HDLコレステロールとは?善玉コレステロールの役割・基準値・改善方法を徹底解説

🩺 はじめに

健康診断の結果を見て「HDLコレステロール」という項目が気になったことはありませんか。「コレステロール=体に悪いもの」というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、実はコレステロールには体に良い働きをするものと、そうでないものがあります。HDLコレステロールは「善玉コレステロール」とも呼ばれ、私たちの健康を守る重要な役割を担っています。

本記事では、HDLコレステロールとは何か、その体内での働きや基準値、数値が低い場合に起こりうる健康リスク、そして数値を改善するための具体的な方法まで、医学的な観点から詳しく解説します。健康診断でコレステロール値を指摘された方や、脂質異常症の予防に関心がある方はぜひ最後までお読みください。

🩺 はじめに

🧬 第1章 コレステロールの基礎知識

🔬 コレステロールとは何か

コレステロールは人間の体に存在する脂質のひとつであり、生命維持に欠かせない重要な物質です。有害なものというイメージを持たれがちですが、コレステロールは細胞膜の主要な構成成分であり、各種ホルモンや胆汁酸を作る材料としても使われています。

体内のコレステロールのうち、約7~8割は肝臓などで糖や脂肪を使って合成されており、残りの2~3割が食事から取り入れられています。つまり、コレステロールの大部分は体内で作られているのです。

コレステロールが不足すると、肌や髪がパサパサになったり、細菌に感染しやすくなったりするほか、血管の細胞が弱くなって脳内出血などが起こりやすくなることもあります。このように、コレステロールは「悪者」ではなく、適切な量が体内に存在することが健康維持には不可欠なのです。

🚚 リポタンパク質について理解する

コレステロールは脂質であるため、そのままでは水に溶けず、血液中を移動することができません。そこで、コレステロールは「リポタンパク質」というタンパク質と結合した形で血液中を運ばれます。

リポタンパク質は含まれる成分の比率によって比重や大きさが異なり、主に以下の種類に分類されます。

  • カイロミクロン:小腸で吸収した脂質を肝臓に運ぶ
  • VLDL(超低比重リポタンパク質):肝臓で合成された脂質を全身に運ぶ
  • IDL(中間比重リポタンパク質):VLDLが代謝される過程の中間体
  • LDL(低比重リポタンパク質):コレステロールを全身の細胞に届ける
  • HDL(高比重リポタンパク質):余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す

このうち、健康診断でよく測定されるのがLDLコレステロールとHDLコレステロールです。LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」、HDLコレステロールは「善玉コレステロール」と呼ばれています。

⚖️ LDLコレステロールとHDLコレステロールの違い

LDL(Low Density Lipoprotein:低比重リポタンパク質)は、肝臓で作られたコレステロールを全身の細胞や組織に運ぶ役割を担っています。細胞膜やホルモンの材料として必要なコレステロールを届ける重要な働きをしていますが、血液中に増えすぎると血管壁に沈着し、動脈硬化を引き起こす原因となります。このため「悪玉コレステロール」と呼ばれています。

一方、HDL(High Density Lipoprotein:高比重リポタンパク質)は、全身の細胞や血管壁に蓄積した余分なコレステロールを回収し、肝臓に運び戻す働きをしています。この機能は「コレステロール逆転送」と呼ばれ、動脈硬化の予防に重要な役割を果たしています。まさに血管を掃除してくれる「お掃除ロボット」のような存在であり、「善玉コレステロール」という名前の由来となっています。

なお、LDLとHDLに含まれているコレステロール自体は同じ物質です。違いはあくまでも運搬する「乗り物」の役割の違いであり、コレステロール分子そのものに善玉・悪玉の区別があるわけではありません。


💪 第2章 HDLコレステロールの働きと重要性

⚙️ HDLコレステロールの主な機能

HDLコレステロールには、以下のような重要な働きがあります。

まず最も重要なのは、コレステロール逆転送機能です。HDLは血管壁や末梢組織に蓄積した余分なコレステロールを引き抜いて回収し、肝臓へと運びます。肝臓に運ばれたコレステロールは胆汁酸として排出されるため、HDLが十分に機能することで体内のコレステロールバランスが保たれます。

次に、HDLには抗動脈硬化作用があります。血管壁にコレステロールが沈着するのを防ぎ、すでに沈着したコレステロールを除去することで、動脈硬化の進行を抑制します。

さらに、HDLには抗炎症作用や抗酸化作用もあるとされています。血管内皮の炎症を抑え、LDLコレステロールが酸化されて動脈硬化を促進するのを防ぐ働きが報告されています。

❗ なぜHDLコレステロールが重要なのか

HDLコレステロールが十分にあることは、心血管疾患の予防において非常に重要です。

HDLコレステロール値が高いほど動脈硬化が進みにくく、心筋梗塞や脳梗塞などの発症リスクが低くなることが多くの研究で示されています。一般的に、HDLコレステロールが10mg/dL増加すると、冠動脈疾患のリスクが約2~3%低下するという報告もあります。

逆に、HDLコレステロール値が低いと、血管壁に蓄積したコレステロールが十分に回収されず、動脈硬化が進行しやすくなります。特にHDLコレステロール値が40mg/dL未満になると、心筋梗塞などの心血管疾患の発症リスクが急激に高まることが知られています。

また、HDLコレステロール値が低い状態は、メタボリックシンドロームの診断基準のひとつにも含まれており、全身的な代謝異常のサインとしても重要視されています。

高桑康太 医師・当院治療責任者

HDLコレステロールは「善玉」と呼ばれますが、単に数値が高ければ良いということではありません。重要なのはHDLがしっかりと機能しているかどうかです。運動習慣や食事内容の改善により、HDLの質と量の両方を向上させることが、真の心血管疾患予防につながります。

🔄 HDLコレステロールと動脈硬化の関係

動脈硬化とは、動脈の壁が硬くなり弾力性が失われた状態を指します。血管壁にLDLコレステロールなどの脂質が入り込んでドロドロの粥状物質(プラーク)となって蓄積すると、血管が狭くなり、臓器に十分な酸素や栄養が届かなくなります。

動脈硬化が進行すると、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの重篤な疾患を引き起こすリスクが高まります。プラークが破綻して血栓ができると、血管が完全に詰まってしまい、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる事態になることもあります。

HDLコレステロールは、この動脈硬化の進行を抑える「防御役」として機能しています。血管壁にたまったLDLコレステロールを回収し、肝臓に運んで処理することで、プラークの形成を防いでいるのです。

そのため、LDLコレステロールが高いだけでなく、HDLコレステロールが低い状態も動脈硬化のリスク因子として重要視されています。理想的な状態は「LDLコレステロールが低く、HDLコレステロールが高い」ことであり、両者のバランスを示すLH比(LDL÷HDL)も動脈硬化リスクの指標として活用されています。


📊 第3章 HDLコレステロールの基準値と検査

📋 基準値について

日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、HDLコレステロール値が40mg/dL未満の場合を「低HDLコレステロール血症」と定義しており、これは脂質異常症の診断基準のひとつとなっています。

HDLコレステロールの基準値の目安は以下のとおりです。

  • 40mg/dL未満:低HDLコレステロール血症(脂質異常症)
  • 40~70mg/dL:基準範囲内
  • 70mg/dL以上:良好な状態

一般的にHDLコレステロール値は高いほど望ましいとされており、LDLコレステロールやNon-HDLコレステロールのように「高すぎる場合」の基準は設けられていません。ただし、100mg/dLを超えるような極端に高い値の場合は、遺伝性疾患など何らかの原因が潜んでいる可能性もあるため、医師に相談することをお勧めします。

👫 男女差と年齢による変化

HDLコレステロール値には男女差があり、一般的に女性の方が男性より約10mg/dL程度高い傾向があります。これは女性ホルモンであるエストロゲンがHDLコレステロールの産生を促進する作用を持っているためです。

ただし、女性の場合は閉経を境にHDLコレステロール値が変化します。閉経によりエストロゲンの分泌が減少すると、HDLコレステロール値は約5~10%低下し、同時にLDLコレステロール値が上昇する傾向があります。

更年期以降の女性は男性と同等、あるいはそれ以上に動脈硬化性疾患のリスクが高まることが報告されており、閉経後は特に脂質管理に注意が必要です。厚生労働省の調査でも、50代以降の女性で脂質異常症を疑われる人の割合が急増することが示されています。

また、加齢に伴い脂質代謝が変化することから、年齢とともにHDLコレステロール値が低下する傾向もみられます。

🧮 LH比(LDLコレステロール÷HDLコレステロール)の活用

近年、動脈硬化リスクの評価において「LH比」が注目されています。LH比とは、LDLコレステロール値をHDLコレステロール値で割った数値のことです。

例えば、LDLコレステロール値が120mg/dL、HDLコレステロール値が40mg/dLの場合、LH比は120÷40=3.0となります。

LH比の目安は以下のとおりです。

  • 1.5以下:血管がきれいで理想的な状態
  • 2.0以下:正常範囲
  • 2.5以上:動脈硬化や血栓のリスクが高い状態

LDLコレステロール値とHDLコレステロール値がそれぞれ基準範囲内であっても、LH比が高い場合は動脈硬化が進行しやすいことがわかっています。両方の数値のバランスを確認することが、心血管疾患の予防には重要です。

高血圧や糖尿病がある場合、あるいは心筋梗塞などの既往がある場合には、LH比を1.5以下に保つことが推奨されています。

📈 Non-HDLコレステロールについて

脂質検査では「Non-HDLコレステロール」という項目が測定されることもあります。これは総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値で、動脈硬化を促進するすべてのリポタンパク質に含まれるコレステロールの総量を反映しています。

日本動脈硬化学会のガイドラインでは、Non-HDLコレステロール値が170mg/dL以上を「高Non-HDLコレステロール血症」、150~169mg/dLを「境界域高Non-HDLコレステロール血症」と定義しています。

特に中性脂肪が高い方は、LDLコレステロール値だけでなくNon-HDLコレステロール値も確認することで、動脈硬化リスクをより正確に把握できます。


📉 第4章 HDLコレステロールが低くなる原因

🎯 生活習慣による影響

HDLコレステロール値が低下する主な原因として、生活習慣の乱れが挙げられます。

運動不足は、HDLコレステロール値を低下させる大きな要因のひとつです。運動不足になると脂質代謝が低下し、HDLコレステロールの産生が抑制されます。また、運動不足は肥満を招きやすく、それがさらにHDLコレステロールの低下につながる悪循環を生みます。

喫煙もHDLコレステロールを減少させ、同時にLDLコレステロールを増加させることが明らかになっています。タバコに含まれるニコチンは交感神経を刺激し、HDLコレステロールの産生を抑制するほか、その機能を低下させる作用があります。1日に10本以上吸う方は、脂質異常症のリスクが特に高まるとされています。

肥満、特に内臓脂肪型肥満(メタボリックシンドローム)は、HDLコレステロール低下の重要な原因です。内臓脂肪が蓄積すると、脂肪組織から分泌される生理活性物質(アディポカイン)のバランスが崩れ、HDLコレステロールの代謝に悪影響を及ぼします。

食生活の乱れも影響します。トランス脂肪酸を多く含むマーガリンやショートニング、加工食品の過剰摂取はHDLコレステロールを下げる作用があります。また、糖質や脂質の摂りすぎによって中性脂肪が増加すると、HDLコレステロールが低下しやすくなります。中性脂肪とHDLコレステロールは反比例の関係にあり、中性脂肪が多い人はHDLコレステロールが減少しやすい傾向にあります。

過度の飲酒も中性脂肪を増加させ、結果的にHDLコレステロールを減少させる可能性があります。ただし、適量の飲酒(日本酒なら1合程度)はHDLコレステロールを上げる効果があるという報告もありますが、これを理由に飲酒を始めることは推奨されていません。

🏥 疾患による影響

生活習慣以外にも、いくつかの疾患がHDLコレステロール値の低下を引き起こすことがあります。

糖尿病は代表的な原因のひとつです。インスリンの働きが低下すると、HDLコレステロールが作られにくく、分解されやすくなるため、値が低下します。肥満の方もインスリンが効きにくい状態にあることが多く、同様のメカニズムでHDLコレステロールが低くなりやすいです。

以下の疾患もHDLコレステロール値に影響を与えます:

  • 甲状腺機能低下症
  • 肝疾患
  • 腎疾患
  • 感染症(一時的)
  • 悪性腫瘍
  • 低栄養状態

🧬 遺伝的要因

HDLコレステロール値は遺伝的な要因によっても影響を受けます。

以下のような遺伝性疾患では、生まれつきHDLコレステロール値が低い状態が続きます:

  • 家族性低HDLコレステロール血症
  • タンジール病
  • アポタンパク欠損症

また、特定の遺伝子変異によってHDLコレステロールの産生や代謝に関わる経路に異常がある場合、生活習慣を改善しても数値が上がりにくいことがあります。

家族に若くして心筋梗塞や脳梗塞を発症した方がいる場合は、遺伝的な脂質代謝異常の可能性もあるため、医師に相談することをお勧めします。

💊 薬剤の影響

一部の薬剤がHDLコレステロール値を低下させることも知られています。

以下のような薬剤が脂質代謝に影響を与える可能性があります:

  • β遮断薬(高血圧や狭心症の治療に使用)
  • 一部の利尿薬
  • 経口避妊薬
  • 一部の抗うつ薬

現在服用中の薬がある場合は、主治医に脂質への影響について確認しておくとよいでしょう。自己判断で服薬を中止することは危険ですので、必ず医師と相談してください。


⚠️ 第5章 HDLコレステロールが低いと起こりうるリスク

🩸 動脈硬化の進行

HDLコレステロールが低い状態が続くと、血管壁に蓄積したコレステロールが十分に回収されず、動脈硬化が進行しやすくなります。

動脈硬化は「沈黙の病気」とも呼ばれ、自覚症状がないまま静かに進行していきます。血管壁にプラークが蓄積し、血管が狭くなっても、ある程度までは症状が現れません。しかし、ある日突然プラークが破綻して血栓ができると、心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な疾患を引き起こす可能性があります。

💔 心血管疾患のリスク増加

HDLコレステロール値の低下に伴い、冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)の発症リスクが上昇することが多くの研究で示されています。

冠動脈に動脈硬化が起こると、心臓への血流が阻害されます。血管が狭くなって一時的に血流が減少すると狭心症の症状(胸の痛みや圧迫感)が現れ、血管が完全に詰まると心筋梗塞を発症します。心筋梗塞では心臓の筋肉が壊死してしまい、命に関わる事態となることもあります。

特にHDLコレステロール値が40mg/dL未満になると、心血管疾患の発症リスクが急激に高まることが報告されています。

🧠 脳血管疾患のリスク増加

動脈硬化は脳の血管にも影響を及ぼし、脳梗塞のリスクを高めます。

脳梗塞は、脳の血管が詰まって血流が途絶え、脳細胞が障害を受ける病気です。発症すると、以下のような症状が現れます:

  • めまいやふらつき
  • 言語障害
  • 視覚障害
  • 片側の手足のしびれや麻痺

重症の場合は意識障害や後遺症が残ることもあり、認知症の原因となることもあります。

研究によると、HDLコレステロール値が30mg/dL以下の人は、60mg/dL以上の人に比べて脳卒中になるリスクが約3倍高いという報告もあります。

🦵 その他の健康への影響

HDLコレステロールの低下は、上記の心血管疾患・脳血管疾患のリスク増加だけでなく、末梢動脈疾患(足の血管の動脈硬化)のリスクも高めます。

末梢動脈疾患が進行すると、歩行時に足が痛くなる間欠性跛行という症状が現れ、重症になると安静時にも痛みを感じたり、足の壊疽(組織の壊死)を引き起こしたりすることもあります。

また、HDLコレステロールの低下は全身の代謝異常のサインでもあり、糖尿病やメタボリックシンドロームとも密接に関連しています。


🏃 第6章 HDLコレステロールを増やす方法

🚴 運動療法

HDLコレステロール値を改善する最も効果的な方法は運動です。食事を工夫してもHDLコレステロール値はそれほど上がりませんが、運動はHDLコレステロールを上げる効果が科学的に実証されています。

特に有効なのは有酸素運動です。以下のような運動を継続的に行うことで、HDLコレステロール値の上昇が期待できます:

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • 水泳
  • サイクリング
  • エアロビクス

運動の目安として、以下が推奨されています。

  • 頻度:週3~5回以上(できれば毎日)
  • 時間:1日30分以上(10分×3回に分けても可)
  • 強度:少し汗ばむ程度、軽く息が上がるくらい(会話はできるが、歌うのは難しい程度)

激しすぎる運動は必要なく、キビキビと体を動かす程度の運動を継続することが大切です。運動習慣のない方は、まずは1日10分の散歩から始めて、徐々に時間と強度を上げていくとよいでしょう。

運動によって中性脂肪が燃焼されて減少すると、中性脂肪と反比例の関係にあるHDLコレステロールが上昇します。現時点では、HDLコレステロールを直接増やす薬剤は存在しないため、運動はHDLコレステロールを上げる最も有効な手段といえます。

研究では、定期的な有酸素運動を3か月続けることで、HDLコレステロール値が約10mg/dL上昇したという報告もあります。

💪 筋力トレーニングの効果

有酸素運動に加えて、筋力トレーニング(レジスタンス運動)も効果的です。

以下のような筋トレは、筋肉量を増やし基礎代謝を上げる効果があります:

  • 腕立て伏せ
  • スクワット
  • ダンベル体操

基礎代謝が上がるとエネルギー消費量が増え、脂質代謝が改善されてHDLコレステロール値の向上につながります。

筋力トレーニングは週2~3回を目安に、無理のない範囲で行うことが推奨されています。有酸素運動と組み合わせることで、より効果的にHDLコレステロール値を改善できます。

🚭 禁煙

喫煙はHDLコレステロールを低下させる大きな要因であり、禁煙による効果は比較的早く現れます。

禁煙後1か月程度でHDLコレステロール値の改善が見られ始めるケースも多く報告されています。喫煙を続けることは動脈硬化を加速させるため、脂質異常症の改善を目指す方にとって禁煙は最優先事項です。

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来で医師のサポートを受けることも選択肢のひとつです。

⚖️ 体重管理

肥満、特に内臓脂肪型肥満はHDLコレステロール低下の重要な原因です。

BMI(体重kg÷身長m÷身長m)が25以上の方は、5~10%の体重減少を目指すことでHDLコレステロールの改善が期待できます。例えば、体重80kgの方であれば、4~8kgの減量が目標となります。

減量には食事制限と運動の両方が効果的であり、無理なダイエットよりも持続可能な生活習慣の改善を心がけることが大切です。

🥗 食事の工夫

食事だけでHDLコレステロール値を大幅に上げることは難しいとされていますが、以下のような食生活の工夫は脂質全体のバランス改善に役立ちます。

積極的に摂取したい食品:

青魚(サバ、サンマ、イワシなど)に含まれるEPA・DHAなどのオメガ3脂肪酸が挙げられます。週に2~3回青魚を食べる習慣のある方は、そうでない方に比べてHDLコレステロール値が高い傾向があるという報告もあります。

オリーブオイルやナッツ類(アーモンド、くるみなど)に含まれる不飽和脂肪酸も、脂質代謝の改善に役立ちます。サラダのドレッシングや調理油としてオリーブオイルを活用したり、間食にナッツを少量取り入れたりすることが推奨されています。

大豆製品に含まれる大豆タンパクも、コレステロールの吸収を抑える効果があるとされています。

控えたい食品:

トランス脂肪酸を多く含む以下の食品は過剰摂取を避けることが大切です:

  • マーガリンやショートニング
  • 菓子パン
  • 洋菓子

また、飽和脂肪酸を多く含む動物性脂肪(ラード、バター、脂身の多い肉など)の摂りすぎにも注意が必要です。

糖質やアルコールの過剰摂取は中性脂肪を増やし、間接的にHDLコレステロールを低下させるため、適度な制限が推奨されています。

😴 ストレス管理と十分な睡眠

慢性的なストレスはホルモンバランスの乱れを引き起こし、HDLコレステロールの低下につながることがあります。

以下の方法でストレスを管理することも、HDLコレステロール値の維持・改善に役立ちます:

  • 適度な運動
  • 十分な睡眠
  • 趣味の時間

睡眠不足や精神的ストレスは交感神経を刺激し、血中脂質を上昇させるホルモンの分泌を促進します。規則正しい生活リズムを保つことも、脂質管理において重要です。


📈 第7章 HDLコレステロールが高すぎる場合

✅ 基本的には問題ない

HDLコレステロールは「善玉コレステロール」と呼ばれるように、基本的には高いほど良いとされています。HDLコレステロールには上限の基準値は設けられておらず、高い値は動脈硬化や心血管疾患のリスク低下と関連しています。

⚠️ 極端に高い場合の注意点

ただし、HDLコレステロール値が100mg/dLを超えるような極端に高い場合は、何らかの原因が潜んでいる可能性があります。

近年の研究では、HDLコレステロールが100mg/dL以上になると心血管リスクがかえって高まる可能性があることが示唆されています。これは、極端に高いHDLが正常な機能を果たしていない可能性や、背景にある疾患の影響が考えられるためです。

🧬 遺伝性疾患の可能性

HDLコレステロール値が130~250mg/dLと著しく高い場合は、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)欠損症という遺伝性疾患の可能性があります。この疾患では、肝臓がHDLからコレステロールを正常に回収できないため、血中のHDLコレステロールが非常に多くなります。

CETP欠損症の場合、HDLコレステロールが高くても動脈硬化を予防する効果が得られず、むしろ心筋梗塞などの動脈硬化性疾患にかかりやすくなるという報告もあります。

HDLコレステロール値が120mg/dLを超える場合は、一度医師に相談して原因を確認しておくことをお勧めします。

🔄 他の原因

遺伝性疾患以外にも、以下の要因がHDLコレステロールを上昇させることがあります:

  • アルコールの過剰摂取
  • 一部の薬剤(フィブラート系薬剤やエストロゲン製剤など)
  • 甲状腺機能低下症
  • 胆汁うっ滞性肝疾患

極端に高い値が出た場合は、原因を特定して適切な対応をとることが重要です。


🏥 第8章 脂質異常症の診断と治療

📋 脂質異常症とは

脂質異常症とは、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)の値が基準値から外れた状態を指します。以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、HDLコレステロールが低い状態も含まれるため、現在は「脂質異常症」という名称が使われています。

日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、脂質異常症の診断基準が以下のように定められています。

  • 高LDLコレステロール血症:LDLコレステロール140mg/dL以上
  • 境界域高LDLコレステロール血症:LDLコレステロール120~139mg/dL
  • 高トリグリセライド(中性脂肪)血症:空腹時150mg/dL以上(随時175mg/dL以上)
  • 低HDLコレステロール血症:HDLコレステロール40mg/dL未満
  • 高Non-HDLコレステロール血症:Non-HDLコレステロール170mg/dL以上

これらのいずれかに該当する場合、脂質異常症と診断されます。

🌱 生活習慣の改善が基本

脂質異常症と診断された場合、まず取り組むべきは生活習慣の改善です。

食事療法:

以下のような工夫が推奨されています:

  • コレステロールを多く含む食品(卵黄、魚卵、レバーなど)の摂取を控える
  • 飽和脂肪酸の多い動物性脂肪を減らす
  • 魚類に含まれるEPAやDHA、オリーブオイルなどの不飽和脂肪酸を積極的に摂る
  • 食物繊維を多く含む野菜、海藻、きのこなどを取り入れる

運動療法:

毎日30分以上の有酸素運動を目標にします。週に2~3回の筋力トレーニングを併用すると、より効果的です。

その他:

禁煙、節酒、適正体重の維持なども重要な改善ポイントです。

生活習慣の改善は3~6か月程度継続して効果を判定し、改善が不十分な場合は薬物療法を検討します。

💊 薬物療法について

生活習慣の改善だけでは目標値に達しない場合や、心血管疾患のリスクが高い方には薬物療法が行われます。

LDLコレステロールを下げる薬としては、スタチン系薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)が第一選択となります。スタチンは肝臓でのコレステロール合成を抑制し、多くの研究で心血管疾患の予防効果が示されています。

HDLコレステロールを直接増やす薬剤は現時点では存在しません。ただし、フィブラート系薬剤やニコチン酸誘導体などは、中性脂肪を下げるとともにHDLコレステロールを若干増加させる効果があります。

重症の脂質異常症の場合には、PCSK9阻害薬などの新しい薬剤が併用されることもあります。

薬物療法を受ける場合でも、生活習慣の改善を継続することが重要です。

🔍 定期的な検査の重要性

脂質異常症は自覚症状がほとんどないため、定期的な血液検査でしか発見・管理できません。

年に1回以上は健康診断を受け、脂質プロファイル(LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、総コレステロール)を確認することが推奨されています。

すでに脂質異常症と診断されている方や、心血管疾患のリスクが高い方は、3~6か月ごとの検査で経過を追跡することが望ましいです。


👥 第9章 年代別・性別の注意点

🔰 若年層(20~30代)の方へ

若い世代でも、生活習慣の乱れによってHDLコレステロールが低下することがあります。

特に以下の要因は若い世代でも脂質異常症を引き起こす原因となります:

  • 運動不足
  • 喫煙
  • 偏った食生活

20~30代のうちから健康的な生活習慣を身につけることが、将来の心血管疾患予防につながります。

また、家族に若くして心筋梗塞や脳梗塞を発症した方がいる場合は、遺伝性の脂質異常症(家族性高コレステロール血症など)の可能性もあるため、早めに検査を受けることをお勧めします。

👨 中高年男性(40~50代)の方へ

男性は40代から動脈硬化が進行しやすくなります。

中高年男性はLDLコレステロールが上昇しやすく、HDLコレステロールが低下しやすい傾向があります。以下の要因も脂質異常症のリスクを高めます:

  • 仕事のストレス
  • 運動不足
  • 外食の増加
  • 喫煙・飲酒習慣

定期的な健康診断で脂質値を確認し、異常があれば早めに対処することが重要です。

👩 更年期以降の女性の方へ

女性は閉経前まで女性ホルモン(エストロゲン)の保護作用により、動脈硬化のリスクが比較的低く保たれています。しかし、閉経を境にエストロゲンの分泌が急激に減少すると、LDLコレステロールが上昇し、HDLコレステロールが低下する傾向があります。

閉経後は男性と同等、あるいはそれ以上に心血管疾患のリスクが高まることが報告されています。更年期以降は食事や運動習慣を見直し、定期的に脂質検査を受けることが特に重要です。

また、更年期症状の影響で食事の準備がおっくうになり、食生活が乱れやすいことも注意点です。できるだけバランスの良い食事を心がけましょう。

👴 高齢者(65歳以上)の方へ

高齢者においても、脂質管理は心血管疾患の予防に重要です。

監修者医師

高桑 康太 医師

保有資格

ミラドライ認定医

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任
  • 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
  • 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
  • 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
  • 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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