精神的にしんどいと感じたら:診断を受けるべきサインと受診のポイント

はじめに

「最近、なんだか精神的にしんどい」「気持ちが落ち込んで何もやる気が起きない」「漠然とした不安が消えない」——このような感覚を抱えながら、日々を過ごしている方は少なくありません。

現代社会では、仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、将来への不安など、さまざまなストレス要因が存在します。厚生労働省の調査によれば、日本人の約4割が強いストレスを感じながら生活しているという結果も出ています。

しかし、「このくらいの辛さは誰でも経験するもの」「気の持ちようで何とかなる」と考えて、専門家への相談をためらう方も多いのが現状です。精神的な不調は身体の病気と同じように、適切な診断と治療によって改善が期待できます。

この記事では、精神的にしんどいと感じている方が、どのような状態であれば診断を受けるべきか、どこに相談すればよいのか、診断はどのように行われるのかなど、受診に関する疑問や不安を解消できるよう、詳しく解説していきます。

「精神的にしんどい」状態とは

心の不調のさまざまな現れ方

精神的にしんどいと感じる状態は、人によって現れ方が異なります。主に以下のような症状や感覚として表れることがあります。

感情面での変化としては、気分の落ち込み、悲しみや空虚感、イライラや怒りっぽさの増加、不安や心配が止まらない、喜びや楽しみを感じられない、感情が麻痺したような感覚などがあります。

思考面では、集中力の低下、決断できない、物事を悲観的に考えてしまう、自分を責める思考が止まらない、記憶力の低下、頭が働かない感じなどの症状が見られます。

身体面での症状も重要です。睡眠の問題(不眠または過眠)、食欲の変化(食欲不振または過食)、倦怠感や疲労感、頭痛や肩こり、胃腸の不調、動悸や息苦しさ、めまいやふらつきなどが現れることがあります。

行動面の変化としては、外出や人と会うのが億劫になる、趣味や好きだったことに興味が持てない、仕事や学業のパフォーマンス低下、身だしなみへの関心の低下、引きこもりがちになるなどがあります。

一時的な落ち込みと病的な状態の違い

誰でも一時的に気分が落ち込んだり、ストレスを感じたりすることはあります。重要なのは、その状態が一時的なものなのか、それとも持続的で日常生活に支障をきたしているかという点です。

一時的な落ち込みの場合、具体的な原因がはっきりしていることが多く、数日から1〜2週間程度で自然に回復していきます。また、気分転換や休息によって改善が見られることが特徴です。

一方、診断や治療が必要な状態では、症状が2週間以上継続している、明確な原因がなくても不調が続く、休息しても改善しない、日常生活や仕事に明らかな支障が出ている、自分ではコントロールできない感覚があるといった特徴があります。

セルフチェック:受診を検討すべきサイン

以下のチェックリストは、専門家への相談を検討する目安となります。ただし、これは診断ツールではなく、あくまで受診の必要性を判断するための参考です。

気分・感情に関するチェック

  • ほとんど一日中、気分が落ち込んでいる状態が2週間以上続いている
  • 以前は楽しめていたことに興味や喜びを感じられなくなった
  • 理由のない不安や恐怖感が頻繁にある
  • イライラや怒りを抑えられないことが増えた
  • 感情の起伏が激しく、コントロールできない
  • 何もかもが面倒で、何をしても楽しくない

思考・認知に関するチェック

  • 集中力が著しく低下し、仕事や日常生活に支障が出ている
  • 自分は価値がない、生きている意味がないと感じる
  • 将来に希望が持てず、悲観的な考えばかりが浮かぶ
  • 決断することが極端に難しくなった
  • 物忘れが増え、記憶力の低下を感じる
  • 死にたいと思うことがある、または自傷行為を考えたことがある

身体症状に関するチェック

  • 睡眠の問題(寝つけない、途中で目が覚める、朝早く目覚める、寝すぎる)が2週間以上続いている
  • 食欲の大きな変化があり、体重が1ヶ月で5%以上増減した
  • 常に疲れていて、休んでも回復しない
  • 原因不明の身体の痛みや不調が続いている
  • 動悸、息苦しさ、めまいなどが頻繁に起こる
  • 医療機関で検査しても異常が見つからない身体症状がある

日常生活・社会生活に関するチェック

  • 仕事や学業のパフォーマンスが明らかに低下している
  • 人と会うのが怖い、または極端に億劫に感じる
  • 家事や身の回りのことができなくなってきた
  • 外出するのが困難になっている
  • 遅刻や欠勤・欠席が増えた
  • アルコールや薬物に頼るようになった

これらの項目のうち、複数が当てはまり、かつその状態が2週間以上続いている場合は、専門家への相談を強くお勧めします。特に、自傷行為や死にたいという考えがある場合は、緊急性が高いため、すぐに専門機関に相談してください。

精神的な不調の主な原因

精神的にしんどい状態には、さまざまな原因が考えられます。多くの場合、複数の要因が複雑に絡み合っています。

ストレス関連要因

職場でのストレスは、精神的不調の大きな原因の一つです。過重労働、人間関係の問題、役割や責任の増大、職場環境の変化、ハラスメントなどが挙げられます。厚生労働省の「こころの耳」では、職場のメンタルヘルス対策について詳しい情報を提供しています。

家庭やプライベートでは、家族関係の問題、介護の負担、経済的な困難、離婚や別れ、孤独感などが影響します。

人生の転換期に伴うストレスも見逃せません。進学や就職、転職や異動、結婚や出産、引っ越し、親しい人との別れなどは、たとえポジティブな変化であっても大きなストレスとなることがあります。

身体的要因

身体の病気や不調が精神的な症状を引き起こすこともあります。甲状腺機能の異常、ホルモンバランスの乱れ、慢性的な痛みや病気、脳の器質的な問題、栄養不足(特にビタミンB群や鉄分など)、睡眠障害などが関連することがあります。

また、薬の副作用として精神症状が現れる場合もあるため、服用している薬がある場合は医師に相談することが重要です。

心理的・性格的要因

完璧主義的な性格、自己評価が低い、他人の評価を気にしすぎる、感情を表現するのが苦手、ストレス対処が苦手などの傾向がある方は、精神的な不調を抱えやすい傾向があります。

また、過去のトラウマ体験(虐待、事故、災害、重大な喪失体験など)が、現在の精神状態に影響を与えている場合もあります。

生物学的要因

脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)のバランスの乱れ、遺伝的な要因、脳の構造や機能の問題なども、精神的な不調に関与することが分かっています。

環境的要因

季節の変化(特に日照時間の短い冬季)、騒音や光などの環境刺激、社会的なサポートの不足、文化や価値観の違いによるストレスなども影響します。

これらの要因は単独で作用するのではなく、多くの場合、複数の要因が相互に影響し合って精神的な不調を引き起こします。そのため、専門家による包括的な評価が重要となります。

考えられる主な疾患・状態

精神的にしんどいと感じる背景には、さまざまな精神疾患や状態が考えられます。ここでは主なものを紹介しますが、自己判断せず、必ず専門家の診断を受けることが重要です。

うつ病(大うつ病性障害)

うつ病は、気分の落ち込み、興味や喜びの喪失を主な症状とする疾患です。睡眠障害、食欲の変化、疲労感、集中力の低下、自己否定的な思考などを伴います。日本では約15人に1人が生涯に一度はうつ病を経験するといわれています。

厚生労働省のみんなのメンタルヘルスでは、うつ病について詳しい情報が提供されています。

不安症(不安障害)

過度な不安や恐怖が持続し、日常生活に支障をきたす状態です。全般性不安症、パニック症、社交不安症、特定の恐怖症など、いくつかのタイプがあります。動悸、発汗、震え、息苦しさなどの身体症状を伴うこともあります。

適応障害

明確なストレス要因(転職、離婚、引っ越しなど)に対する反応として、抑うつ気分や不安、行動の問題が生じる状態です。ストレス要因が始まってから3ヶ月以内に症状が現れ、ストレス要因がなくなれば6ヶ月以内に改善することが特徴です。

双極性障害(躁うつ病)

気分が高揚する躁状態と、気分が落ち込むうつ状態を繰り返す疾患です。躁状態では、睡眠時間が短くても元気、多弁、活動性の増加、衝動的な行動などが見られます。うつ状態では、うつ病と同様の症状が現れます。

強迫症(強迫性障害)

強迫観念(繰り返し浮かぶ不快な考えやイメージ)と強迫行為(不安を打ち消すための繰り返し行為)を特徴とする疾患です。手洗い、確認行為、整理整頓などの行為に過度な時間を費やし、日常生活に支障をきたします。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)

トラウマとなる出来事(事故、災害、暴力など)を経験した後に、フラッシュバック、悪夢、回避行動、過覚醒状態などが続く疾患です。

自律神経失調症

自律神経のバランスが乱れることで、めまい、動悸、頭痛、胃腸の不調など、さまざまな身体症状が現れる状態です。明確な身体的原因が見つからないことが特徴です。

燃え尽き症候群(バーンアウト)

長期間のストレスや過労により、心身ともに疲弊し、意欲や関心を失った状態です。特に対人援助職や責任の重い仕事に従事している方に見られやすい傾向があります。

その他の状態

季節性情動障害(冬季うつ)、月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)、産後うつ病、更年期障害に伴う精神症状なども、精神的なしんどさの原因となることがあります。

これらの疾患や状態は、症状が重なることも多く、専門家による詳細な問診や検査によって初めて正確な診断が可能となります。

診断を受けるべきタイミング

精神的な不調を感じても、「この程度で病院に行くのは大げさではないか」と躊躇する方は少なくありません。しかし、以下のような状況では、早めに専門家に相談することをお勧めします。

緊急性の高い状態

自殺念慮がある、自傷行為をしている、または衝動的な行動を取りそうになっている場合は、すぐに専門機関に相談する必要があります。かかりつけの医療機関がある場合はすぐに連絡し、ない場合は各都道府県の精神保健福祉センターや、夜間・休日であれば救急外来への受診を検討してください。

また、幻覚や妄想がある、現実との区別がつかなくなっている、極端に興奮している、暴力的になっているなどの場合も、緊急性が高い状態です。

日常生活に明らかな支障が出ている場合

仕事や学業が手につかない、遅刻や欠勤が増えた、家事や身の回りのことができない、人間関係を避けるようになった、外出が困難になったなどの状態が続いている場合は、受診を検討すべきタイミングです。

症状が2週間以上続いている場合

一時的な気分の落ち込みは誰にでもありますが、抑うつ気分や不安などの症状が2週間以上続いている場合は、専門家への相談が推奨されます。特に、症状が徐々に悪化している、または改善の兆しが見られない場合は、早めの受診が重要です。

身体症状が続いているが原因が分からない場合

頭痛、胃腸の不調、動悸、めまい、不眠などの身体症状が続いているにもかかわらず、内科などで検査しても異常が見つからない場合、心因性の可能性があります。このような場合、心療内科や精神科での診察が有効なことがあります。

セルフケアでは改善しない場合

十分な休息を取る、趣味を楽しむ、運動するなど、自分なりのストレス対処法を試しても改善が見られない場合は、専門的な支援が必要なサインかもしれません。

周囲から心配されている場合

家族や友人、同僚などから「最近様子がおかしい」「元気がない」「病院に行ったほうがいいのでは」と心配されている場合、自分では気づいていない変化が起きている可能性があります。周囲の意見にも耳を傾けることが大切です。

アルコールや薬物に頼るようになった場合

不安や不眠を紛らわせるためにアルコールの量が増えた、市販の睡眠薬や鎮痛剤を規定量以上に服用しているなどの場合は、依存のリスクもあるため、早急に専門家に相談すべきです。

早期に適切な診断と治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、早期回復につながります。「この程度で」と躊躇せず、気になる症状があれば専門家に相談することをお勧めします。

どこに相談すればよいか

精神的な不調を感じたとき、どこに相談すればよいのか迷う方も多いでしょう。相談先にはいくつかの選択肢があります。

精神科

精神科は、うつ病、不安症、統合失調症、双極性障害など、精神疾患全般を専門とする診療科です。薬物療法を中心に、必要に応じて精神療法も行います。重度の精神疾患から軽度の不調まで幅広く対応しています。

心療内科

心療内科は、ストレスや心理的な要因によって引き起こされる身体症状を主に扱う診療科です。頭痛、胃腸の不調、動悸など、身体症状が主訴の場合に適しています。心身症、自律神経失調症、軽度のうつ状態などに対応します。

精神科と心療内科は重なる部分も多く、最近では両方を標榜しているクリニックも増えています。どちらを受診すべきか迷う場合は、電話で相談してみるとよいでしょう。

メンタルクリニック・こころのクリニック

精神科や心療内科を標榜しているクリニックで、より通いやすい雰囲気を作るために「メンタルクリニック」「こころのクリニック」などの名称を使用していることがあります。診療内容は精神科・心療内科と同様です。

かかりつけ医・内科

普段から通っている内科などのかかりつけ医がいる場合、まずそこで相談するのも一つの方法です。必要に応じて専門医を紹介してもらえますし、身体的な原因の有無を確認することもできます。

総合病院の精神科

より重度の症状や、身体疾患との関連が疑われる場合、総合病院の精神科を受診する選択肢もあります。入院設備がある場合も多く、包括的な医療を受けることができます。ただし、初診は紹介状が必要な場合があります。

公的な相談窓口

受診をためらう場合や、まずは話を聞いてもらいたい場合、以下のような公的な相談窓口を利用することもできます。

精神保健福祉センターは、各都道府県・指定都市に設置されている公的機関で、こころの健康に関する相談を無料で受け付けています。

保健所・保健センターでも、精神保健に関する相談を受け付けており、必要に応じて医療機関を紹介してもらえます。

よりそいホットライン(0120-279-338)は、24時間365日、無料で電話相談を受け付けている窓口です。

こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)は、全国共通の電話番号で、各都道府県の相談窓口につながります。

いのちの電話は、自殺予防を目的とした電話相談を行っています。

職場や学校の相談窓口

会社に産業医や保健師がいる場合、まずそこで相談するのも有効です。休職の必要性なども含めて相談できます。

学生の場合、大学の学生相談室やカウンセリングセンターを利用できることがあります。

オンライン診療

最近では、精神科・心療内科でもオンライン診療を行っているところが増えています。初診からオンラインで対応しているクリニックもあり、通院が難しい方や、対面での受診に抵抗がある方にとって選択肢の一つとなっています。ただし、症状によっては対面診療が必要な場合もあります。

相談先を選ぶ際は、通いやすさ、診療時間、医師との相性なども考慮するとよいでしょう。初めての受診で不安な場合は、事前に電話で相談内容を伝え、対応可能か確認することをお勧めします。

受診前の準備

精神科や心療内科を初めて受診する際、事前に準備をしておくことで、より効果的な診察を受けることができます。

症状のメモを作成する

いざ診察室に入ると緊張して、伝えたいことをうまく話せないことがあります。事前に以下の内容をメモしておくとよいでしょう。

いつ頃から症状が始まったか、どのような症状があるか(気分、思考、身体症状、行動の変化など)、症状がどのように変化しているか(悪化、改善、波がある)、症状が特にひどい時間帯や状況はあるか、日常生活への影響(仕事、家事、人間関係など)はどの程度か、きっかけと思われる出来事はあるかなどを整理しておきます。

過去の病歴・現在の服薬状況を整理する

過去にかかった病気、現在治療中の病気、現在服用している薬(市販薬やサプリメントも含む)、薬のアレルギーの有無、過去の手術歴などの情報は、診断や治療方針を決める上で重要です。お薬手帳がある場合は持参しましょう。

家族歴の確認

精神疾患には遺伝的な要因が関与することもあるため、家族に精神疾患の既往がある場合は伝えることが有用です。

生活習慣の記録

睡眠時間と睡眠の質、食事の内容と回数、飲酒量と頻度、喫煙の有無、運動習慣、カフェインの摂取量などの情報も、診断の参考になります。可能であれば、受診前1〜2週間の記録があるとよいでしょう。

質問したいことをリストアップする

病名について知りたいこと、治療方法について、薬の副作用について、仕事や学校との両立について、治療期間の見通しなど、医師に聞きたいことを事前にリストアップしておくと、聞き忘れを防げます。

受診に対する不安や希望を整理する

「薬は飲みたくない」「できるだけ早く職場復帰したい」「まずは話を聞いてもらいたい」など、自分の希望や不安を正直に伝えることも大切です。

付き添いの検討

一人で受診することが不安な場合、家族や信頼できる友人に付き添ってもらうのも一つの方法です。ただし、診察室に一緒に入るかどうかは、事前に医療機関に確認しましょう。

必要な持ち物の確認

健康保険証、診察券(再診の場合)、お薬手帳、紹介状(ある場合)、作成したメモ類を忘れずに持参しましょう。

予約の確認

多くの精神科・心療内科では予約制を取っています。初診の場合、時間がかかることが多いため、時間に余裕を持って予約しましょう。また、予約時間の確認や、遅れる場合の連絡先も確認しておきます。

準備をしっかり行うことで、限られた診察時間を有効に使い、医師との信頼関係を築く第一歩となります。

診断の流れ

精神科や心療内科での診断は、主に問診を中心に行われます。一般的な診察の流れを説明します。

初診時の流れ

受付では、問診票の記入を求められることが多いです。症状、既往歴、家族歴、現在の生活状況などを記入します。事前に準備したメモがあれば、スムーズに記入できます。

待合室では、順番が来るまで待ちます。初診の場合、30分〜1時間程度待つこともあります。リラックスして待ちましょう。

診察室では、医師との問診が行われます。初診の場合、30分〜1時間程度かかることが一般的です。

問診の内容

医師は以下のようなことを尋ねます。

主訴として、今一番困っていること、受診のきっかけを聞かれます。

現在の症状について、いつ頃から始まったか、どのような症状があるか、症状の程度や頻度、症状による生活への影響などを詳しく聞かれます。

症状の経過では、症状がどのように変化してきたか、きっかけとなる出来事はあったか、これまでに試した対処法とその効果などについて質問されます。

過去の病歴・治療歴として、これまでにかかった病気、過去の精神科・心療内科の受診歴、服用している薬、アレルギーの有無などを確認されます。

生活状況については、家族構成、住居環境、仕事や学校の状況、人間関係、経済状態、生活習慣(睡眠、食事、運動、飲酒、喫煙など)などを聞かれます。

家族歴では、家族に精神疾患の既往がある人がいるか確認されることがあります。

これまでのストレスや出来事として、最近あった大きな出来事、慢性的なストレス要因、トラウマとなるような経験の有無などを尋ねられます。

精神状態の評価

問診の中で、医師は以下のような点も観察・評価しています。

外見や態度(身だしなみ、表情、態度など)、話し方(声の大きさ、速さ、まとまり具合など)、気分や感情(抑うつ、不安、興奮など)、思考の内容(悲観的思考、妄想の有無など)、認知機能(記憶、集中力、判断力など)、自殺念慮の有無などを総合的に評価します。

心理検査

必要に応じて、心理検査が行われることがあります。うつ病や不安症のスクリーニング質問票、性格検査、知能検査、認知機能検査などです。これらは診断の補助として用いられます。

身体的検査

身体疾患が精神症状の原因となっている可能性を除外するため、血液検査、甲状腺機能検査、脳波検査、画像検査(CT、MRIなど)などが行われることがあります。ただし、初診時に全ての検査を行うわけではなく、必要に応じて追加で検査が行われます。

診断

問診や検査の結果を総合的に判断して、診断が行われます。ただし、初診時に確定診断がつかない場合もあります。経過を見ながら診断を確定していくこともあります。

診断基準としては、国際的に使用されている診断基準(DSM-5やICD-11など)に基づいて診断が行われます。

治療方針の説明

診断に基づいて、治療方針が説明されます。薬物療法の必要性と使用する薬について、精神療法やカウンセリングについて、生活指導や環境調整について、治療の見通しや期間について、通院の頻度などが説明されます。

疑問や不安があれば、遠慮なく質問しましょう。治療は医師と患者の協力によって進められるものです。

次回の予約

通常、次回の診察日を決めて初診は終了します。初期の段階では、1〜2週間後に再診することが多いです。

診察後は、処方箋が出された場合、薬局で薬を受け取ります。薬の飲み方や注意点について、薬剤師の説明をよく聞きましょう。

診断を受けることは、治療への第一歩です。正直に、ありのままの状態を伝えることが、適切な診断と治療につながります。

主な治療方法

精神的な不調に対する治療は、症状や診断によって異なりますが、主に以下のような方法があります。多くの場合、複数の治療法を組み合わせて行われます。

薬物療法

薬物療法は、脳内の神経伝達物質のバランスを整えることで症状を改善する方法です。主な薬剤には以下のようなものがあります。

抗うつ薬は、うつ病や不安症などに用いられます。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが一般的です。効果が現れるまでに2〜4週間かかることがあります。

抗不安薬は、不安症やパニック症などに用いられます。即効性がありますが、長期使用には注意が必要です。

睡眠薬は、不眠症状に対して使用されます。一時的な使用が基本で、長期使用は避けることが望ましいとされています。

気分安定薬は、双極性障害などに用いられます。

抗精神病薬は、統合失調症などに主に用いられますが、少量で他の疾患にも使用されることがあります。

薬物療法の注意点として、自己判断で服用を中止しない、副作用が気になる場合は医師に相談する、他の薬との飲み合わせに注意する、効果が出るまで時間がかかる場合があることを理解する、定期的な血液検査が必要な薬もあることなどが挙げられます。

精神療法(心理療法)

精神療法は、対話を通じて問題の理解を深め、対処法を学ぶ治療法です。

認知行動療法(CBT)は、考え方(認知)や行動のパターンを変えることで症状を改善する方法です。うつ病、不安症、強迫症などに効果的です。

対人関係療法(IPT)は、人間関係のパターンに焦点を当てた治療法で、うつ病に有効とされています。

精神分析的精神療法は、無意識の葛藤や過去の体験を探る治療法です。

支持的精神療法は、共感的な支持を通じて自己理解を深める治療法です。

マインドフルネス認知療法は、瞑想的な技法を取り入れた治療法で、再発予防に効果があるとされています。

環境調整

ストレス要因を軽減するための環境調整も重要な治療の一部です。

職場では、業務量の調整、配置転換、休職などが検討されることがあります。産業医や人事部との連携が重要です。

家庭環境の調整として、家族の理解と協力を得る、家事の負担を軽減する、生活リズムを整えるなどが挙げられます。

学校では、学業の負担調整、カウンセラーとの連携などが行われます。

休養

症状が重い場合、十分な休養が必要です。場合によっては、休職や休学が推奨されることもあります。休むことは「逃げ」ではなく、回復のために必要な治療の一部です。

生活習慣の改善

規則正しい生活リズム、適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠、アルコールやカフェインの制限などが、症状の改善に役立ちます。

その他の治療法

重症のうつ病などに対して、電気けいれん療法(ECT)、経頭蓋磁気刺激療法(TMS)などの専門的な治療が行われることもあります。

デイケアやリワークプログラムなど、社会復帰を支援するプログラムもあります。

治療は個人によって効果が異なるため、医師と相談しながら、自分に合った治療法を見つけていくことが大切です。また、治療には時間がかかることが多いため、焦らず継続することが重要です。

日常生活でできるセルフケア

専門的な治療と並行して、日常生活でできるセルフケアも症状の改善や予防に役立ちます。ただし、これらはあくまで補助的な方法であり、症状が重い場合は必ず専門家の治療を受けることが優先です。

生活リズムを整える

規則正しい生活リズムは、心の健康の基盤となります。毎日同じ時間に起床・就寝する、朝は太陽の光を浴びる、日中は活動的に過ごすなどを心がけましょう。

睡眠の質を高めるために、就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控える、寝室を快適な環境に整える(暗さ、温度、静けさ)、寝る前のカフェインやアルコールを避ける、昼寝は15〜20分程度に留めるなどが効果的です。

適度な運動

運動は抗うつ効果があることが多くの研究で示されています。ウォーキング、ジョギング、ヨガ、ストレッチなど、自分に合った運動を見つけましょう。1日30分程度、週に3〜5回の運動が理想的ですが、無理のない範囲で続けることが大切です。

バランスの取れた食事

栄養不足は精神状態に影響します。特に、ビタミンB群、ビタミンD、オメガ3脂肪酸、トリプトファン(セロトニンの材料)などが不足しないよう心がけましょう。

3食を規則正しく摂る、極端なダイエットを避ける、加工食品や糖分の過剰摂取を控える、水分を十分に摂るなども重要です。

ストレス対処法を身につける

リラクゼーション法として、深呼吸、腹式呼吸、漸進的筋弛緩法、瞑想やマインドフルネスなどを実践してみましょう。

趣味や楽しい活動として、音楽を聴く、読書、散歩、ガーデニング、創作活動など、自分が楽しめることを見つけて取り入れます。ただし、「楽しまなければ」とプレッシャーに感じる必要はありません。

日記をつけることも有効です。感情や考えを書き出すことで、自分の状態を客観的に見ることができます。

社会的なつながりを保つ

孤立は精神的健康に悪影響を与えます。家族や友人との交流、趣味のサークルやコミュニティへの参加、必要に応じて自助グループやサポートグループへの参加なども検討しましょう。ただし、無理に人と会う必要はなく、自分のペースで大丈夫です。

アルコールや薬物を避ける

アルコールは一時的に気分を紛らわせても、長期的には症状を悪化させます。また、市販薬の乱用も避けましょう。

完璧主義を手放す

「〜すべき」「〜でなければならない」という考えを緩め、「できる範囲でよい」「70点でも十分」という柔軟な考え方を意識してみましょう。

情報のコントロール

ネガティブなニュースやSNSの過度な利用は、精神的な負担となることがあります。情報との付き合い方を見直し、必要に応じてデジタルデトックスを取り入れましょう。

自分に優しくする

自分を責めたり、厳しく評価したりせず、自分自身に思いやりを持つことが大切です。「今の自分にできることをする」という姿勢を心がけましょう。

小さな目標を設定する

大きな目標はプレッシャーになることがあります。「今日は10分散歩する」「好きな音楽を1曲聴く」など、達成可能な小さな目標から始めましょう。

これらのセルフケアは、すべてを一度に実践する必要はありません。自分に合うものを一つずつ試し、続けられるものを見つけていくことが大切です。また、セルフケアで改善が見られない場合は、専門家への相談をためらわないでください。

治療を受ける上での心構え

精神的な不調の治療は、身体の病気とは異なる面もあります。治療を効果的に進めるための心構えについて説明します。

治療には時間がかかることを理解する

精神的な不調は、短期間で完全に治るものではありません。薬の効果が出るまでに数週間かかることもありますし、症状が改善するまでには数ヶ月から数年かかることもあります。焦らず、長期的な視点で治療に取り組むことが大切です。

良くなったり悪くなったりを繰り返す

治療の経過は一直線ではなく、波があります。良くなったと思ったら悪くなることもありますが、これは回復の過程で正常なことです。全体として徐々に改善していれば、順調に回復していると考えてよいでしょう。

医師との信頼関係を築く

治療の成功には、医師との信頼関係が重要です。疑問や不安があれば遠慮なく質問し、治療方針に納得した上で進めることが大切です。また、症状や副作用について正直に報告することも重要です。

もし医師との相性が合わないと感じたら、セカンドオピニオンを求めたり、医療機関を変えたりすることも選択肢の一つです。

自己判断で治療を中断しない

症状が改善したからといって、自己判断で薬をやめたり、通院を中断したりすると、再発のリスクが高まります。治療の中止や変更は、必ず医師と相談して決めましょう。

家族や周囲の理解と協力を得る

精神的な不調は、周囲の理解が得られにくいこともあります。可能であれば、家族や信頼できる人に状況を説明し、協力を求めましょう。必要に応じて、家族が一緒に医師の説明を聞く機会を設けることも有効です。

「治る」の定義を見直す

「完全に元通りになる」ことだけが治療の目標ではありません。「症状と上手く付き合いながら、自分らしい生活を送れるようになる」ことも立派な回復です。

焦らず、自分のペースで

周囲と比較したり、「もっと頑張らなければ」と自分を追い込んだりする必要はありません。今の自分にできることを、自分のペースで進めていくことが大切です。

再発予防の重要性を理解する

症状が改善した後も、再発を防ぐためのケアは続きます。ストレス管理、規則正しい生活、定期的な通院などを継続することが、長期的な健康につながります。

一人で抱え込まない

困ったときは、医療機関だけでなく、公的な相談窓口、自助グループなど、さまざまなリソースを活用しましょう。一人で抱え込まず、助けを求めることは弱さではなく、強さです。

治療は医師だけが行うものではなく、患者自身が主体的に取り組むものです。医師やその他の専門家の力を借りながら、自分自身の回復に向けて歩んでいくことが大切です。

よくある質問

Q: 精神科を受診すると記録に残りますか?

A: 医療機関を受診した記録は、個人情報として厳重に管理されています。本人の同意なく、勝手に他者に開示されることはありません。ただし、生命保険の加入や更新時に告知が必要になる場合があります。

Q: 薬を飲み始めたらやめられなくなりますか?

A: 適切に使用すれば、多くの精神科の薬は依存性が低いものです。症状が改善すれば、医師の指導のもとで徐々に減量・中止することができます。ただし、自己判断での中止は避け、必ず医師と相談してください。

Q: カウンセリングだけでは治療できませんか?

A: 症状の程度や種類によります。軽度の場合はカウンセリングのみで改善することもありますが、中等度以上の場合は薬物療法との併用が推奨されることが多いです。医師と相談して決めましょう。

Q: 会社に知られたくないのですが

A: 医療機関には守秘義務があり、本人の同意なく会社に情報が伝わることはありません。ただし、休職する場合などは診断書が必要になることがあります。その際も、記載内容について医師と相談できます。

Q: 治療費はどれくらいかかりますか?

A: 保険診療であれば、初診で3,000〜5,000円程度、再診で1,500〜3,000円程度が目安です(3割負担の場合)。薬代は処方内容によって異なります。また、自立支援医療制度を利用すれば、自己負担が1割になります。

Q: どれくらいの期間通院が必要ですか?

A: 症状や診断によって異なります。数ヶ月で改善する場合もあれば、年単位での通院が必要な場合もあります。初期は1〜2週間に1回、症状が安定してくれば月1回程度の通院が一般的です。

Q: 仕事や学校は休むべきですか?

A: 症状の程度によります。重症の場合は休養が必要ですが、軽度であれば働きながら・通学しながら治療することも可能です。医師と相談して決めましょう。

まとめ

精神的にしんどいと感じることは、決して特別なことではありません。多くの人が人生のどこかで経験する、ごく自然なことです。大切なのは、その状態を一人で抱え込まず、適切なタイミングで専門家の力を借りることです。

以下の点を覚えておいてください。

精神的な不調は「気の持ちよう」ではなく、適切な治療で改善できる状態です。症状が2週間以上続いている、日常生活に支障が出ている場合は、受診を検討しましょう。精神科・心療内科のほか、かかりつけ医や公的相談窓口など、相談先は複数あります。診断を受けることは、回復への第一歩です。恥ずかしいことでも、弱いことでもありません。

治療には薬物療法、精神療法、環境調整などがあり、個人に合わせて組み合わせて行われます。治療には時間がかかることがありますが、焦らず継続することが大切です。日常生活でのセルフケアも、症状の改善や予防に役立ちます。一人で抱え込まず、周囲の理解と協力を得ることも重要です。

あなたの苦しみは本物であり、助けを求める権利があります。今この瞬間も、多くの人が同じように悩み、そして回復への道を歩んでいます。勇気を出して一歩を踏み出すことで、新しい未来が開けるかもしれません。

どうか一人で悩まず、あなたの健康と幸せのために、必要な支援を受けてください。

参考文献・参考サイト

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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