はじめに
「悪寒」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。風邪をひいたときや体調が悪いときに、ゾクゾクと背筋が寒くなる、あの不快な感覚です。悪寒は単なる寒気ではなく、体が病気と闘っているサインとして現れる重要な症状の一つです。
本記事では、悪寒とは何か、どのようなメカニズムで起こるのか、どのような病気で悪寒が現れるのか、そして悪寒を感じたときにどう対処すればよいのかについて、医学的な観点から詳しく解説します。悪寒についての正しい知識を身につけることで、適切な対応ができるようになり、重篤な疾患の早期発見にもつながります。
悪寒とは何か
悪寒の定義
悪寒（おかん）とは、実際の気温や室温とは関係なく、体が寒さを感じてゾクゾクと震えるような感覚のことを指します。医学用語では「chills」や「rigor」と呼ばれ、発熱の前触れとして現れることが多い症状です。
悪寒は単なる「寒い」という感覚とは異なり、体の内側から湧き上がってくるような独特の寒気を伴います。多くの場合、体温が上昇する過程で起こり、体が震えることで筋肉が熱を産生しようとする生理的な反応です。
悪寒と寒気の違い
「悪寒」と「寒気」は似ている言葉ですが、医学的には区別されることがあります。
寒気は、環境温度が低いときや薄着でいるときなど、物理的に寒さを感じる状態を指します。これは正常な生理反応であり、体温を保つための自然な感覚です。
一方、悪寒は、発熱を伴うことが多く、体温調節中枢の設定温度が上昇することで生じる病的な寒気を指します。室温が適切であっても、あるいは暖かい環境にいても感じられる不快な寒さが特徴です。
悪寒の特徴的な症状
悪寒を経験すると、以下のような症状が現れます：
- 体の震え（シバリング）：歯がガチガチと鳴るほどの震えが生じることがあります
- 鳥肌が立つ：全身の皮膚に鳥肌が立ち、毛が逆立つような感覚
- 手足の冷感：末梢の血管が収縮するため、手足が冷たくなります
- 全身のゾクゾク感：背筋を冷たいものが這い上がるような不快な感覚
- 着衣を重ねても暖まらない：何枚も服を重ねたり、布団をかぶっても寒さが解消されません
悪寒が起こるメカニズム
体温調節の仕組み
人間の体温は、脳の視床下部にある体温調節中枢によって一定に保たれています。通常、健康な成人の体温は約36.5～37.5度の範囲で維持されています。
体温調節中枢は、体内の温度センサーからの情報を受け取り、体温が設定値より高ければ放熱を促し、低ければ熱産生を促すように指令を出します。この精密な調節システムによって、私たちの体温は環境温度が変化しても一定に保たれているのです。
発熱時の体温上昇メカニズム
感染症などで病原体が体内に侵入すると、免疫細胞が活性化し、「発熱物質（パイロジェン）」と呼ばれる物質を産生します。代表的な発熱物質には、サイトカインの一種であるインターロイキン-1（IL-1）、インターロイキン-6（IL-6）、腫瘍壊死因子（TNF）などがあります。
これらの発熱物質が血流に乗って脳に到達すると、体温調節中枢の設定温度が上昇します。例えば、通常37度に設定されていた体温の設定値が39度に上昇すると、体は「現在の体温が低すぎる」と認識します。
なぜ悪寒が起こるのか
体温調節中枢の設定温度が上昇すると、体は現在の体温（例えば37度）を「寒い」と感じ、体温を設定値（例えば39度）まで上げようとします。このとき、体は以下のような反応を起こします：
- 熱産生の促進
- 筋肉を震わせることで熱を作り出す（シバリング）
- 代謝を亢進させて熱を産生する
- 熱放散の抑制
- 末梢血管を収縮させて皮膚からの熱放散を減らす
- 発汗を抑制する
この過程で生じる筋肉の震えと血管収縮による冷感が、私たちが「悪寒」として感じる症状なのです。
悪寒から発熱への移行
悪寒によって体温が設定値まで上昇すると、震えは止まり、今度は暑さを感じるようになります。この段階では発汗が始まり、体温を一定に保とうとします。
そして、病原体が排除されるなどして発熱物質の産生が減少すると、体温調節中枢の設定温度が元に戻ります。すると今度は体温が「高すぎる」と認識され、大量の発汗によって体温を下げようとします。これが「解熱」の過程です。
悪寒を引き起こす主な疾患
悪寒は様々な疾患で見られる症状ですが、特に感染症で多く認められます。ここでは、悪寒を伴う代表的な疾患について解説します。
感染症による悪寒
インフルエンザ
インフルエンザは、悪寒を伴う代表的な疾患です。インフルエンザウイルスに感染すると、急激に高熱が出る前に強い悪寒を感じることが特徴です。
主な症状
- 突然の高熱（38度以上）
- 強い悪寒・戦慄
- 全身倦怠感
- 関節痛・筋肉痛
- 頭痛
- 咳、喉の痛み
インフルエンザは厚生労働省でも注意喚起がされている感染症で、毎年冬季に流行します。特に高齢者や基礎疾患のある方は重症化しやすいため、早期の受診と適切な治療が重要です。
急性扁桃炎
急性扁桃炎は、扁桃腺に細菌やウイルスが感染して炎症を起こす疾患です。
主な症状
- 高熱（38度以上）
- 悪寒
- 激しい喉の痛み
- 嚥下困難
- 扁桃腺の腫脹と白苔の付着
- 頸部リンパ節の腫脹
特に溶血性連鎖球菌（溶連菌）による扁桃炎は、適切に治療しないと急性腎炎やリウマチ熱などの合併症を引き起こすことがあるため注意が必要です。
肺炎
肺炎は肺の組織に炎症が起こる疾患で、細菌、ウイルス、真菌などが原因となります。
主な症状
- 高熱と悪寒
- 咳（痰を伴うことが多い）
- 胸痛
- 呼吸困難
- 全身倦怠感
日本呼吸器学会のガイドラインでは、肺炎は入院が必要になることもある重篤な疾患とされています。特に高齢者では症状が非典型的で、発熱や悪寒がはっきりしないこともあるため注意が必要です。
腎盂腎炎
腎盂腎炎は、腎臓の腎盂という部分に細菌感染が起こる疾患です。多くは膀胱炎から細菌が上行して発症します。
主な症状
- 高熱と激しい悪寒・戦慄
- 背部痛（腰痛）
- 吐き気・嘔吐
- 頻尿や排尿時痛
- 尿の混濁
女性に多く見られる疾患で、適切な抗菌薬治療が必要です。
急性胆管炎・胆嚢炎
胆管や胆嚢に細菌感染が起こると、重篤な症状を呈することがあります。
主な症状（Charcot三徴）
- 高熱と悪寒
- 右上腹部痛
- 黄疸
胆管炎は敗血症に進行する危険性があり、緊急の処置が必要な場合があります。
尿路感染症
膀胱炎、腎盂腎炎などの尿路感染症では、悪寒を伴うことがあります。特に上部尿路感染症（腎盂腎炎）では強い悪寒を感じることが多いです。
敗血症
敗血症は、感染症に対する体の反応が過剰になり、全身の臓器に障害が及ぶ重篤な状態です。
主な症状
- 高熱または低体温
- 激しい悪寒・戦慄
- 頻脈
- 呼吸数の増加
- 意識障害
- 血圧低下
敗血症は生命を脅かす緊急事態であり、すぐに医療機関を受診する必要があります。
マラリア
海外渡航後に悪寒を伴う発熱が出現した場合、マラリアの可能性も考慮する必要があります。マラリアは特徴的な周期性の発熱パターンを示します。
主な症状
- 周期的な高熱
- 激しい悪寒・戦慄
- 大量の発汗
- 頭痛
- 筋肉痛
流行地域（アフリカ、東南アジア、中南米など）への渡航歴がある場合は、必ず医師に伝えましょう。
その他の原因
薬剤性発熱
一部の薬剤は副作用として発熱を引き起こすことがあり、その際に悪寒を伴うことがあります。抗生物質、抗がん剤、免疫抑制剤などが原因となることがあります。
膠原病
全身性エリテマトーデス（SLE）、関節リウマチなどの膠原病でも、発熱と悪寒を伴うことがあります。
悪性腫瘍
一部の悪性腫瘍（リンパ腫、白血病など）では、腫瘍随伴症状として発熱と悪寒が見られることがあります。
甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症では、代謝が亢進して発熱や悪寒を感じることがあります。
悪寒を感じたときの対処法
家庭でできる対処法
悪寒を感じたときは、以下のような対処を行うことで症状を和らげることができます。
1. 体を温める
悪寒を感じているときは、体温を上げようとしている段階なので、無理に冷やさずに保温することが大切です。
- 重ね着をする：薄手の衣類を重ね着して体温を保ちましょう
- 毛布や布団をかける：寝具で体を温めます
- 室温を適切に保つ：20～24度程度が適切です
- 温かい飲み物を摂る：白湯やお茶などで体の内側から温めます
ただし、悪寒が治まって発熱期に移行し、暑さを感じるようになったら、逆に涼しくして熱を逃がすようにします。
2. 十分な水分補給
発熱時は発汗や呼吸によって水分が失われやすくなります。脱水を防ぐために、こまめに水分を補給しましょう。
- 常温の水や白湯
- 経口補水液：電解質も補給できるため理想的です
- スポーツドリンク：糖分が多いため、水で薄めて飲むのもよいでしょう
目安としては、1日1.5～2リットル程度の水分摂取を心がけます。
3. 十分な休養
体が病原体と闘っているときは、エネルギーを温存することが大切です。
- 睡眠時間を確保する：可能な限り安静にして休みましょう
- 無理をしない：仕事や学校は休んで療養に専念します
- 静かな環境で過ごす：音や光の刺激を避けてリラックスします
4. 栄養補給
食欲がない場合も、少量でも栄養を摂ることが大切です。
- 消化の良い食事：おかゆ、うどん、スープなど
- ビタミンCを含む食品：果物、野菜ジュースなど
- タンパク質：卵、豆腐など消化しやすいもの
無理に食べる必要はありませんが、水分と少量の栄養は摂取するようにしましょう。
5. 解熱鎮痛薬の使用
高熱でつらい場合は、解熱鎮痛薬を使用することができます。
- アセトアミノフェン：比較的副作用が少なく、多くの人が使用できます
- NSAIDs（イブプロフェンなど）：抗炎症作用もあります
ただし、インフルエンザが疑われる場合のアスピリン使用は避けるべきです（特に小児）。また、腎機能障害や胃潰瘍のある方は使用に注意が必要です。市販薬を使用する場合は、薬剤師に相談するか、使用説明書をよく読んで適切に使用しましょう。
やってはいけないこと
悪寒を感じているときは、以下のことは避けるべきです。
悪寒時に冷やす
悪寒を感じているとき（体温上昇期）は、体が体温を上げようとしている段階なので、冷やすことは逆効果です。冷やすのは、悪寒が治まって発熱期に入り、暑さを感じるようになってからにしましょう。
無理な入浴
高熱があるときの入浴は、体力を消耗し、脱水を悪化させる可能性があります。どうしても体を清潔にしたい場合は、温かいタオルで体を拭く程度にとどめましょう。
アルコールの摂取
発熱時のアルコール摂取は、脱水を悪化させ、肝臓に負担をかけます。また、薬との相互作用もあるため避けるべきです。
無理な運動
「汗をかいて熱を下げよう」と運動をするのは危険です。体力を消耗し、症状を悪化させる可能性があります。
医療機関を受診すべき症状
悪寒を感じたときは、以下のような症状がある場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
緊急受診が必要な症状
以下の症状がある場合は、すぐに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶことを検討してください。
- 意識障害：ぼんやりしている、呼びかけに反応が鈍い
- 呼吸困難：息苦しい、呼吸が速い
- 持続する高熱：39度以上の高熱が続く
- 激しい頭痛：今まで経験したことのないような強い頭痛
- 項部硬直：首が硬くなって前に曲げられない
- けいれん：体が震える、意識を失う
- 尿量減少：半日以上尿が出ない
- 皮膚の発疹と紫斑：出血性の発疹が出る
- 激しい腹痛：我慢できないような腹痛
- 黄疸：白目や皮膚が黄色くなる
早めの受診が望ましい症状
以下のような症状がある場合は、当日または翌日に医療機関を受診しましょう。
- 38度以上の発熱が3日以上続く
- 悪寒を伴う発熱を繰り返す
- 咳や痰が悪化する
- 嘔吐や下痢が続く
- 排尿時の痛みや頻尿
- 持続する関節痛や筋肉痛
- 食事や水分が摂れない
- 海外渡航後の発熱（マラリアなどの可能性）
特に注意が必要な方
以下に該当する方は、悪寒や発熱があった場合、より早めに医療機関を受診することが推奨されます。
- 乳幼児や高齢者：重症化しやすく、症状が非典型的なことがあります
- 妊婦：母体と胎児への影響を考慮する必要があります
- 基礎疾患のある方：糖尿病、心疾患、腎疾患、免疫不全など
- 免疫抑制剤を使用している方：感染症が重症化しやすくなります
- 最近手術を受けた方：術後感染の可能性があります
医療機関での診断と治療
診察の流れ
医療機関を受診すると、以下のような流れで診察が進められます。
1. 問診
医師は以下のようなことを尋ねます：
- いつから悪寒や発熱があるか
- 他にどのような症状があるか
- 海外渡航歴はあるか
- 持病や服用している薬はあるか
- 周囲に同様の症状の人はいないか
- 動物との接触はあるか
これらの情報は診断に非常に重要なので、できるだけ詳しく伝えましょう。
2. 身体診察
医師は以下のような診察を行います：
- 体温測定
- 血圧・脈拍・呼吸数の測定
- 喉の観察
- リンパ節の触診
- 胸部聴診
- 腹部触診
- 皮膚の観察
3. 検査
必要に応じて、以下のような検査が行われます。
血液検査
- 白血球数：感染症の有無や程度を評価
- CRP（C反応性蛋白）：炎症の指標
- 肝機能・腎機能
- 血液培養：敗血症が疑われる場合
尿検査
- 尿路感染症の診断に重要
画像検査
- 胸部X線検査：肺炎の診断
- 超音波検査：腹部臓器の評価
- CT検査：必要に応じて
微生物学的検査
- インフルエンザ迅速検査
- 咽頭培養
- 痰培養
治療法
診断に基づいて、適切な治療が行われます。
感染症の場合
細菌感染症
- 抗生物質（抗菌薬）の投与
- 症状に応じた対症療法
ウイルス感染症
- インフルエンザ：抗インフルエンザ薬（タミフル、リレンザなど）
- その他のウイルス：対症療法が中心
重症感染症
- 入院治療
- 点滴による水分・栄養補給
- 必要に応じて酸素投与
その他の疾患の場合
原因疾患に応じた専門的な治療が行われます。
悪寒の予防
悪寒の多くは感染症によって引き起こされるため、感染症の予防が悪寒の予防につながります。
日常生活での予防策
1. 手洗いの徹底
手洗いは感染症予防の基本です。厚生労働省が推奨する手洗いの方法を実践しましょう。
- 外出後、食事前、トイレ後は必ず手を洗う
- 石鹸を使って30秒以上かけて丁寧に洗う
- 指の間、爪の間、手首まで洗う
- 流水でしっかりすすぐ
- 清潔なタオルで拭く
2. マスクの着用
風邪やインフルエンザの流行時期には、マスクの着用が有効です。
- 人混みではマスクを着用する
- 咳やくしゃみが出るときは必ずマスクをする
- マスクは適切に装着する（鼻と口を覆う）
3. 適切な室内環境
- 適度な温度・湿度の維持：冬場は室温20～24度、湿度50～60%程度が理想的
- 定期的な換気：1時間に1回、5～10分程度換気する
4. バランスの取れた食事
免疫力を維持するために、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。
- ビタミンC、ビタミンA、亜鉛などの栄養素
- 十分なタンパク質
- 発酵食品（腸内環境を整える）
5. 十分な睡眠
睡眠不足は免疫力の低下につながります。毎日7～8時間の睡眠を確保しましょう。
6. 適度な運動
適度な運動は免疫機能を高めます。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かしましょう。
7. ストレスの管理
慢性的なストレスは免疫力を低下させます。リラックスできる時間を作り、趣味や休息を大切にしましょう。
予防接種
インフルエンザワクチン
毎年秋から冬にかけて、インフルエンザワクチンの接種が推奨されます。特に以下の方は接種が重要です：
- 65歳以上の高齢者
- 基礎疾患のある方
- 医療従事者
- 乳幼児の保護者
肺炎球菌ワクチン
高齢者や基礎疾患のある方は、肺炎球菌ワクチンの接種も検討しましょう。
よくある質問（Q&A）
A. 悪寒は体温が上昇する過程で起こるため、悪寒を感じている時点ではまだ体温が高くないことがあります。悪寒の後に徐々に体温が上昇していくのが一般的なパターンです。しばらく時間をおいてから再度体温を測定すると、発熱していることが多いです。
A. いいえ、悪寒を感じているときは冷やさないようにしましょう。悪寒は体温を上げようとしている段階なので、この時期に冷やすと体はさらに体温を上げようとして、かえって不快感が増します。保温して体を温めることが適切です。発熱して暑さを感じるようになってから、額や脇などを冷やすとよいでしょう。
Q3. 子どもが悪寒で震えているときはどうすればいいですか?
A. 子どもが悪寒で震えているときは、以下の対応をしてください：
- 衣服や布団で体を温める
- 室温を適切に保つ
- 水分補給を心がける
- 体温を測定する
- 全身状態を観察する
ただし、以下の場合はすぐに医療機関を受診してください：
- 生後3か月未満の乳児
- けいれんを起こしている
- 意識がもうろうとしている
- 呼吸が苦しそう
- ぐったりしている
Q4. 悪寒は何日くらい続きますか?
A. 悪寒自体は、体温が上昇する過程で起こるため、通常は数時間から半日程度で治まることが多いです。その後は発熱期に移行します。ただし、感染症によっては発熱と悪寒を繰り返すことがあり、その場合は病気が治るまで間欠的に悪寒が続くこともあります。悪寒が3日以上続く場合や、繰り返す場合は医療機関を受診しましょう。
Q5. 悪寒があるときに食事は摂った方がいいですか?
A. 食欲がない場合は無理に食べる必要はありませんが、可能であれば少量でも栄養を摂ることが望ましいです。以下のようなものがおすすめです：
- おかゆ
- うどん
- スープ
- ゼリー
- バナナなどの果物
最も重要なのは水分補給です。経口補水液や白湯などで、こまめに水分を摂りましょう。
Q6. 悪寒があっても仕事や学校に行ってもいいですか?
A. いいえ、悪寒があるときは感染症の可能性が高いため、仕事や学校は休んで安静にすることが推奨されます。無理をすると症状が悪化するだけでなく、周囲の人に感染を広げる可能性もあります。特にインフルエンザなどの感染症が流行している時期は、他の人への配慮も大切です。
Q7. 高齢者の悪寒は注意が必要ですか?
A. はい、高齢者の悪寒には特に注意が必要です。高齢者は免疫機能が低下しているため、感染症が重症化しやすく、敗血症などの重篤な状態に進行するリスクが高くなります。また、高齢者では発熱や悪寒などの典型的な症状が出にくいこともあるため、元気がない、食欲がないなどの非特異的な症状にも注意が必要です。高齢者に悪寒や発熱がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
Q8. 妊娠中に悪寒がある場合はどうすればいいですか?
A. 妊娠中の悪寒や発熱は、母体と胎児の両方に影響を与える可能性があるため、早めに産婦人科を受診することが重要です。自己判断で解熱鎮痛薬を使用せず、必ず医師に相談してください。妊娠中でも使用できる薬剤がありますので、適切な診断と治療を受けましょう。
Q9. 悪寒を繰り返すのですが、どんな病気が考えられますか?
A. 悪寒を繰り返す場合、以下のような疾患が考えられます：
- 慢性感染症（結核、尿路感染症など）
- マラリア（海外渡航歴がある場合）
- 膠原病（全身性エリテマトーデス、リウマチなど）
- 悪性腫瘍（リンパ腫、白血病など）
- 膿瘍（体内に膿がたまっている）
繰り返す悪寒は重篤な疾患のサインである可能性もあるため、必ず医療機関を受診して原因を調べてもらいましょう。
Q10. 夏なのに悪寒があるのですが、どうしてですか?
A. 夏でも感染症にかかれば悪寒が起こります。実際、夏には以下のような感染症が流行することがあります：
- 夏風邪（アデノウイルス、エンテロウイルスなど）
- 咽頭結膜熱（プール熱）
- 手足口病
- ヘルパンギーナ
- 食中毒による胃腸炎
また、冷房が効いた室内と暑い屋外を行き来することで体温調節がうまくいかず、体調を崩すこともあります。夏でも悪寒があれば、適切に対処し、必要に応じて医療機関を受診しましょう。
まとめ
悪寒は、体が病原体と闘うために体温を上げようとしているサインです。多くの場合は感染症によって引き起こされますが、時には重篤な疾患の前触れとなることもあります。
悪寒を感じたときは、まず体を温めて水分を補給し、十分な休養を取ることが大切です。しかし、高熱が続く、意識障害がある、呼吸困難があるなどの症状がある場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
日頃から手洗いや予防接種などの感染症対策を行い、バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけることで、免疫力を維持し、悪寒を伴う感染症のリスクを減らすことができます。
悪寒は体からの重要なメッセージです。その意味を正しく理解し、適切に対処することで、健康を守りましょう。
参考文献
- 厚生労働省「インフルエンザQ&A」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
- 厚生労働省 公式サイト https://www.mhlw.go.jp/
- 日本呼吸器学会 公式サイト https://www.jrs.or.jp/
- 日本感染症学会「感染症診療の手引き」
- 日本救急医学会「救急診療指針」
- 日本内科学会「内科診療ガイドライン」
- 国立感染症研究所「感染症情報」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務