにくい瘢痕を目指します。
手術は痛いですか?
手術は局所麻酔で行います。麻酔の注射時には痛みを感じますが、麻酔が効いた後は手術中の痛みはありません。手術後は痛み止めが処方されますが、小さな傷であればほとんど痛みを感じないことが多いです。手術当日から翌日にかけて軽い痛みがあることが一般的ですが、時間とともに徐々に軽減します。
粉瘤は悪性(がん)になることはありますか?
粉瘤は良性の腫瘍であり、通常は悪性化することはほとんどありません。ただし、ごく稀に悪性化したという報告もあります。急速に大きくなる、出血を伴う潰瘍ができる、硬く皮膚に固定されるなどの所見があれば別疾患の可能性もあるため、早めに医療機関を受診してください。
まとめ
耳の粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に角質や皮脂が溜まることで形成される良性の腫瘍です。耳たぶ、耳の後ろ、耳の付け根など、耳周辺は粉瘤ができやすい部位の一つです。
粉瘤は放置しても自然に治ることはなく、時間とともに徐々に大きくなります。また、細菌感染や異物反応によって炎症を起こすと、強い痛みや腫れ、悪臭を伴う「炎症性粉瘤」になることがあります。炎症を起こしてから治療すると、治療期間が長引いたり、傷跡が残りやすくなったりするため、できるだけ小さいうちに、炎症を起こす前に治療することが望ましいです。
粉瘤の根本的な治療は、外科手術によって袋ごと完全に取り除くことです。手術方法にはくり抜き法と切開法があり、粉瘤の状態に応じて適切な方法が選択されます。手術は局所麻酔で行われ、ほとんどの場合日帰りで行うことができます。健康保険が適用されるため、経済的な負担も抑えられます。
耳にしこりやできものを見つけた場合は、自己判断せずに早めに医療機関を受診することをお勧めします。小さいうちに治療すれば、傷跡も最小限に抑えることができます。
参考文献
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A アテローム(粉瘤)」 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa17/q09.html
- 田辺三菱製薬「ヒフノコトサイト 粉瘤(アテローム)の原因・症状・治療法」 https://hc.mt-pharma.co.jp/hifunokoto/solution/778
- 兵庫医科大学病院「みんなの医療ガイド 粉瘤(ふんりゅう)」 https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/195
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務