インフルエンザの熱のピークはいつ?症状の経過と適切な対処法を医師が解説

はじめに

毎年冬になると流行するインフルエンザ。突然の高熱に襲われ、「この熱はいつまで続くのだろう」「熱のピークはいつ頃なのだろう」と不安になった経験がある方も多いのではないでしょうか。

インフルエンザの熱の経過を理解しておくことは、適切な対処や受診のタイミングを判断する上で非常に重要です。本記事では、インフルエンザにおける熱のピークのタイミング、症状の経過、そして適切な対処法について、医学的な根拠に基づいて詳しく解説していきます。

インフルエンザとは

インフルエンザの基礎知識

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性呼吸器感染症です。一般的な風邪とは異なり、全身症状が強く現れるのが特徴で、特に高齢者や基礎疾患のある方、小児では重症化するリスクがあります。

インフルエンザウイルスには主にA型、B型、C型の3種類があり、季節性インフルエンザの流行の原因となるのは主にA型とB型です。A型インフルエンザは症状が重く、世界的な大流行(パンデミック)を引き起こすこともあります。B型はA型よりも症状が軽度な傾向がありますが、近年では症状の違いが明確でないケースも増えています。

インフルエンザと風邪の違い

インフルエンザと一般的な風邪は、どちらも呼吸器系の感染症ですが、その症状の現れ方や重症度には大きな違いがあります。

風邪の場合、症状は徐々に現れ、主に鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳などの局所症状が中心です。発熱があっても比較的軽度で、37度から38度程度のことが多く、全身のだるさも軽度です。

一方、インフルエンザは突然の発症が特徴的です。数時間から1日程度の短期間で急激に症状が悪化し、38度以上、多くの場合39度から40度の高熱が出現します。発熱と同時に、全身倦怠感、関節痛、筋肉痛、頭痛などの全身症状が強く現れます。

インフルエンザの感染経路

インフルエンザウイルスの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。

飛沫感染は、感染者の咳やくしゃみによって放出されたウイルスを含む飛沫を、近くにいる人が吸い込むことで感染します。飛沫は1メートルから2メートル程度飛散するため、感染者との近距離での接触が感染リスクを高めます。

接触感染は、ウイルスが付着した手で目、鼻、口などの粘膜に触れることで感染します。ドアノブ、手すり、スイッチなど、多くの人が触れる場所にウイルスが付着している可能性があり、これらに触れた手で顔を触ることで感染が成立します。

潜伏期間

インフルエンザウイルスに感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は、通常1日から3日程度です。平均すると2日程度とされています。この潜伏期間中にもウイルスは体内で増殖しており、症状が出る前日頃から他の人への感染力を持つようになります。

インフルエンザの熱のピークについて

熱のピークは発症後いつ頃か

インフルエンザの熱のピークは、多くの場合、発症後24時間から48時間以内に訪れます。つまり、症状が出始めてから1日目から2日目にかけて、最も高い体温を記録することが一般的です。

具体的な経過としては、以下のようなパターンが典型的です。

発症当日(0日目)は、朝方は平熱または微熱程度でも、日中から夕方にかけて急激に体温が上昇します。夕方から夜にかけて38度から39度台の高熱となり、悪寒や震えを伴うことも珍しくありません。

発症1日目から2日目にかけて、体温は39度から40度に達することが多く、この時期が熱のピークとなります。解熱剤を使用しても、薬の効果が切れると再び高熱となることが繰り返されます。

発症3日目以降は、徐々に熱が下がり始めますが、37度台から38度台の発熱が数日間続くこともあります。

熱のピーク時の体温

インフルエンザの熱のピーク時には、多くの患者さんで39度から40度の高熱が観察されます。特にA型インフルエンザの場合、40度以上の発熱も珍しくありません。小児では大人よりも高い熱が出やすい傾向があり、40度を超える発熱も頻繁に見られます。

ただし、高齢者や免疫力が低下している方の場合、インフルエンザに感染していても、それほど高い熱が出ないこともあります。このような場合でも、全身倦怠感や食欲不振などの症状が強く現れることがあるため、注意が必要です。

また、解熱剤を使用している場合、一時的に熱が下がりますが、薬の効果が切れると再び高熱となります。解熱剤使用中の体温だけでは、病気の経過を正確に判断できないため、薬を使用していない時の体温も把握しておくことが重要です。

熱の持続期間

抗インフルエンザ薬を使用しない場合、インフルエンザの発熱は通常3日から7日程度続きます。多くのケースでは、発症から3日目頃に解熱傾向が見られ始め、5日目頃までには平熱に戻ります。

しかし、抗インフルエンザ薬を早期に使用した場合、発熱期間は短縮されることが期待できます。一般的に、発症後48時間以内に抗インフルエンザ薬を開始すると、発熱期間が1日から2日程度短縮されるとされています。

ただし、解熱したからといってウイルスが完全に体内から排除されたわけではありません。解熱後も2日程度はウイルスの排出が続くため、他の人への感染のリスクがあります。厚生労働省では、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」を出席停止期間の基準としています。

二峰性発熱について

インフルエンザの経過中に注意すべき現象として、二峰性発熱があります。これは、一度解熱した後、再び発熱が見られる現象です。

典型的なパターンとしては、発症後3日目頃に一度熱が下がり、患者さん本人も家族も「治ってきた」と安心するのですが、その後再び38度以上の発熱が見られるというものです。

二峰性発熱が見られる場合、以下のような原因が考えられます。

まず、インフルエンザウイルス自体の活動が再燃している可能性があります。免疫反応が一時的にウイルスの増殖を抑えたものの、完全には排除できずに再び活動を始めたケースです。

次に、細菌の二次感染の可能性があります。インフルエンザウイルスによって気道の粘膜が傷つき、そこに細菌が感染することで、肺炎や副鼻腔炎、中耳炎などの合併症を起こすことがあります。

また、ごく稀ですが、インフルエンザ脳症などの重篤な合併症の初期症状として発熱が再燃することもあります。

二峰性発熱が見られた場合は、合併症の可能性を考慮して、必ず医療機関を再受診することが重要です。

熱のピーク時に現れる症状

全身症状

インフルエンザの熱のピーク時には、発熱以外にも様々な全身症状が強く現れます。

全身倦怠感は、インフルエンザの代表的な症状の一つです。「体が鉛のように重い」「起き上がることもつらい」と表現されるような強い倦怠感が特徴的です。日常生活の動作も困難になり、食事をとることや歩くことすら辛く感じることがあります。

関節痛や筋肉痛も、インフルエンザに特徴的な症状です。特に太ももや腰、背中などの大きな筋肉に痛みを感じることが多く、「体中が痛い」と訴える患者さんも少なくありません。この痛みは、ウイルスに対する免疫反応の一環として、サイトカインという物質が分泌されることによって引き起こされます。

頭痛も頻繁に見られる症状で、特に額や目の奥、こめかみ付近に強い痛みを感じることが多いです。ズキズキとした拍動性の頭痛や、締め付けられるような頭痛など、痛みの性質は人によって異なります。

悪寒と発汗

熱のピーク時、特に体温が急上昇する時期には、強い悪寒を感じることがあります。実際には高熱があるにもかかわらず、寒気を感じて震えが止まらなくなることもあります。これは、体が体温をさらに上げようとしている反応です。

一方、ピークを過ぎて解熱傾向に向かう際には、大量の発汗が見られます。これは体温を下げるための生理的な反応です。寝汗で寝具や衣類がびっしょりと濡れることもあり、こまめな着替えと水分補給が必要になります。

呼吸器症状

発熱のピーク時には、呼吸器症状も徐々に現れてきます。

咳は、インフルエンザの初期にはそれほど目立たないこともありますが、経過とともに徐々に強くなる傾向があります。乾いた咳が続き、咳き込むことで胸や腹部の筋肉が痛くなることもあります。

のどの痛みや鼻水、鼻づまりなども見られますが、一般的な風邪ほど強くないことが多いです。ただし、個人差があり、これらの症状が強く現れる方もいます。

呼吸困難感を伴う場合は、肺炎などの合併症を起こしている可能性があるため、速やかに医療機関を受診する必要があります。

消化器症状

特に小児や高齢者では、インフルエンザの経過中に消化器症状が現れることがあります。

吐き気や嘔吐は、高熱に伴って出現することがあります。食欲不振も一般的で、熱のピーク時には食事がほとんど摂れないこともあります。

下痢や腹痛も見られることがあり、特にB型インフルエンザでは消化器症状が比較的多い傾向があります。

消化器症状が強い場合、脱水のリスクが高まるため、水分補給に特に注意が必要です。

熱のピーク時の対処法

安静と休養

インフルエンザの熱のピーク時には、何よりも十分な安静と休養が重要です。高熱と全身症状によって体力が大きく消耗するため、無理をせずゆっくりと休むことが回復への近道です。

仕事や学校は必ず休み、自宅でしっかりと療養しましょう。他の人への感染を防ぐという意味でも、外出は控える必要があります。

睡眠は免疫力を高める上で非常に重要です。熱のために寝苦しいこともありますが、できるだけ安静にして体を休めるよう心がけてください。部屋を適度に暗くし、静かな環境を整えることで、休息しやすくなります。

水分補給

高熱時には、発汗によって体内の水分が多量に失われます。また、呼吸が速くなることでも水分が失われやすくなります。脱水を防ぐために、こまめな水分補給が非常に重要です。

飲む量の目安としては、成人で1日2リットル以上が推奨されます。一度に大量に飲むのではなく、少量ずつ頻繁に飲むことが効果的です。

飲み物としては、水やお茶、スポーツドリンク、経口補水液などが適しています。スポーツドリンクや経口補水液には電解質が含まれているため、発汗で失われたミネラルを補給するのに適しています。ただし、スポーツドリンクには糖分が多く含まれているため、経口補水液の方が望ましいとされています。

温かい飲み物は、のどの痛みを和らげる効果もあります。無理のない範囲で、温かいお茶やスープなどを摂取するとよいでしょう。

食欲がなく食事が摂れない場合でも、水分補給だけは必ず行うようにしてください。

解熱剤の使用

高熱による不快感や苦痛が強い場合、解熱剤を使用することも選択肢の一つです。ただし、解熱剤はウイルスを退治する薬ではなく、あくまで症状を和らげるための対症療法であることを理解しておく必要があります。

成人に使用できる解熱剤としては、アセトアミノフェン(カロナールなど)やイブプロフェン(ブルフェンなど)などがあります。

小児に対しては、アセトアミノフェンが第一選択となります。アスピリン(アセチルサリチル酸)は、インフルエンザの小児に使用するとライ症候群という重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、15歳未満の小児には使用してはいけません。

解熱剤を使用する際の注意点として、以下のことを守りましょう。

用法・用量を必ず守り、過剰に服用しないようにしてください。高熱だからといって、指定された量以上に服用しても効果は高まらず、副作用のリスクが増すだけです。

解熱剤を使用すると一時的に熱が下がりますが、薬の効果が切れると再び熱が上がることがあります。これは正常な反応であり、病気が悪化しているわけではありません。

解熱剤の使用頻度は、製品によって異なりますが、一般的には4時間から6時間以上の間隔を空ける必要があります。

発熱は、体がウイルスと戦っている証拠でもあります。38度程度の発熱であれば、無理に解熱剤で熱を下げる必要はありません。睡眠が妨げられる、食事や水分が摂れないなど、日常生活に支障が出る場合に使用を検討するとよいでしょう。

抗インフルエンザ薬

抗インフルエンザ薬は、インフルエンザウイルスの増殖を抑える効果があります。現在、日本で使用可能な抗インフルエンザ薬には、以下のようなものがあります。

オセルタミビル(タミフル)は、内服薬として広く使用されています。1日2回、5日間服用します。

ザナミビル(リレンザ)は、吸入薬で、1日2回、5日間使用します。

ラニナミビル(イナビル)は、吸入薬で、通常は1回の吸入で治療が完了します。

バロキサビル(ゾフルーザ)は、比較的新しい内服薬で、通常は1回の服用で治療が完了します。

これらの抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内に使用を開始することで、最も効果を発揮します。早期に使用することで、発熱期間が約1日短縮され、ウイルスの排出期間も短くなるとされています。

ただし、抗インフルエンザ薬を使用しても、すぐに症状が改善するわけではありません。薬を飲んでから効果が現れるまでには、通常1日から2日程度かかります。

また、抗インフルエンザ薬にも副作用があります。オセルタミビルでは吐き気や嘔吐、腹痛などの消化器症状が見られることがあります。吸入薬では、気管支攣縮を起こすリスクがあるため、喘息などの呼吸器疾患がある方は注意が必要です。

近年、抗インフルエンザ薬の使用後に異常行動が報告されており、特に10代の患者さんでは注意が必要とされています。厚生労働省では、薬の種類にかかわらず、インフルエンザと診断された後2日間は、未成年者を一人にしないよう注意喚起しています。

環境の調整

熱のピーク時には、療養する環境を整えることも重要です。

室温は、20度から22度程度が適切です。暑すぎると発汗が増えて体力を消耗しますし、寒すぎると体が震えてしまいます。エアコンや暖房を適切に使用して、快適な温度を保ちましょう。

湿度は、50%から60%程度が理想的です。空気が乾燥すると、のどや鼻の粘膜が乾燥してウイルスが侵入しやすくなったり、咳が出やすくなったりします。加湿器を使用する、濡れたタオルを干すなどして、適度な湿度を保つようにしましょう。

定期的な換気も重要です。1時間に1回程度、窓を開けて新鮮な空気を取り入れることで、室内のウイルス濃度を下げることができます。ただし、寒い時期の換気は体を冷やさないよう注意が必要です。

衣類や寝具は、吸湿性の良いものを選びましょう。発汗で濡れたものは、こまめに着替えることが大切です。布団も、汗で湿った場合は干すなどして乾燥させましょう。

家族への感染予防

インフルエンザは感染力が非常に強いため、家族内での感染拡大を防ぐ対策も重要です。

可能であれば、患者さんは個室で療養するのが理想的です。同じ部屋で過ごす必要がある場合は、少なくとも1メートル以上の距離を保つようにしましょう。

看病をする人は、マスクを着用し、患者さんと接触した後は必ず手洗いを行います。患者さん本人も、咳やくしゃみが出る場合はマスクを着用することが望ましいです。

タオルやコップ、食器などは、できるだけ患者さん専用のものを用意し、共用を避けましょう。

使用済みのティッシュは、ビニール袋に入れて密閉してから捨てるようにします。

看病をする人は、十分な睡眠と栄養をとり、自身の免疫力を保つことも大切です。

注意すべき症状と受診のタイミング

すぐに受診すべき症状

インフルエンザの多くは、自宅での療養で回復しますが、以下のような症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。

呼吸困難や息苦しさを感じる場合は、肺炎などの重篤な合併症を起こしている可能性があります。特に、安静にしていても呼吸が速い、呼吸をする時に胸が大きく凹む、顔色が悪いなどの症状がある場合は、緊急性が高いです。

意識障害が見られる場合も危険です。呼びかけに反応しない、意味不明なことを言う、けいれんを起こすなどの症状は、インフルエンザ脳症などの重篤な合併症を疑う必要があります。特に小児では注意が必要です。

水分が全く摂れない、尿が半日以上出ないなどの脱水の兆候が見られる場合も、早急な医療対応が必要です。特に小児や高齢者では、脱水が急速に進行することがあります。

持続する嘔吐や激しい腹痛がある場合も、受診を検討してください。

胸痛がある場合、心筋炎などの合併症の可能性があります。

再受診が必要なケース

一度医療機関を受診し、インフルエンザと診断されて治療を開始した後でも、以下のような場合には再受診が必要です。

抗インフルエンザ薬を服用しているにもかかわらず、2日から3日経っても症状が改善しない場合は、薬が効いていない可能性や、他の疾患を合併している可能性があります。

一度解熱した後、再び38度以上の高熱が出た場合は、前述の二峰性発熱の可能性があります。細菌の二次感染などが起きている可能性があるため、必ず再受診してください。

咳が悪化して息苦しさを伴う場合、痰に血が混じる場合も、肺炎などの合併症を疑う必要があります。

耳の痛みが強い場合は、中耳炎を合併している可能性があります。特に小児では注意が必要です。

激しい頭痛が続く、首が硬くなって前に曲げにくいなどの症状がある場合は、髄膜炎などの可能性も考慮する必要があります。

小児で特に注意すべき症状

小児は、インフルエンザの合併症を起こしやすく、また症状の訴えが不明確なこともあるため、特に注意深い観察が必要です。

インフルエンザ脳症は、インフルエンザの重篤な合併症の一つで、主に5歳以下の小児に発症します。けいれん、意識障害、異常行動などが主な症状です。「目が合わない」「呼びかけに反応しない」「泣き止まない」「意味不明なことを言う」などの様子が見られたら、すぐに医療機関を受診してください。

異常行動も注意が必要です。具体的には、「突然走り出す」「部屋から飛び出そうとする」「ウロウロと歩き回る」「人に襲いかかる」などの行動が見られることがあります。これらは、インフルエンザ脳症の初期症状である場合もありますし、高熱に伴う一時的な症状である場合もありますが、いずれにしても注意深く見守る必要があります。

乳幼児の場合、症状を言葉で伝えることができないため、普段と様子が違うかどうかを注意深く観察することが重要です。「いつもより元気がない」「ぐったりしている」「機嫌が悪い」「泣き方がいつもと違う」などの変化に気づいたら、早めに医療機関を受診しましょう。

高齢者で特に注意すべき症状

高齢者は、インフルエンザの症状が典型的でないことがあり、また重症化しやすいため、注意が必要です。

高齢者では、若年者ほど高い熱が出ないこともあります。38度程度の発熱でも、実際にはインフルエンザに感染していることがあります。発熱の程度だけでなく、全身状態の変化に注意を払う必要があります。

「いつもより元気がない」「食欲がない」「ぼーっとしている」など、普段と様子が違う場合は、インフルエンザを含めた感染症を疑う必要があります。

高齢者では、肺炎を合併しやすいため、呼吸の状態に特に注意が必要です。呼吸が速い、息苦しそう、咳が続くなどの症状が見られたら、早めに受診してください。

また、持病がある高齢者では、インフルエンザをきっかけに持病が悪化することがあります。心不全、腎不全、糖尿病などの持病がある方は、特に注意が必要です。

インフルエンザの予防

ワクチン接種

インフルエンザの予防において、最も効果的な方法はワクチン接種です。インフルエンザワクチンは、その年に流行すると予測されるウイルス株を用いて製造されており、毎年接種することが推奨されています。

ワクチンの効果は、接種後約2週間から5ヶ月程度持続します。そのため、流行期である12月から3月に効果を持続させるためには、10月から11月頃に接種するのが理想的です。

インフルエンザワクチンの有効率は、一般的に60%から70%程度とされています。ワクチンを接種したからといって100%感染を防げるわけではありませんが、感染した場合でも重症化を防ぐ効果が期待できます。特に、高齢者や基礎疾患のある方、小児では、ワクチン接種により入院や死亡のリスクを大幅に減らすことができます。

13歳未満の小児では、通常2回接種が推奨されています。1回目と2回目の接種間隔は、2週間から4週間程度が適切とされています。

妊婦さんもワクチン接種が推奨されています。妊娠中のインフルエンザ感染は、母体と胎児の両方にリスクがあるため、妊娠中の時期にかかわらず接種が推奨されています。

手洗いとマスク

基本的な感染予防対策として、手洗いとマスクの着用が重要です。

手洗いは、流水と石鹸を使って15秒以上かけて丁寧に洗うことが推奨されています。特に、外出から帰った後、食事の前、トイレの後などには必ず手洗いを行いましょう。指の間、爪の周り、手首なども忘れずに洗ってください。

アルコール消毒液も効果的です。手洗いができない場合は、アルコール消毒液を使用するとよいでしょう。

マスクは、感染者が周囲にウイルスを拡散するのを防ぐ効果があります。インフルエンザの症状がある場合は、必ずマスクを着用し、咳エチケットを守りましょう。

予防としてのマスクの効果については議論がありますが、人混みや公共交通機関など、感染リスクが高い場所ではマスクを着用することが推奨されます。

免疫力を高める生活習慣

日常生活の中で免疫力を高めることも、インフルエンザの予防に役立ちます。

十分な睡眠をとることは、免疫機能を正常に保つために非常に重要です。成人では7時間から8時間、小児ではさらに長い睡眠時間が推奨されています。

バランスの取れた食事も大切です。特に、ビタミンCやビタミンD、亜鉛などの栄養素は免疫機能に関与しているため、これらを含む食品を積極的に摂取しましょう。

適度な運動も免疫力を高めます。ただし、過度な運動は逆に免疫力を低下させることがあるため、無理のない範囲で継続的に行うことが重要です。

ストレスは免疫力を低下させる要因の一つです。趣味を楽しむ、十分な休息をとるなど、ストレスを上手に管理することも大切です。

適度な湿度を保つことも予防に役立ちます。乾燥した環境では、のどや鼻の粘膜のバリア機能が低下し、ウイルスが侵入しやすくなります。室内の湿度を50%から60%程度に保つよう心がけましょう。

流行期の行動

インフルエンザの流行期には、感染リスクを減らすための行動を心がけましょう。

人混みを避けることは、感染リスクを下げる有効な方法です。特に、密閉された空間で多くの人が集まる場所は、感染リスクが高くなります。

必要のない外出は控えめにし、やむを得ず人混みに行く場合は、マスクを着用し、帰宅後はすぐに手洗いとうがいを行いましょう。

体調が悪い時は、無理をせず自宅で休養することが大切です。「少しくらいなら大丈夫」と考えて出勤や登校すると、感染を広げてしまう可能性があります。

周囲の人が咳やくしゃみをしている場合は、できるだけ距離を取るようにしましょう。

定期的な換気も重要です。室内にウイルスが滞留しないよう、定期的に窓を開けて空気を入れ替えましょう。

よくある質問

インフルエンザと診断されたら、いつから外出できますか?

学校保健安全法では、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」を出席停止期間の基準としています。この基準は、学校だけでなく、職場復帰の目安としても広く用いられています。
発症日を0日目として数えます。例えば、月曜日に発症した場合、土曜日が5日目となります。また、解熱した日も0日目として数えるため、木曜日に解熱した場合、土曜日が2日目となります。両方の条件を満たした日の翌日から登校・出勤が可能となります。
解熱したからといってすぐに外出できるわけではないことに注意が必要です。解熱後もウイルスの排出が続いているため、感染拡大を防ぐためにも、この期間はしっかりと自宅で療養することが大切です。

熱が下がらない場合はどうすればいいですか?

抗インフルエンザ薬を服用している場合でも、すぐに解熱するわけではありません。通常、薬の効果が現れるまでに1日から2日程度かかります。発症後3日目頃から徐々に解熱傾向が見られることが一般的です。

ただし、以下のような場合は、医療機関を再受診する必要があります。

抗インフルエンザ薬を開始して3日経っても全く改善傾向が見られない場合は、薬が効いていない可能性や、他の疾患を合併している可能性があります。

一度解熱した後に再び高熱が出た場合は、細菌の二次感染などを起こしている可能性があります。

40度以上の高熱が続く場合や、解熱剤を使用しても全く熱が下がらない場合も、受診が必要です。

発熱以外の症状、特に呼吸困難や意識障害などが見られる場合は、緊急性が高いため、すぐに受診してください。

インフルエンザの検査はいつ受けるのがよいですか?

インフルエンザの迅速診断検査は、発症後すぐに行っても正確な結果が出ないことがあります。ウイルスの量が十分に増えていないと、実際にはインフルエンザに感染していても陰性と判定されることがあるためです。

一般的に、発症後12時間から24時間経過してから検査を行うと、より正確な結果が得られるとされています。ただし、明らかにインフルエンザが疑われる症状があり、周囲で流行している場合は、検査を待たずに治療を開始することもあります。

また、発症後48時間を過ぎると、抗インフルエンザ薬の効果が限定的になるため、あまり遅すぎても意味がなくなります。症状が出たら、適切なタイミングで医療機関を受診することが重要です。

家族がインフルエンザになった場合、予防投与は受けられますか?

インフルエンザ患者さんと濃厚接触した方に対して、予防的に抗インフルエンザ薬を投与することがあります。これを予防投与といいます。

予防投与の対象となるのは、主に以下のような方です。

高齢者や、心臓病、糖尿病、慢性呼吸器疾患などの基礎疾患がある方で、インフルエンザに罹患すると重症化するリスクが高い方。

免疫抑制剤を使用している方や、免疫機能が低下している方。

ただし、予防投与は保険適用外となるため、全額自己負担となります。また、予防投与を受けても100%感染を防げるわけではありません。

予防投与よりも、ワクチン接種、手洗い、マスク着用などの基本的な予防対策を徹底することが重要です。

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の違いは?

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、どちらも呼吸器感染症ですが、原因ウイルスが異なります。

症状は似ている部分も多く、発熱、咳、倦怠感などは両方に見られます。ただし、新型コロナウイルス感染症では、味覚・嗅覚障害が比較的特徴的とされています。

潜伏期間は、インフルエンザが1日から3日程度なのに対し、新型コロナウイルス感染症は2日から14日程度(中央値5日程度)とやや長い傾向があります。

症状だけでは両者を区別することは困難です。正確な診断のためには、それぞれの検査を行う必要があります。近年では、インフルエンザと新型コロナウイルスを同時に検査できるキットも使用されています。

まとめ

インフルエンザの熱のピークは、通常、発症後24時間から48時間以内に訪れ、39度から40度の高熱となることが多いです。この時期には、全身倦怠感、関節痛、筋肉痛、頭痛などの全身症状も強く現れます。

熱のピーク時には、十分な安静と休養、こまめな水分補給が最も重要です。解熱剤や抗インフルエンザ薬を適切に使用することで、症状を和らげることができます。

通常、発症後3日目頃から徐々に解熱傾向が見られ、5日目頃までには熱が下がることが多いです。ただし、解熱後も2日程度はウイルスの排出が続くため、学校や職場への復帰は、発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過してからとなります。

呼吸困難、意識障害、水分が全く摂れないなどの症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。また、一度解熱した後に再び高熱が出た場合も、合併症の可能性があるため、再受診が必要です。

インフルエンザの予防には、ワクチン接種、手洗い、マスク着用などの基本的な対策が重要です。日頃から十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がけ、免疫力を高めることも大切です。

インフルエンザは、適切に対処すれば多くの場合は自然に回復する疾患ですが、時に重篤な合併症を起こすこともあります。症状の経過を注意深く観察し、必要に応じて適切なタイミングで医療機関を受診することが大切です。

参考文献

  1. 厚生労働省「インフルエンザに関する報道発表資料」https://www.mhlw.go.jp/
  2. 国立感染症研究所「インフルエンザとは」https://www.niid.go.jp/
  3. 日本感染症学会「インフルエンザ診療ガイドライン」http://www.kansensho.or.jp/
  4. 文部科学省「学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令の施行について」https://www.mext.go.jp/
  5. 日本小児科学会「インフルエンザ脳症について」https://www.jpeds.or.jp/

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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