やる気が出ない、何もしたくないと感じるあなたへ:原因と対処法を医師が解説

はじめに

「朝起きても何もする気が起きない」「仕事に行きたくない」「趣味も楽しめなくなった」――このような無気力な状態に悩んでいませんか。やる気が出ない、何もしたくないという症状は、誰にでも起こりうる身近な問題です。一時的な疲れであれば休息で回復しますが、こうした状態が長く続く場合は注意が必要です。

現代社会では、仕事のプレッシャー、人間関係のストレス、生活環境の変化など、さまざまな要因が心身に影響を及ぼします。また、無気力な状態の背景には、うつ病や適応障害といった精神疾患、あるいは甲状腺機能低下症などの身体疾患が隠れていることもあります。

本記事では、やる気が出ない、何もしたくないという症状の原因から、考えられる病気、そして具体的な対処法まで、医学的な観点から詳しく解説します。この記事を読むことで、今の自分の状態を理解し、適切な対応を取るための第一歩を踏み出していただければと思います。

やる気が出ない、何もしたくないとは

やる気が出ない、何もしたくないという状態は、医学的には「無気力」や「意欲低下」と表現されます。これは単なる怠けや甘えではなく、心身からの重要なサインである可能性があります。

誰しも一時的に「今日は何もしたくない」と感じることがあります。これは心や体が休息を求めている自然な反応です。しかし、このような状態が数週間から数カ月と長期間続き、日常生活や仕事に支障をきたすようになった場合は、何らかの対処が必要なサインと考えられます。

正常な疲れと病的な無気力の違い

正常な疲れの場合、十分な休息や睡眠をとることで翌日には回復します。週末にゆっくり休んだり、好きなことをしたりすることで、気力を取り戻せるでしょう。

一方、病的な無気力の場合は、休んでも疲れが取れず、以前は楽しめていたことにも興味が湧かなくなります。「休んでいるのに疲れが取れない」「何をしても楽しくない」「朝起きるのがつらい」といった状態が続く場合は、専門家への相談を検討すべきタイミングかもしれません。

やる気が出ない状態の具体的な症状

やる気が出ない、何もしたくない状態では、以下のようなさまざまな症状が現れることがあります。

精神的な症状

  • 気分が沈む、憂うつになる
  • 以前楽しめていた趣味や活動に興味が持てない
  • 何をするにも面倒に感じる
  • 集中力や思考力が低下する
  • 決断することが難しくなる
  • 自分を責めたり、無価値感を感じたりする
  • 将来に希望が持てない
  • イライラしやすくなる
  • 不安や焦りを感じる

身体的な症状

  • 疲れやすい、だるさが続く
  • 睡眠の問題(眠れない、または寝すぎてしまう)
  • 食欲の変化(食欲不振または過食)
  • 頭痛や肩こりが続く
  • めまいや動悸がする
  • 胃腸の不調(便秘、下痢、腹痛など)
  • 原因不明の体の痛み

行動面の変化

  • 朝起きられない、午後まで寝てしまう
  • 出勤や登校の準備ができない
  • 部屋の掃除や整理ができず、散らかったままになる
  • 人と会うのを避けるようになる
  • 遅刻や欠勤が増える
  • 身だしなみに気を使わなくなる

これらの症状が複数当てはまり、2週間以上続いている場合は、何らかの対処が必要な状態と考えられます。

やる気が出ない原因

やる気が出ない、何もしたくないという状態には、さまざまな原因が考えられます。原因は一つではなく、複数の要因が重なっていることも少なくありません。

心理的・環境的要因

ストレスや心の疲労

人間関係のトラブル、仕事上のプレッシャー、過重労働などによって、過度なストレスや心の疲労が蓄積すると、心を守るために無関心になったり意欲が低下したりすることがあります。ストレスは自律神経の乱れも引き起こし、精神的にも身体的にも不安定な状態を招きます。

環境の変化

就職や転職、転居、結婚、妊娠・出産、親の介護など、たとえ本人にとって好ましい出来事(昇進や結婚など)であっても、環境の大きな変化はストレスとなって心身に影響を及ぼすことがあります。新しい環境に適応するには心理的なエネルギーが必要で、それが枯渇すると無気力状態に陥りやすくなります。

目標の喪失や達成後の虚無感

長年追い続けた目標を達成した後や、目標を見失った時に無気力になることがあります。受験生が合格後に陥る無気力(スチューデント・アパシー)、一生懸命頑張ったのに期待した結果を得られなかった後の燃え尽き症候群(バーンアウト)などがこれに該当します。

「頑張っても評価されない」「どれだけやっても認めてもらえない」といった報われない経験が蓄積すると、「どうせ何をやっても無駄だ」と学習性無力感に陥ることもあります。

身体的要因

睡眠不足と慢性疲労

睡眠不足や肉体的な疲労は、やる気の低下や無気力の原因となります。無気力になるとさらに仕事や勉強の効率が悪くなり、それを取り戻そうとして睡眠時間を削る、という悪循環に陥りがちです。

栄養バランスの乱れ

栄養バランスが乱れていると、疲れを感じやすく、やる気が出ない場合があります。三大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)はもちろん、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、鉄、亜鉛などの微量栄養素が不足すると、エネルギー代謝が低下し、疲労感や意欲低下につながります。

特に鉄不足による貧血は、体をめぐる酸素や栄養分の供給が不足し、細胞レベルでのエネルギー代謝が低下するため、疲労感やだるさ、やる気が出ない状態を引き起こします。

生活リズムの乱れ

不規則な生活や昼夜逆転は、体内時計を狂わせ、自律神経のバランスを崩します。自律神経が乱れると、心や体にさまざまな不調をきたし、やる気も出なくなります。

神経伝達物質のバランスの乱れ

私たちの脳内では、アドレナリン、ドーパミン、セロトニンといった神経伝達物質が分泌されています。これらは人の感情や行動を左右し、自律神経にも大きく影響を与えています。

過度なストレスや疲労、自分にとって好ましくない環境が続くと、神経伝達物質のバランスが乱れ、さまざまな精神的・身体的症状を引き起こします。特にセロトニンやノルアドレナリンの減少は、うつ病の発症にも関連していると考えられています。

季節の影響

季節もやる気に影響を与えることがあります。特に日照時間が短い冬季に発症しやすい季節性うつ病(季節性感情障害)では、日光を浴びる時間が少ないことが要因の一つと考えられています。また、梅雨の長雨、真夏の酷暑、台風シーズンの頻繁な気圧の変動なども、体調やメンタルの不調を引き起こし、やる気の低下につながることがあります。

やる気が出ない時に考えられる病気

やる気が出ない、何もしたくないという状態が長く続く場合、以下のような病気が隠れている可能性があります。

うつ病

うつ病は、気分が強く落ち込み憂うつになる、やる気が出ないなどの精神的な症状のほか、眠れない、疲れやすい、体がだるいといった身体的な症状が現れる病気です。

うつ病の診断基準

厚生労働省によれば、うつ病の基本的な症状は以下の通りです。

うつ病の診断基準を満たすための症状は以下の9つから構成されます。

  1. 抑うつ気分(憂うつ、気分が沈む)
  2. 興味・喜びの喪失(何をしても楽しめない)
  3. 体重(食欲)の減少または増加
  4. 不眠または過眠
  5. 精神運動の焦燥または制止
  6. 易疲労感(疲れやすい)
  7. 無価値感・罪責感(自分を責める)
  8. 思考力・集中力の減退
  9. 死への思い(希死念慮)

このうち、(1)抑うつ気分と(2)興味・喜びの喪失の両方、あるいはどちらか一方を必ず含んだうえで、合計で5つ以上の症状がほとんど1日中、ほとんど毎日、2週間以上続いていれば、うつ病の可能性があります。

うつ病の重症度

うつ病は軽症、中等症、重症に分類されます。

軽症うつ病は、診断基準の5項目程度を満たす場合で、苦痛は感じられるものの、対人関係や仕事上の機能障害はわずかな状態です。

中等症は軽症と重症の中間に相当し、重症は診断基準を大幅に超えて満たし、症状はきわめて苦痛で、生活機能が著明に損なわれている状態です。重症の場合、「消えてしまいたい」「死にたい」といった希死念慮が強くなり、入院が必要になることもあります。

うつ病の原因

うつ病の原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的要因に加えて、心理的ストレス、身体的要因(過労、月経、妊娠、身体疾患、薬剤など)が複合的に関与して発症すると考えられています。

厚生労働省の調査によると、気分障害(双極性障害を一部含むが多くはうつ病)の患者数は増加傾向にあり、100人に6人が一生のうちにうつ病を発症するといわれています。

適応障害

適応障害は、明確なストレスによって引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態です。

適応障害の特徴

適応障害の最大の特徴は、ストレスの原因が明確であることです。職場の人間関係、業務上のプレッシャー、学校での問題など、はっきりとしたストレス源が存在します。

診断基準としては以下の点が挙げられます。

  • 明らかなストレス因があり、ストレスを感じてから3カ月以内に症状が出現
  • ストレスにより強い苦痛を感じ、日常生活に支障が出ている
  • うつ病など他の精神疾患の診断基準を満たさない
  • ストレス因から離れると症状が改善し、6カ月以内に回復する

適応障害とうつ病の違い

適応障害はストレスの原因から離れると症状が改善するのに対し、うつ病はストレス因から離れても症状が持続することが多いです。また、適応障害では楽しいことに対して反応がありますが、うつ病では何に対しても楽しめず、常に気分が落ち込んでしまいます。

ただし、適応障害と診断されても、5年後には40%以上の人がうつ病などの診断名に変更されているという報告があり、適応障害は重篤な病気の前段階の可能性もあると考えられています。

無気力症候群

無気力症候群とは、意欲や自発性の低下、感情の起伏が小さくなるといった、日常生活に対して無気力になってしまう状態です。

無気力症候群の種類

スチューデント・アパシーは、受験生が合格後に目標を失い、喪失感とともに陥る無気力状態です。児童の不登校や社会人の出勤困難なども、同様の病理と考えられています。

燃え尽き症候群(バーンアウト)は、一生懸命頑張ったにもかかわらず、期待した結果を得られなかった後に陥る無気力状態です。

これらの状態は一概に病気とは言えませんが、うつ病への移行もあり注意が必要です。

無気力症候群のメカニズム

無気力症候群では、過度のストレスや疲労などによって神経伝達物質のバランスが崩れることを原因として、さまざまな精神的・身体的症状が引き起こされます。

自律神経失調症

自律神経失調症は、ストレスや疲労などによって、交感神経(体を活動モードにする神経)と副交感神経(体を休養モードにする神経)のバランスが崩れることで、さまざまな症状があらわれる状態です。

自律神経失調症の症状

精神的症状としては、やる気が出ない、不安感、イライラ、気分の落ち込みなどがあります。

身体的症状としては、めまい、動悸、頭痛、肩こり、不眠、疲労感、胃腸の不調などが現れます。

自律神経が乱れる原因としては、ストレス、生活リズムの乱れ、睡眠不足などが挙げられます。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気で、やる気が出ない原因となることがあります。

甲状腺機能低下症の症状

全身の代謝が低下するため、疲労感、無気力、体重増加、寒がり、便秘、皮膚の乾燥、むくみなどの症状が現れます。精神症状として、抑うつ気分や集中力の低下も見られることがあります。

甲状腺機能低下症は血液検査で比較的簡単に診断できます。やる気が出ない状態が続く場合、内科で甲状腺の検査を受けることも検討してください。

慢性疲労症候群

慢性疲労症候群は、原因不明の強い疲労感が長期間(6カ月以上)続く病気です。微熱、痛み、リンパ節の腫れなどを伴い、自律神経症状や無気力などの精神症状も生じます。

重症化すると日常の生活にも著しい制限を受けることがあります。十分な休息を取っても疲労が改善せず、通常の活動が困難になるのが特徴です。

その他の内科的疾患

貧血

貧血とは体をめぐる血液の量が足りない状態で、酸素供給が不足すると細胞レベルでのエネルギー代謝が低下します。この結果、疲労感やだるさが生じ、やる気が出ない状態になります。

糖尿病

糖尿病を放置した結果、やる気が出なくなることもあります。血糖値がうまく管理されないと、血液中の糖分が細胞にうまく届かず、細胞がエネルギーを得られなくなるためです。

睡眠時無呼吸症候群

眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気で、睡眠の質が低下します。熟睡できないため、日中の強い眠気や疲労感、集中力の低下、やる気が出ないといった症状が現れます。

新型コロナウイルス感染症の後遺症

新型コロナウイルス感染症の後遺症として、倦怠感や集中力低下が報告されています。東京都のモニタリング会議資料によると、後遺症を疑う症状を感じた方の中で、倦怠感が51.6%、集中力低下が11.8%と多くの割合を占めています。

更年期障害

女性の場合、閉経により卵巣ホルモン(エストロゲン)が急激に減少することで、のぼせ、異常な汗、めまい、イライラ、不安感、不眠、無気力感などの症状が出ることがあります。

男性でも、睾丸ホルモン(テストステロン)の分泌が減少し、自律神経失調症と同様の症状が現れることがあります。

セルフチェック:医療機関の受診を検討すべきサイン

以下のような状態に当てはまる場合は、医療機関への受診を検討しましょう。

症状の持続期間

  • やる気が出ない、何もしたくない状態が2週間以上続いている
  • 休息や睡眠を十分にとっても症状が改善しない
  • 症状が日に日に悪化している

日常生活への影響

  • 仕事や学校に行けない、行くのが著しく困難
  • 身の回りのこと(入浴、着替え、食事など)ができない
  • 人と会うことを極端に避けるようになった
  • 以前は楽しめていた趣味や活動に全く興味が持てない

身体症状の有無

  • 食欲が著しく低下している、または過食が続く
  • 不眠が続く、または過度に眠ってしまう
  • 原因不明の体の痛みや不調が続く
  • 体重が大きく変化した(1カ月で5%以上の増減)

精神症状の深刻さ

  • 強い不安や恐怖を感じる
  • 自分を責める気持ちが強い
  • 将来に希望が持てず、絶望的な気持ちになる
  • 「消えてしまいたい」「死にたい」という気持ちが浮かぶ

特に希死念慮(死にたいという気持ち)が現れた場合は、早急に医療機関を受診してください。

簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)

厚生労働省が提供している簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)は、うつ病の重症度を評価できる自己記入式の評価尺度です。16項目の質問に答えることで、うつ症状の程度を確認できます。

合計点が6点以上の場合にはうつ病の可能性がありますので、医療機関に相談することをお勧めします。

やる気が出ない時の対処法

やる気が出ない、何もしたくないという状態への対処法は、原因や重症度によって異なります。ここでは、自分でできる対処法と専門的な治療について説明します。

自分でできる対処法

十分な休息と睡眠

まず最も重要なのは、心と体を休めることです。睡眠不足や疲労が蓄積している場合、十分な休息をとることで症状が改善することがあります。

質の良い睡眠のためには、以下の点を心がけましょう。

  • 毎日同じ時間に起床・就寝する
  • 寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を控える
  • 寝室の環境を整える(適度な温度、暗さ、静けさ)
  • カフェインやアルコールの摂取を控える
  • 適度な運動を日中に行う

生活リズムを整える

不規則な生活は自律神経のバランスを崩します。規則正しい生活リズムを心がけることで、体内時計が整い、心身の調子も改善しやすくなります。

  • 毎朝同じ時間に起きて、朝日を浴びる
  • 3食を規則正しく食べる
  • 適度な運動習慣を持つ

栄養バランスの取れた食事

栄養の偏りや不足は、やる気の低下につながります。バランスの良い食事を心がけましょう。

特に以下の栄養素を意識して摂取するとよいでしょう。

  • ビタミンB群:エネルギー代謝に必要(豚肉、レバー、魚、卵、大豆製品など)
  • 鉄分:貧血予防に重要(赤身肉、レバー、ほうれん草、大豆製品など)
  • トリプトファン:セロトニンの原料(バナナ、乳製品、大豆製品、ナッツ類など)
  • オメガ3脂肪酸:脳の健康維持(青魚、くるみ、亜麻仁油など)

適度な運動

運動は、セロトニンやエンドルフィンといった神経伝達物質の分泌を促し、気分を改善する効果があります。激しい運動である必要はなく、散歩やストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすことが大切です。

1日15〜30分程度のウォーキングから始めてみましょう。朝の散歩は、日光を浴びることで体内時計も整えられるため、特に効果的です。

ストレスへの対処

ストレスの原因が明確な場合は、可能な範囲でストレス源から距離を取ることが重要です。

  • 仕事の負担が大きい場合は、上司に相談して業務量を調整する
  • 人間関係のトラブルがある場合は、一時的に距離を置く
  • 完璧を求めすぎず、できる範囲で取り組む
  • 信頼できる人に悩みを話す

リラクゼーション法の実践

不安や緊張を和らげるために、リラクゼーション法を取り入れましょう。

  • 深呼吸:ゆっくりと深く呼吸することで、副交感神経が優位になり、リラックスできます
  • 瞑想やマインドフルネス:今この瞬間に意識を向けることで、不安や心配から離れられます
  • 音楽を聴く、アロマテラピーなど、自分がリラックスできる方法を見つけましょう

小さな目標を設定する

大きな目標を達成しようとすると、プレッシャーを感じてかえってやる気が失われることがあります。まずは簡単に達成できる小さな目標から始めましょう。

  • 朝、決まった時間に起きる
  • 5分だけ散歩する
  • 好きな音楽を1曲聴く
  • 部屋の一角だけ片付ける

小さな成功体験を積み重ねることで、徐々に自信とやる気を取り戻せます。

医療機関での治療

自分でできる対処法を試しても症状が改善しない場合、あるいは日常生活に大きな支障が出ている場合は、専門の医療機関を受診することが重要です。

受診する診療科

やる気が出ない、何もしたくないという症状で受診する場合、以下の診療科が適しています。

  • 心療内科:心身症やストレス関連の疾患を扱う
  • 精神科:うつ病や適応障害などの精神疾患を専門的に治療
  • 内科:甲状腺機能低下症や貧血など、身体疾患が疑われる場合

最初にどこを受診すればよいか迷う場合は、まず内科で身体的な異常がないかを確認し、必要に応じて心療内科や精神科を紹介してもらうこともできます。

薬物療法

うつ病や適応障害と診断された場合、症状に応じて以下のような薬が処方されることがあります。

抗うつ薬は、脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリン)のバランスを整え、抑うつ気分や意欲低下を改善します。効果が現れるまでに2週間程度かかることが多いため、焦らず服用を継続することが大切です。

主な抗うつ薬には、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)などがあります。

不眠が強い場合は睡眠薬、不安が強い場合は抗不安薬が併用されることもあります。

精神療法(心理療法)

薬物療法と並行して、または単独で精神療法が行われることがあります。

認知行動療法は、物事の受け取り方(認知)や行動のパターンを見直すことで、問題の解決を図る治療法です。否定的な考え方のクセに気づき、より現実的でバランスの取れた考え方を身につけます。

対人関係療法は、対人関係のストレスに焦点を当てた治療法です。重要な他者との関係性を改善することで、症状の軽減を図ります。

問題解決療法は、現在抱えている具体的な問題を明確にし、解決策を一緒に考えていく治療法です。特に適応障害の治療で用いられます。

環境調整

適応障害の場合、ストレスの原因から離れることが最も重要な治療となります。

  • 休職や休学を検討する
  • 部署異動や配置転換を相談する
  • 負担の大きい業務の調整を依頼する
  • 必要に応じて診断書を発行してもらう

ストレスから完全に離れることが難しい場合でも、負担を軽減する工夫をすることで、症状の改善が期待できます。

いつ医療機関を受診すべきか

以下のような場合は、速やかに医療機関を受診することをお勧めします。

緊急性が高い場合

  • 「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちが強い
  • 自傷行為をしてしまう
  • 食事や水分がほとんど摂れない
  • 全く眠れない日が続いている
  • 日常生活の基本的なこと(入浴、着替えなど)ができなくなった

これらの症状がある場合は、すぐに精神科や心療内科を受診してください。夜間や休日で通常の診療時間外の場合は、救急外来や精神科救急を利用することも検討しましょう。

早めの受診が望ましい場合

  • やる気が出ない、何もしたくない状態が2週間以上続いている
  • 症状のために仕事や学校を休むことが増えた
  • 以前は楽しめていたことに全く興味が持てなくなった
  • 体重が1カ月で5%以上変化した
  • 睡眠や食欲に明らかな変化がある
  • 自分でできる対処法を試しても改善しない

早期に適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、回復も早まります。「これくらいで受診してもいいのだろうか」と迷う場合でも、一度相談してみることが大切です。

受診をためらわないために

「心の問題で病院に行くのは恥ずかしい」「甘えだと思われるのではないか」と受診をためらう方もいますが、やる気が出ない、何もしたくないという状態は、心や体からの重要なサインです。

うつ病は100人に6人が一生のうちに経験する、決して珍しくない病気です。適応障害も、ストレス社会で働く現代人にとって身近な問題です。

適切な診断と治療を受けることで、多くの方が症状の改善を実感しています。一人で悩まず、専門家の力を借りることが、回復への第一歩となります。

まとめ

やる気が出ない、何もしたくないという状態は、誰にでも起こりうる身近な問題です。一時的な疲れであれば休息で改善しますが、症状が長く続く場合は注意が必要です。

この記事では、やる気が出ない状態の原因として、心理的・環境的要因、身体的要因、神経伝達物質のバランスの乱れなどを説明しました。また、背景にうつ病、適応障害、自律神経失調症、甲状腺機能低下症、慢性疲労症候群などの病気が隠れている可能性についても触れました。

自分でできる対処法としては、十分な休息と睡眠、生活リズムの調整、栄養バランスの取れた食事、適度な運動、ストレスへの対処などがあります。しかし、これらを試しても症状が改善しない場合、あるいは日常生活に大きな支障が出ている場合は、専門の医療機関を受診することが重要です。

特に、症状が2週間以上続いている、仕事や学校に行けない、「死にたい」という気持ちが浮かぶなどの場合は、早めに心療内科や精神科を受診してください。

やる気が出ない、何もしたくないという状態は、決して甘えや怠けではありません。心や体からの重要なサインとして受け止め、適切な対処をすることが大切です。一人で悩まず、信頼できる人や専門家に相談することが、回復への第一歩となります。

参考文献

  1. 厚生労働省「うつ病を知る」
    https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/01/s0126-5b2.html
  2. 厚生労働省「こころの耳 – うつ病に関してまとめたページ」
    https://kokoro.mhlw.go.jp/depression/
  3. 厚生労働省「簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)」
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/02.pdf
  4. 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」
    https://kokoro.ncnp.go.jp/
  5. 日本うつ病学会「うつ病治療ガイドライン」
  6. 東京都福祉保健局「TOKYO YOUTH HEALTHCARE – ずっと続く『やる気が起きない』『寝つけない』……それ『うつ病』かも?」
    https://www.youth-healthcare.metro.tokyo.lg.jp/sos/714
  7. 武田薬品工業・ルンドベック・ジャパン「うつ、ここから晴れ」
    https://www.utsu-kokokara.jp/
  8. 大塚製薬「すまいるナビゲーター – うつ病とは」
    https://www.smilenavigator.jp/utsu/about/
  9. タケダ健康サイト「がんばるあなたに。疲れの情報局 – やる気が出ない原因は?」
    https://alinamin.jp/tired/feel-unmotivated.html

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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