はじめに
美容や健康に関心のある方なら、「トラネキサム酸」という成分を耳にしたことがあるかもしれません。シミや肝斑の改善、美白効果が期待できる成分として、内服薬やスキンケア製品に広く使用されています。また、出血を抑える働きもあることから、医療現場でも様々な場面で活用されている医薬品です。
しかし、トラネキサム酸を服用した方の中には「頭痛が起きた」という経験をされる方もいらっしゃいます。この頭痛は本当にトラネキサム酸と関係があるのでしょうか。また、頭痛が起きた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
本記事では、トラネキサム酸の基本的な知識から、その効果、副作用としての頭痛について、そして安全に使用するための注意点まで、詳しく解説していきます。トラネキサム酸の使用を検討されている方、すでに使用中で頭痛が気になる方にとって、有益な情報となれば幸いです。

トラネキサム酸とは
基本的な特徴
トラネキサム酸(Tranexamic Acid)は、人工的に合成されたアミノ酸の一種です。1960年代に日本で開発され、当初は止血剤として医療現場で使用されてきました。化学式はC8H15NO2で、白色の結晶性の粉末として存在します。
この成分の最大の特徴は、「抗プラスミン作用」を持つことです。プラスミンとは、体内で血液を溶かす働きをする酵素のことで、トラネキサム酸はこのプラスミンの働きを抑制することで、出血を止めたり、炎症を抑えたりする効果を発揮します。
医療における位置づけ
日本では、トラネキサム酸は医療用医薬品として厚生労働省に承認されており、様々な適応症で使用されています。内服薬だけでなく、注射薬や外用薬としても利用されており、医療現場では非常に汎用性の高い薬剤として認識されています。
また、一定量以下のトラネキサム酸を含む製品は、OTC医薬品(一般用医薬品)や医薬部外品としても販売されており、ドラッグストアなどで購入することも可能です。
開発の歴史
トラネキサム酸は1962年に第一製薬株式会社(現在の第一三共株式会社)の研究者によって開発されました。当初は手術時の出血を抑える目的で使用されていましたが、その後の研究により、様々な疾患に対する有効性が確認され、適応範囲が拡大してきました。
特に近年では、美容皮膚科領域における肝斑治療への効果が注目され、内服薬として広く処方されるようになっています。
トラネキサム酸の主な効果
止血作用
トラネキサム酸の最も基本的な作用は止血効果です。プラスミンという血液を溶かす酵素の働きを抑えることで、血液が固まりやすくなり、出血を止める作用があります。
医療現場では以下のような場面で使用されます:
手術時の異常出血の予防や治療に用いられます。特に心臓手術や整形外科手術など、出血のリスクが高い手術では重要な役割を果たします。
外傷による出血の治療にも使用されます。交通事故などによる大量出血の際には、注射薬として投与されることがあります。
抜歯後の止血や、歯科治療における出血管理にも利用されています。血友病などの出血傾向がある患者さんの歯科治療では特に重要です。
月経過多の治療にも応用されています。月経時の出血量が多い女性に対して、出血量を減少させる目的で処方されることがあります。
抗炎症作用
トラネキサム酸には、炎症を抑える作用もあります。プラスミンは炎症反応にも関与しているため、その働きを抑えることで炎症を軽減できます。
この作用により、以下のような症状の改善に使用されます:
湿疹や蕁麻疹などの皮膚炎症の改善に効果があります。特に炎症による赤みやかゆみを軽減する目的で使用されることがあります。
口内炎や咽頭炎など、粘膜の炎症にも効果が期待できます。口腔内の痛みや腫れを和らげる効果があります。
アレルギー性の炎症症状の緩和にも用いられます。花粉症などのアレルギー症状に対しても、補助的な治療として使用されることがあります。
美白・肝斑改善効果
近年、美容皮膚科領域で特に注目されているのが、トラネキサム酸の美白効果と肝斑改善効果です。この効果は止血作用とは異なるメカニズムで発揮されます。
肝斑とは、主に30代から50代の女性の頬や額などに左右対称に現れる褐色のシミのことです。女性ホルモンの変動や紫外線、摩擦などが原因で発生すると考えられています。
トラネキサム酸は以下のメカニズムで肝斑を改善します:
メラノサイト(色素細胞)の活性化を抑制します。紫外線などの刺激により活性化したメラノサイトが過剰にメラニン色素を産生するのを防ぎます。
プラスミンの働きを抑えることで、メラニン生成に関わる情報伝達物質の産生を減少させます。プラスミンはメラノサイトを活性化させる物質の産生に関与しているため、これを抑えることでメラニン生成を抑制できます。
炎症を抑えることで、炎症後色素沈着を予防・改善します。皮膚の炎症はメラニン生成を促進するため、炎症を抑えることで色素沈着を防ぐことができます。
厚生労働省は、トラネキサム酸の肝斑改善効果を認めており、適応症として承認しています。臨床試験では、8週間の内服で約40〜50%の患者さんに改善が見られたという報告もあります。
その他の効果
トラネキサム酸には、上記以外にも様々な効果が報告されています:
扁桃炎や咽頭炎などの上気道炎症の改善に効果があります。のどの痛みや腫れを軽減する作用があります。
血管性紫斑病など、出血傾向を伴う疾患の治療に使用されます。
遺伝性血管性浮腫という、突然顔や手足が腫れる病気の発作予防にも用いられます。
トラネキサム酸と頭痛の関係
副作用としての頭痛
トラネキサム酸を服用した際に起こりうる副作用の一つとして、頭痛が報告されています。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の添付文書情報によれば、トラネキサム酸の副作用として頭痛が記載されています。
ただし、頭痛の発生頻度は比較的低いとされています。臨床試験や市販後調査のデータでは、頭痛の発生率は全体の1〜5%未満程度と報告されています。つまり、100人がトラネキサム酸を服用した場合、頭痛を経験するのは1〜5人程度ということになります。
頭痛の特徴
トラネキサム酸による頭痛には、以下のような特徴があると報告されています:
多くの場合、軽度から中等度の頭痛です。日常生活に大きな支障をきたすほどの激しい頭痛は比較的まれです。
頭全体が重く感じる、締め付けられるような感覚を伴うことが多いです。これは緊張型頭痛に似た症状です。
服用開始後、数日から1〜2週間程度で出現することが多いです。服用を続けているうちに自然に軽快することもあります。
個人差が大きく、全く頭痛を感じない人もいれば、服用のたびに頭痛を感じる人もいます。
頭痛が起こるメカニズム
トラネキサム酸の服用によって頭痛が起こる正確なメカニズムは、完全には解明されていません。しかし、いくつかの仮説が提唱されています:
血液凝固系への影響:トラネキサム酸は血液を固まりやすくする作用があります。この作用により、脳血管の血流に微妙な変化が生じ、頭痛を引き起こす可能性が考えられています。ただし、通常の治療用量では血栓症のリスクは非常に低いとされています。
血管収縮作用:トラネキサム酸が血管に対して収縮作用を持つ可能性が示唆されています。血管が収縮することで頭痛が引き起こされる可能性があります。
神経系への直接作用:トラネキサム酸がGABA受容体など、脳内の神経伝達物質に影響を与える可能性が研究されています。これにより、頭痛などの神経症状が現れる可能性があります。
個人の体質:薬物に対する感受性は個人差が大きく、同じ量を服用しても副作用の出方は人によって異なります。特に、もともと片頭痛などの頭痛持ちの方は、トラネキサム酸によって頭痛が誘発されやすい可能性があります。
頭痛以外の副作用
トラネキサム酸を服用した際には、頭痛以外にも以下のような副作用が報告されています:
消化器症状:吐き気、食欲不振、胃部不快感、下痢などが起こることがあります。これらは比較的よく見られる副作用です。
皮膚症状:発疹、かゆみなどのアレルギー症状が現れることがあります。
眠気やめまい:中枢神経系への作用により、眠気やめまいを感じることがあります。
月経異常:女性の場合、月経周期が変化したり、月経量が変わったりすることがあります。
色覚異常:まれに色の見え方が変わることがあります。これは通常、服用を中止すれば改善します。
重篤な副作用としては、非常にまれですが、血栓症(血管内に血の塊ができる病気)や痙攣などが報告されています。これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診する必要があります。
頭痛が出た場合の対処法
まずは医師に相談
トラネキサム酸を服用して頭痛が出た場合、最も重要なのは自己判断せず、処方した医師に相談することです。頭痛の程度、頻度、持続時間などを詳しく伝えることで、適切な対応を受けることができます。
医師は以下のような対応を検討します:
服用量の調整:1回の服用量を減らしたり、服用回数を変更したりすることで、頭痛が軽減する可能性があります。
服用方法の変更:食後に服用することで胃腸への負担が減り、それに伴って頭痛も軽減することがあります。
服用の一時中止:頭痛が強い場合や、日常生活に支障をきたす場合は、一時的に服用を中止することもあります。
代替治療の検討:トラネキサム酸以外の治療法があれば、そちらに変更することも選択肢の一つです。
セルフケアでできること
医師の指導の下、以下のようなセルフケアを行うことで、頭痛を和らげることができる場合があります:
十分な水分補給:脱水は頭痛を悪化させる要因の一つです。こまめに水分を摂取することが大切です。1日1.5〜2リットル程度の水分摂取を目安にしましょう。
規則正しい生活:睡眠不足やストレス、不規則な食事は頭痛を誘発・悪化させます。十分な睡眠時間を確保し、バランスの良い食事を心がけましょう。
リラックス法の実践:深呼吸や軽いストレッチ、瞑想などでリラックスすることで、緊張型頭痛が軽減することがあります。
頭痛の記録:いつ、どのような状況で頭痛が起こるかを記録しておくと、パターンが見えてくることがあります。これは医師に相談する際にも有用な情報となります。
カフェインの適度な摂取:カフェインには血管収縮作用があり、頭痛を和らげる効果がある場合があります。ただし、過剰摂取は逆効果になるため注意が必要です。
冷却または温熱療法:頭痛のタイプによって、冷やすのが効果的な場合と温めるのが効果的な場合があります。自分に合った方法を見つけることが大切です。
市販の鎮痛薬との併用について
頭痛が辛い場合、市販の鎮痛薬(痛み止め)を使いたくなるかもしれません。しかし、自己判断で鎮痛薬を使用する前に、必ず医師や薬剤師に相談することが重要です。
トラネキサム酸と鎮痛薬の併用に関して、注意すべき点があります:
相互作用の可能性:薬同士の相互作用により、効果が強く出すぎたり、逆に弱くなったりする可能性があります。
原因の特定:安易に鎮痛薬で症状を抑えてしまうと、頭痛の真の原因や重症度を見極めることが難しくなります。
薬物乱用頭痛のリスク:鎮痛薬を頻繁に使用しすぎると、かえって頭痛が慢性化する「薬物乱用頭痛」という状態になる可能性があります。
一般的には、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの一般的な鎮痛薬は、医師の指導の下であれば併用可能な場合が多いですが、必ず事前に相談してください。
こんな場合は緊急受診を
以下のような症状が現れた場合は、トラネキサム酸による重篤な副作用の可能性があるため、直ちに医療機関を受診してください:
突然の激しい頭痛:今まで経験したことのないような激しい頭痛が突然起こった場合
神経症状を伴う頭痛:しびれ、麻痺、言語障害、視覚障害などを伴う場合
意識障害:意識がもうろうとする、ぼんやりするなどの症状がある場合
胸痛や呼吸困難:血栓症の可能性を示唆する症状
片側の手足の痛みや腫れ:深部静脈血栓症の可能性
これらの症状は、非常にまれですが重篤な副作用のサインである可能性があります。速やかな医療対応が必要です。
トラネキサム酸服用時の注意点
服用してはいけない人
トラネキサム酸は、以下のような方は服用できません:
血栓症のある方、または血栓症の既往歴がある方:トラネキサム酸は血液を固まりやすくする作用があるため、血栓症のリスクを高める可能性があります。脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症などの既往がある方は服用できません。
腎機能が著しく低下している方:トラネキサム酸は主に腎臓から排泄されるため、腎機能が低下していると体内に蓄積し、副作用のリスクが高まります。
トラネキサム酸に対して過敏症(アレルギー)の既往がある方:過去にトラネキサム酸を使用してアレルギー反応が出たことがある方は使用できません。
慎重に使用すべき人
以下のような方は、医師と十分に相談の上、慎重に使用する必要があります:
血栓症のリスク因子を持つ方:高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙習慣、肥満などがある方は、血栓症のリスクが高まる可能性があります。
経口避妊薬(ピル)を服用している方:ピルも血栓症のリスクを高める可能性があるため、併用には注意が必要です。
高齢者:一般的に高齢者は腎機能が低下していることが多く、副作用が出やすい傾向があります。
腎機能が低下している方:軽度から中等度の腎機能低下がある場合は、用量調整が必要になることがあります。
心臓病のある方:特に不整脈や弁膜症などがある方は注意が必要です。
妊娠・授乳中の使用
妊娠中の使用:動物実験では胎児への明らかな影響は報告されていませんが、妊婦または妊娠している可能性のある方への使用は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみとされています。特に妊娠初期の使用には慎重を期す必要があります。
授乳中の使用:トラネキサム酸は母乳中に移行することが知られています。授乳中の方が服用する場合は、医師と相談の上、授乳の継続または中止を判断する必要があります。一般的には、治療の必要性が高い場合は授乳を中止することが推奨されます。
他の薬との相互作用
トラネキサム酸は、以下のような薬と相互作用を起こす可能性があります:
止血薬:他の止血作用を持つ薬と併用すると、効果が強く出すぎたり、血栓症のリスクが高まったりする可能性があります。
経口避妊薬:前述の通り、血栓症のリスクが高まる可能性があります。
トレチノイン製剤:ニキビ治療などに使われるトレチノイン(レチノイド)と併用すると、血栓症のリスクが高まる可能性があります。
血液凝固因子製剤:血友病などの治療に使われる製剤との併用には注意が必要です。
処方薬だけでなく、市販薬やサプリメント、漢方薬などを使用している場合も、必ず医師や薬剤師に伝えてください。
長期服用時の注意
トラネキサム酸を長期間服用する場合は、以下の点に注意が必要です:
定期的な検査:血液検査などで、肝機能や腎機能、血液凝固能などをチェックすることが推奨されます。
効果の評価:肝斑治療などで使用している場合、定期的に効果を評価し、継続の必要性を検討することが大切です。一般的に、8〜12週間程度使用しても効果が見られない場合は、治療方針の見直しが必要とされています。
休薬期間の設定:医師の判断により、一定期間服用した後に休薬期間を設けることがあります。これは副作用のリスクを減らし、薬の効果を維持するための方法です。
生活習慣の見直し:薬に頼るだけでなく、紫外線対策や適切なスキンケア、バランスの取れた食事、十分な睡眠など、生活習慣の改善も併せて行うことが重要です。
服用方法の基本
トラネキサム酸を安全に、効果的に使用するための基本的な服用方法は以下の通りです:
用法・用量の遵守:医師の指示通りの量を、指示された回数で服用してください。自己判断で増量したり、減量したりすることは避けましょう。
服用のタイミング:一般的には食後の服用が推奨されます。胃への負担を軽減し、消化器症状の副作用を減らすことができます。
飲み忘れた場合:飲み忘れに気づいた時点で、次の服用時間が近くなければ、気づいた時点で1回分を服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は、飲み忘れた分は飛ばして、次回から通常通り服用してください。2回分をまとめて服用することは絶対に避けてください。
保管方法:直射日光や高温多湿を避け、子どもの手の届かない場所に保管してください。
トラネキサム酸の効果を高めるために
紫外線対策の徹底
トラネキサム酸を肝斑や美白目的で服用している場合、その効果を最大限に引き出すためには、紫外線対策が不可欠です。
日焼け止めの使用:SPF30以上、PA+++以上の日焼け止めを毎日使用しましょう。2〜3時間ごとに塗り直すことが理想的です。
日傘や帽子の活用:物理的に紫外線を遮ることも重要です。つばの広い帽子や日傘を活用しましょう。
サングラスの着用:目から入る紫外線もメラニン生成を促進すると言われています。UVカット機能のあるサングラスを着用しましょう。
スキンケアの見直し
摩擦を避ける:肌をこすることは、メラノサイトを刺激し、肝斑を悪化させる原因となります。洗顔やスキンケアの際は、優しく丁寧に行いましょう。
保湿の徹底:乾燥した肌はバリア機能が低下し、外部刺激に弱くなります。十分な保湿を心がけましょう。
刺激の少ない化粧品の選択:アルコールや香料など、刺激の強い成分が含まれる化粧品は避け、敏感肌用の製品を選ぶことをお勧めします。
生活習慣の改善
十分な睡眠:睡眠不足は肌のターンオーバーを乱し、色素沈着を悪化させる可能性があります。1日7〜8時間の睡眠を目標にしましょう。
バランスの良い食事:ビタミンCやビタミンE、抗酸化物質を豊富に含む食品を積極的に摂取しましょう。野菜や果物、ナッツ類などがおすすめです。
ストレス管理:ストレスはホルモンバランスを乱し、肝斑を悪化させる要因となります。適度な運動や趣味の時間を持つなど、ストレス解消法を見つけましょう。
禁煙:喫煙は肌の老化を促進し、美容効果を減少させるだけでなく、血栓症のリスクも高めます。
併用療法の検討
トラネキサム酸の効果をさらに高めるために、医師と相談の上、以下のような治療を併用することもあります:
ビタミンC内服:ビタミンCにはメラニン生成を抑制する作用があり、トラネキサム酸との併用で相乗効果が期待できます。
ハイドロキノン外用:美白効果の高い外用薬であるハイドロキノンを併用することで、より高い効果が期待できます。ただし、使用には医師の指導が必要です。
レーザー治療:トラネキサム酸で肝斑をある程度改善した後、レーザー治療を行うことで、さらなる改善が期待できる場合があります。ただし、肝斑に対するレーザー治療は慎重に行う必要があります。
ケミカルピーリング:古い角質を除去し、肌のターンオーバーを促進することで、色素沈着の改善をサポートします。

よくある質問(FAQ)
A1: 肝斑や美白目的での使用の場合、個人差はありますが、一般的には4〜8週間程度で効果が現れ始めることが多いです。ただし、明らかな改善を実感できるまでには、2〜3ヶ月程度かかることもあります。12週間使用しても効果が見られない場合は、医師と相談して治療方針を見直すことが推奨されます。
A2: いいえ、むしろ逆です。トラネキサム酸は血液を固まりやすくする(止血作用を持つ)薬です。そのため、出血時には血が止まりやすくなります。ただし、この作用により、まれに血栓症のリスクが高まる可能性があるため、血栓症のリスク因子を持つ方は慎重に使用する必要があります。
Q3: トラネキサム酸を飲んでいる間、お酒は飲めますか?
A3: 添付文書上、アルコールとの併用について特別な禁止事項はありません。ただし、アルコールは肝臓に負担をかけ、薬の代謝に影響を与える可能性があります。また、アルコール自体が血管拡張作用を持ち、頭痛を引き起こす可能性もあります。適量にとどめることをお勧めします。美容目的で服用している場合、アルコールは肌にも悪影響を与えるため、控えめにすることが望ましいでしょう。
Q4: トラネキサム酸はシミ全般に効果がありますか?
A4: トラネキサム酸は主に肝斑に対して効果が認められています。老人性色素斑(一般的なシミ)や雀卵斑(そばかす)などに対しては、肝斑ほどの効果は期待できないとされています。ただし、炎症後色素沈着に対しては、抗炎症作用により一定の効果が期待できる場合があります。シミの種類によって適切な治療法が異なるため、まずは医師の診断を受けることが重要です。
Q5: トラネキサム酸を服用すると太りますか?
A5: トラネキサム酸自体には体重を増加させる作用はありません。ただし、個人差により食欲が変化したり、むくみを感じたりする方もいるかもしれません。体重の変化が気になる場合は、医師に相談してください。
Q6: 他のサプリメントと併用できますか?
A6: 一般的なビタミンサプリメントなどは併用可能な場合が多いですが、止血作用や血液凝固に影響を与える可能性のある成分(ビタミンK、ナットウキナーゼなど)を含むサプリメントには注意が必要です。服用しているサプリメントについては、必ず医師や薬剤師に伝えてください。
Q7: トラネキサム酸の服用をやめたら、肝斑は再発しますか?
A7: 残念ながら、トラネキサム酸の服用を中止すると、肝斑が再発する可能性があります。肝斑は慢性的な疾患であり、体質や女性ホルモン、紫外線などの影響を受け続けるためです。そのため、改善後も医師の指導の下、維持療法として低用量での継続や、間欠的な服用を行うことがあります。また、紫外線対策などのスキンケアを継続することが非常に重要です。
Q8: 男性でもトラネキサム酸は使用できますか?
A8: はい、男性でも使用可能です。肝斑は女性に多い疾患ですが、男性でも発症することがあります。また、炎症後色素沈着や止血目的など、他の適応症での使用も可能です。
Q9: 頭痛以外に注意すべき副作用はありますか?
A9: 前述の通り、消化器症状(吐き気、食欲不振など)、皮膚症状(発疹、かゆみ)、眠気、めまいなどが比較的よく見られる副作用です。また、非常にまれですが重篤な副作用として、血栓症、痙攣、アナフィラキシーショックなどが報告されています。異常を感じた場合は、速やかに医師に相談してください。
Q10: トラネキサム酸は市販でも購入できますか?
A10: 一定量以下のトラネキサム酸を含む製品は、第一類医薬品や第二類医薬品として、薬局やドラッグストアで購入できます。また、医薬部外品として化粧品などにも配合されています。ただし、医療用医薬品と比べると配合量が少ないため、効果も限定的です。肝斑などの治療目的であれば、医療機関を受診し、適切な診断と処方を受けることをお勧めします。
まとめ
トラネキサム酸は、止血作用、抗炎症作用、美白効果など、多様な効果を持つ医薬品です。特に肝斑治療においては、厚生労働省に承認された有効な治療薬として、多くの医療機関で使用されています。
一方で、頭痛をはじめとする副作用が起こる可能性もあります。頭痛の発生頻度は比較的低いものの、個人差が大きく、症状の程度も様々です。トラネキサム酸を服用して頭痛が生じた場合は、自己判断せず、必ず処方した医師に相談することが重要です。
多くの場合、用量の調整や服用方法の工夫により、副作用を軽減しながら治療を継続できる可能性があります。また、適切な生活習慣の改善やスキンケアと併せて行うことで、トラネキサム酸の効果をより高めることができます。
トラネキサム酸は正しく使用すれば、安全で効果的な薬です。医師の指導の下、適切に使用することで、肝斑の改善や美白効果を実感できる可能性があります。
アイシークリニック池袋院では、患者様一人ひとりの症状や体質に合わせた適切な治療法をご提案しています。トラネキサム酸の使用に関して不安や疑問がある方、肝斑やシミでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。専門の医師が丁寧に診察し、最適な治療プランをご提案いたします。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしました:
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA) トラネキサム酸の添付文書情報
- 厚生労働省 医薬品・医療機器等安全性情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科診療ガイドライン
- 日本美容皮膚科学会 美容皮膚科診療における標準的治療
- 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 医薬品情報データベース
※本記事の内容は、2025年11月時点での医学的知見に基づいています。医療情報は日々更新されるため、最新の情報については医療機関にご確認ください。また、本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の症状や治療方法については、必ず医師にご相談ください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務