「汗が止まらなくて仕事に集中できない」「人前で握手するのが怖い」「服の汗ジミが気になって外出を避けてしまう」――多汗症による悩みは、日常生活の質を大きく低下させることがあります。市販の制汗剤や生活習慣の改善だけでは効果が不十分な場合、手術による治療を検討される方も少なくありません。多汗症の手術にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴や適応部位、効果、リスクが異なります。本記事では、多汗症の手術の種類を詳しく解説し、どのような方にどの治療法が適しているのかを医師の視点からわかりやすくお伝えします。治療法を選ぶ際の判断材料として、ぜひ参考にしてください。

📋 目次
- 🔍 多汗症とは?症状の特徴と治療が必要なケース
- 📌 多汗症の手術が検討されるタイミング
- 🎯 多汗症の手術の種類と特徴
- 💊 ETS手術(胸腔鏡下交感神経遮断術)の詳細
- 🏥 剪除法(せんじょほう)の詳細
- ⚠️ 皮下掻爬法・吸引法の詳細
- 💡 手術以外の多汗症治療法
- 📝 多汗症の手術を受ける前に確認すべきこと
- 📈 手術後の経過とダウンタイム
- 💰 多汗症の手術に関する費用と保険適用
- ❓ よくある質問
🔍 多汗症とは?症状の特徴と治療が必要なケース
多汗症は、体温調節に必要な量を超えて過剰に発汗する疾患です。緊張や暑さとは無関係に大量の汗をかくことが特徴で、日常生活に支障をきたすほどの発汗が見られます。
📌 多汗症の分類
多汗症は発症部位によって大きく2つに分類されます。全身に発汗が見られる全身性多汗症と、手のひら・足の裏・ワキ・顔など特定の部位に限局して発汗が見られる局所性多汗症です。局所性多汗症は原発性局所多汗症とも呼ばれ、特に手掌多汗症(手のひらの多汗症)や腋窩多汗症(ワキの多汗症)で悩む方が多くいらっしゃいます。
また、原因による分類もあります。明確な原因疾患がなく発症する原発性多汗症と、甲状腺機能亢進症や糖尿病、更年期障害、感染症などの基礎疾患や薬剤の副作用として発症する続発性多汗症に分けられます。手術の対象となるのは主に原発性局所多汗症です。
💡 ポイント
多汗症にはいくつかのタイプがあり、手術の適応となるのは主に原発性局所多汗症です。特に手のひらとワキの多汗症に対する手術効果が高いとされています。
🦠 治療が必要となる症状の目安
多汗症の重症度を判断する際には、日常生活への影響度が重要な指標となります。以下のような症状がある場合は、医療機関への相談をおすすめします。
- 📌 手のひらの汗で書類が濡れてしまう
- 📌 パソコンのキーボードが汗で故障する
- 📌 スマートフォンのタッチパネルが反応しない
- 📌 握手を避けてしまう
- 📌 人前で字を書くことに恐怖を感じる
- 📌 服の汗ジミが気になって人と会うのを避ける
医学的には、HDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale)という重症度分類が用いられます。この評価では、発汗が日常生活に耐えられないほど支障をきたし、常に邪魔になっている状態を重症と判断します。
📌 多汗症の手術が検討されるタイミング
多汗症の治療は段階的に進められることが一般的です。いきなり手術を行うのではなく、まずは保存的治療から開始し、効果が不十分な場合に手術が検討されます。
🔸 保存的治療で効果が不十分な場合
多汗症の初期治療としては、塩化アルミニウム外用薬の使用が一般的です。塩化アルミニウムは汗腺の出口を塞ぐことで発汗を抑える効果があり、軽度から中等度の多汗症に対して一定の効果が期待できます。しかし、皮膚への刺激性があること、効果の持続時間が限られていること、重症例では効果が不十分なことなどの課題があります。
イオントフォレーシス療法は、水道水に微弱な電流を流して汗腺の機能を一時的に低下させる治療法です。手のひらや足の裏の多汗症に有効ですが、定期的な通院が必要であり、効果の持続期間も限られています。
ボツリヌス毒素注射は、汗腺への神経伝達を一時的にブロックすることで発汗を抑制します。ワキの多汗症には保険適用となっていますが、効果は数か月から半年程度で、継続的な治療が必要です。
これらの保存的治療を十分に試みても効果が得られない場合や、治療の継続が困難な場合に、手術療法が選択肢として検討されます。
⚡ 手術を選択するメリットとリスク
手術の最大のメリットは、一度の治療で長期的な効果が期待できることです。保存的治療のように繰り返し通院する必要がなく、根本的な症状改善が見込めます。特に重症の手掌多汗症では、ETS手術によって劇的に症状が改善するケースも少なくありません。
⚠️ 注意!
手術にはリスクも伴います。全身麻酔が必要な手術では麻酔に関連するリスクがあります。また、ETS手術では代償性発汗(手術した部位以外からの発汗が増加する現象)が高頻度で発生することが知られています。
手術を検討する際は、メリットとリスクを十分に理解した上で、医師とよく相談して決定することが大切です。

🎯 多汗症の手術の種類と特徴
多汗症の手術にはいくつかの種類があり、発汗の部位や症状の程度によって適切な術式が選択されます。ここでは、主な手術の種類とその特徴を概観します。
💊 ETS手術(胸腔鏡下交感神経遮断術)
ETS手術は、交感神経の一部を切断または遮断することで発汗を抑制する手術です。主に手のひらの多汗症に対して行われ、高い効果が期待できます。内視鏡を用いて胸腔内にアプローチするため、傷跡が小さく済むのが特徴です。ただし、代償性発汗のリスクがあることを十分に理解しておく必要があります。
✨ 剪除法(皮弁法)
剪除法は、ワキの皮膚を切開して汗腺を直接目視しながら除去する手術です。アポクリン汗腺とエクリン汗腺の両方を取り除くことができるため、ワキガと多汗症の両方に効果があります。汗腺を直接確認しながら除去できるため確実性が高い反面、傷跡がやや大きくなることがデメリットです。
🔸 皮下掻爬法・吸引法
皮下掻爬法や吸引法は、小さな切開から器具を挿入し、皮下の汗腺を掻き出したり吸引したりして除去する方法です。剪除法に比べて傷跡が小さくて済みますが、汗腺の除去率がやや低くなる可能性があります。ワキの多汗症に対して行われることが多い術式です。
📍 手術の適応部位による選択
手のひらの多汗症(手掌多汗症)に対しては、主にETS手術が選択されます。手のひらには汗腺を直接除去するような手術は適さないため、神経へのアプローチが有効です。
ワキの多汗症(腋窩多汗症)に対しては、剪除法や皮下掻爬法、吸引法などの汗腺除去手術が選択されます。これらの手術は同時にワキガの治療にも効果があり、ワキガと多汗症の両方で悩んでいる方に適しています。ワキガの治療についての詳細は、「ミラドライとワキガ手術を徹底比較!効果・費用・ダウンタイムの違い」でも詳しく解説しています。
足の裏の多汗症(足底多汗症)に対しては、ETS手術の効果が手のひらほど確実ではないため、保存的治療が優先されることが多いです。
💊 ETS手術(胸腔鏡下交感神経遮断術)の詳細
ETS手術は、手のひらの多汗症に対する最も効果的な外科的治療法として知られています。この手術について詳しく解説します。
🔍 ETS手術の仕組みと原理
ETS(Endoscopic Thoracic Sympathectomy)手術は、胸腔内にある交感神経節を切断または焼灼することで、手のひらへの発汗指令を遮断する手術です。交感神経は自律神経の一種で、発汗をコントロールする役割を担っています。この神経の一部を遮断することで、手のひらの発汗を劇的に減少させることができます。
手術は全身麻酔下で行われ、胸腔鏡(内視鏡)を用いてわきの下に数ミリの小さな穴を開けて行います。胸腔内を炭酸ガスで膨らませ、カメラで確認しながら目的の交感神経節にアプローチします。通常、両側同時に行われ、手術時間は1〜2時間程度です。
📈 ETS手術の効果と成功率
ETS手術の手のひら多汗症に対する効果は非常に高く、多くの研究で90%以上の患者さんで発汗の著明な減少が報告されています。手術直後から効果を実感できることが多く、長年悩んでいた症状が劇的に改善するケースも珍しくありません。
効果の持続性も高く、一度成功すれば長期間にわたって効果が維持されます。ただし、まれに神経の再生などによって症状が再発するケースも報告されています。
ワキの多汗症や顔面の多汗症に対しても一定の効果がありますが、手のひらに対する効果ほどの確実性はありません。また、足の裏の多汗症に対する効果は限定的であり、腰部交感神経遮断術(LTS)という別の手術が検討されることもあります。
⚠️ 代償性発汗について
🚨 緊急度高!
ETS手術の最大の問題点は代償性発汗です。代償性発汗とは、手術によって手のひらの発汗が止まる代わりに、体の他の部位(背中、腹部、太もも、臀部など)からの発汗が増加する現象です。
代償性発汗の発生率は非常に高く、程度の差はあれ50〜90%以上の患者さんに何らかの代償性発汗が見られるとされています。多くの場合は軽度で許容範囲内ですが、中には手術前よりも生活の質が低下してしまうほど重度の代償性発汗に悩まされる方もいます。
代償性発汗は、遮断する神経の位置(レベル)によって発生率や程度が異なることがわかっています。近年では、より低いレベルでの神経遮断や、神経を完全に切断するのではなくクリップで挟む方法(リバーシブルな方法)など、代償性発汗を軽減するための工夫がなされています。
ETS手術を検討する際は、代償性発汗のリスクについて十分に説明を受け、理解した上で決断することが極めて重要です。
💧 ETS手術のその他の合併症とリスク
代償性発汗以外にも、ETS手術にはいくつかの合併症リスクがあります。
- 📌 気胸:手術操作によって肺に穴が開いてしまう合併症
- 📌 Horner症候群:交感神経の損傷によって起こる合併症
- 📌 手術創の感染、出血、術後の痛み
気胸は、手術操作によって肺に穴が開いてしまう合併症です。多くは軽度で自然に治癒しますが、場合によっては胸腔ドレナージ(胸に管を入れて空気を抜く処置)が必要になることがあります。
Horner症候群は、交感神経の損傷によって起こる合併症で、まぶたが下がる、瞳孔が小さくなる、顔の片側の発汗が減少するなどの症状が現れます。発生頻度は低いですが、発生した場合は永続的な後遺症となる可能性があります。
🏥 剪除法(せんじょほう)の詳細
剪除法は、主にワキの多汗症およびワキガに対して行われる手術です。汗腺を直接除去する方法として、最も確実性の高い術式とされています。
🔸 剪除法の手術方法
剪除法(皮弁法とも呼ばれます)は、ワキの皮膚を3〜5センチ程度切開し、皮膚を裏返すようにしてアポクリン汗腺とエクリン汗腺を目視しながらハサミや鉗子で一つひとつ除去していく手術です。
手術は局所麻酔または全身麻酔下で行われます。汗腺をできる限り取り残しなく除去した後、皮膚を元の位置に戻して縫合します。術後は皮膚が浮き上がらないようにガーゼやスポンジで圧迫固定を行い、数日間安静にする必要があります。
手術時間は片側30分〜1時間程度で、通常は両ワキ同時に行われます。
✨ 剪除法の効果
剪除法の最大のメリットは、汗腺を目視で確認しながら確実に除去できることです。熟練した医師が丁寧に手術を行えば、アポクリン汗腺の70〜90%を除去することが可能とされています。これにより、ワキガの臭いと多汗症の両方に対して高い効果が期待できます。
エクリン汗腺も同時に除去できるため、発汗量の減少も期待できます。ただし、エクリン汗腺はアポクリン汗腺よりも広範囲に分布しているため、完全に除去することは困難であり、発汗が完全になくなるわけではありません。
効果は永続的で、一度除去した汗腺は再生しないため、長期間にわたって効果が持続します。
⚠️ 剪除法のデメリットとリスク
剪除法の主なデメリットは、傷跡が比較的大きいことです。ワキのシワに沿って切開するため目立ちにくくはなりますが、完全に消えることはありません。傷跡の仕上がりは個人差があり、ケロイド体質の方は目立つ傷跡になる可能性があります。
また、術後のダウンタイムが長いこともデメリットです。手術後は両腕を上げないように固定し、1週間程度は安静が必要です。仕事や日常生活への復帰には2週間から1か月程度かかることがあります。
- 📌 血腫(血液が溜まる)
- 📌 漿液腫(組織液が溜まる)
- 📌 皮膚壊死
- 📌 感染
- 📌 皮膚の引きつれや拘縮
💰 剪除法の保険適用
剪除法は、腋臭症(ワキガ)の治療として保険適用が認められています。保険適用で手術を受けた場合、3割負担で両ワキ2〜5万円程度の自己負担となります。ただし、単なる多汗症のみで臭いの問題がない場合は、保険適用とならないこともあります。
保険適用の可否は医療機関によって判断が異なることもあるため、事前に確認することをおすすめします。
⚠️ 皮下掻爬法・吸引法の詳細
皮下掻爬法や吸引法は、剪除法に比べて傷跡が小さく済む術式として開発されました。ワキの多汗症およびワキガに対して行われます。
🔸 皮下掻爬法の手術方法
皮下掻爬法は、ワキに1〜2センチ程度の小さな切開を作り、そこからキューレットと呼ばれるスプーン状の器具を挿入して、皮下の汗腺を掻き取るように除去する方法です。
剪除法のように皮膚を大きく切開して裏返す必要がないため、傷跡が小さく、ダウンタイムも比較的短くて済みます。手術時間も短く、日帰り手術で行われることが多いです。
💧 吸引法の手術方法
吸引法は、脂肪吸引と同様の原理で、細い管(カニューレ)を挿入して汗腺を吸引除去する方法です。超音波を併用して汗腺を破壊しやすくする超音波法や、レーザーを併用するレーザー法などの改良版もあります。
切開が5ミリ程度と非常に小さく済むため、傷跡が目立ちにくいのが最大のメリットです。
📈 皮下掻爬法・吸引法の効果と限界
皮下掻爬法や吸引法は、傷跡が小さいというメリットがある一方で、汗腺の除去率が剪除法に比べて低いというデメリットがあります。目視で確認しながら除去するのではなく、盲目的に掻き取ったり吸引したりするため、取り残しが生じやすいのです。
💡 ポイント
効果が剪除法ほど確実ではなく、症状が完全には改善しない場合や、時間経過とともに症状が再発する場合があります。軽度から中等度の多汗症やワキガには適していますが、重症例では効果が不十分なことがあります。
医師の技術や経験によっても結果が左右されやすい術式であるため、この手術を選択する場合は、経験豊富な医師を選ぶことが重要です。
⚡ 皮下掻爬法・吸引法の合併症
皮下掻爬法や吸引法の合併症リスクは、剪除法に比べて低いとされています。ただし、血腫、感染、皮膚の凹凸、色素沈着などの可能性はあります。
また、盲目的な操作によって皮膚に過度のダメージを与えてしまうと、皮膚壊死や瘢痕拘縮のリスクが高まることもあります。
💡 手術以外の多汗症治療法
手術を検討する前に、まずは侵襲性の低い治療法を試みることが一般的です。また、手術が適応とならない部位の多汗症や、手術を希望しない方には、以下の治療法が選択肢となります。
💊 外用薬による治療
塩化アルミニウム外用薬は、多汗症治療の第一選択として広く用いられています。汗腺の出口を塞ぐことで発汗を抑制する作用があり、軽度から中等度の多汗症に対して効果が期待できます。市販品と医療機関で処方される製剤があり、濃度が異なります。副作用として皮膚への刺激性があり、かゆみや発赤が生じることがあります。
2020年には、日本で初めての原発性腋窩多汗症治療薬として、エクロックゲル(ソフピロニウム臭化物)が保険承認されました。抗コリン作用により発汗を抑制する外用薬で、ワキの多汗症に対して1日1回塗布します。
2022年には、ラピフォートワイプ(グリコピロニウムトシル酸塩水和物)というワイプ型の外用薬も承認され、治療の選択肢が広がっています。
💉 ボツリヌス毒素注射
ボツリヌス毒素(ボトックス)注射は、神経から汗腺への情報伝達を一時的にブロックすることで発汗を抑制する治療法です。ワキの重度多汗症に対しては保険適用となっており、効果的な治療法の一つです。
- ✅ 効果は注射後2〜3日から現れ始め、4〜9か月程度持続
- ✅ 効果が切れてきたら再注射が必要
- ✅ 手のひらや足の裏に対しても効果(保険適用外)
⚡ イオントフォレーシス療法
イオントフォレーシス療法は、水道水に微弱な直流電流を流し、その中に手や足を浸すことで汗腺の機能を一時的に低下させる治療法です。作用機序は完全には解明されていませんが、汗腺の出口が電気分解で生成された物質で塞がれることで効果を発揮すると考えられています。
手のひらや足の裏の多汗症に対して効果があり、保険適用で受けられます。週に数回の通院が必要で、効果の維持には継続的な治療が必要です。自宅用の機器を購入して治療を続けることも可能です。
🌟 ミラドライ
ミラドライは、マイクロ波を照射して汗腺を熱で破壊する治療法です。ワキの多汗症およびワキガに対して行われ、切らずに治療できることから人気があります。
- ✨ 効果は半永久的とされており、1回の治療で高い効果が期待
- ✨ ダウンタイムも比較的短く、日常生活への影響が少ない
- ✨ ただし、保険適用外の自費診療となるため、費用負担が大きい
ミラドライについての詳細は、「ミラドライの効果と持続期間|半永久的に汗・ニオイを抑える仕組みを解説」をご参照ください。
また、ミラドライの仕組みについて詳しく知りたい方は、「ミラドライの仕組みと原理を医師が解説|マイクロ波でわきが・多汗症を治療」も参考になります。
💊 内服薬による治療
抗コリン薬の内服は、全身の発汗を抑制する効果があります。プロバンサイン(プロパンテリン臭化物)などが用いられますが、口渇、便秘、排尿障害、眼圧上昇などの副作用があるため、長期使用には注意が必要です。
緊張やストレスが発汗の誘因となっている場合には、抗不安薬や自律神経調整薬が併用されることもあります。
📝 多汗症の手術を受ける前に確認すべきこと
多汗症の手術は、一度受けると元に戻すことが困難な治療法です。後悔しないためにも、手術を決断する前に以下の点を確認しておきましょう。
✅ 十分な保存的治療を試みたか
手術は最終手段として位置づけられるべきです。塩化アルミニウム外用薬、イオントフォレーシス、ボツリヌス毒素注射などの保存的治療を十分に試みてから、手術を検討することが推奨されます。
保存的治療で効果が得られなかった場合や、継続的な治療が困難な場合、または患者さん自身が長期的な解決を強く希望する場合に、手術が選択肢として検討されます。
⚠️ リスクと合併症の理解
🚨 緊急度高!
特にETS手術を検討している場合は、代償性発汗のリスクについて十分に理解することが極めて重要です。代償性発汗は高頻度で発生し、程度によっては手術前よりも生活の質が低下することがあります。
各手術の合併症リスク、傷跡の残り方、ダウンタイムの長さなども事前に確認しておきましょう。医師から十分な説明を受け、不明な点は質問して解消しておくことが大切です。
🏥 医療機関と医師の選択
多汗症の手術は、医師の技術と経験によって結果が大きく左右されます。ETS手術であれば胸部外科や形成外科の経験豊富な医師、ワキの手術であれば形成外科や美容外科の経験豊富な医師を選ぶことが重要です。
- 📌 手術実績や症例数
- 📌 術後のフォローアップ体制
- 📌 セカンドオピニオンを求めることも有効
💭 期待値の適正化
手術を受ければ発汗が完全にゼロになるわけではありません。ある程度の発汗は正常な生理機能であり、それが完全になくなることはありません。手術によって「日常生活に支障のないレベルまで発汗を減少させる」ことが現実的な目標です。
また、手術の効果には個人差があり、期待通りの結果が得られない可能性もあることを理解しておく必要があります。
📈 手術後の経過とダウンタイム
手術後の経過は術式によって異なります。仕事や日常生活への影響を考慮して、適切な時期に手術を受けることが重要です。
💊 ETS手術後の経過
ETS手術は多くの場合、1〜2泊の入院が必要です。手術当日は安静にし、翌日からは軽い活動が可能になります。傷口は小さいため、痛みは比較的軽度です。
手術の効果は直後から実感できることが多く、手のひらがサラサラになっていることに驚かれる方も多いです。デスクワークであれば退院後すぐに復帰できることが多いですが、重労働や激しい運動は2週間程度控えることが推奨されます。
術後数日間は胸の違和感や軽い痛みを感じることがありますが、通常は1週間程度で軽快します。
🏥 剪除法後の経過
剪除法は日帰りまたは1泊入院で行われることが多いです。術後は両ワキに圧迫固定を行い、腕を上げないように安静にする必要があります。
- 📌 固定期間は通常3〜7日程度
- 📌 抜糸は1〜2週間後に実施
- 📌 日常生活への完全復帰には2〜4週間程度
傷跡は徐々に目立たなくなりますが、完全に消えることはありません。傷跡の成熟には数か月から1年程度かかります。
⚡ 皮下掻爬法・吸引法後の経過
皮下掻爬法や吸引法は、傷口が小さいためダウンタイムは比較的短めです。多くの場合、日帰りで手術を受けられます。
術後の圧迫固定は1〜3日程度で、その後は徐々に日常生活に復帰できます。軽い腫れや内出血が1〜2週間程度続くことがありますが、通常は自然に軽快します。
💰 多汗症の手術に関する費用と保険適用
多汗症の手術にかかる費用は、術式や保険適用の有無によって大きく異なります。
💊 ETS手術の費用
ETS手術は、原発性手掌多汗症に対して保険適用が認められています。保険適用で3割負担の場合、入院費用を含めて10〜15万円程度の自己負担となることが多いです。
高額療養費制度を利用すれば、自己負担額がさらに軽減される可能性があります。事前に限度額適用認定証を取得しておくと、窓口での支払いを抑えることができます。
🏥 剪除法の費用
剪除法は、腋臭症(ワキガ)の治療として保険適用が認められています。保険適用で3割負担の場合、両ワキで2〜5万円程度の自己負担となります。
ただし、医療機関によっては自費診療として行っているところもあり、その場合は20〜40万円程度の費用がかかることがあります。
⚡ 皮下掻爬法・吸引法の費用
皮下掻爬法や吸引法は、保険適用となる場合と自費診療となる場合があります。保険適用の場合は剪除法と同程度の費用、自費診療の場合は15〜30万円程度の費用がかかることが多いです。
超音波法やレーザー法などの改良版は、多くの場合自費診療となります。
📋 保険適用の条件
- 📌 ETS手術は原発性手掌多汗症で重症と診断された場合に保険適用
- 📌 剪除法は腋臭症の診断がついた場合に保険適用
- 📌 保険適用の可否は医療機関の判断による部分もある
保険適用の可否は医療機関の判断による部分もあるため、事前に確認することをおすすめします。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太医師(当院治療責任者)より
「当院でもワキの多汗症やワキガでお悩みの患者さんからのご相談は非常に多く、特に若い世代の方からの問い合わせが増加傾向にあります。多くの患者さんは『手術を受けたい』とおっしゃってご来院されますが、詳しくお話を伺うと、実は外用薬やボツリヌス毒素注射で十分に対応できるケースも少なくありません。当院では、まず患者さんの症状の程度や生活への影響度を丁寧に評価し、最も適した治療法をご提案するようにしています。手術は確かに効果的な治療法ですが、リスクも伴いますので、まずは保存的治療から始めることをおすすめしています。特にミラドライは切らずに治療できる選択肢として、手術への抵抗感がある方にご好評をいただいています。治療法の選択でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。」
ETS手術は成長期が終了した18歳以上が推奨されていますが、症状が重度で日常生活に著しい支障をきたしている場合は、保護者の同意のもと、より若い年齢でも手術が検討されることがあります。ワキの手術も同様に、成長期が終了してからが望ましいとされています。ただし、年齢だけでなく、保存的治療の効果や本人の意思、リスクの理解度なども考慮して判断されます。
代償性発汗は、程度の差はあれ50〜90%以上の患者さんに発生するとされています。多くの場合は軽度で日常生活に支障のないレベルですが、約5〜10%の患者さんでは重度の代償性発汗が起こり、手術を後悔されるケースもあります。代償性発汗は手術で元に戻すことが困難なため、手術前に十分なリスク説明を受け、理解した上で決断することが重要です。
手術を受けても発汗が完全にゼロになることはありません。ETS手術では手のひらの発汗は大幅に減少しますが、完全に止まるわけではありません。ワキの手術でも同様で、汗腺をすべて除去することは困難なため、ある程度の発汗は残ります。手術の目標は、日常生活に支障のないレベルまで発汗を減少させることです。
ETS手術は原発性手掌多汗症で重症と診断された場合に保険適用となります。剪除法は腋臭症(ワキガ)の診断がついた場合に保険適用となります。保険適用で3割負担の場合、ETS手術は入院費込みで10〜15万円程度、剪除法は両ワキで2〜5万円程度の自己負担となります。保険適用の可否は医療機関によって判断が異なることもあるため、事前に確認することをおすすめします。
足の裏の多汗症(足底多汗症)に対するETS手術の効果は、手のひらに比べて限定的です。足の裏への発汗をコントロールする神経は腰部にあるため、胸部の交感神経を遮断するETS手術では十分な効果が得られないことが多いです。腰部交感神経遮断術(LTS)という別の手術がありますが、合併症リスクが高いため、あまり一般的には行われていません。足の裏の多汗症には、イオントフォレーシスやボツリヌス毒素注射などの保存的治療が優先されます。
傷跡の目立ち方は術式によって異なります。ETS手術はワキの下に5〜10mm程度の小さな傷ができますが、目立ちにくい場所にあるため、ほとんど気になりません。剪除法はワキに3〜5cm程度の傷跡が残りますが、シワに沿って切開するため時間とともに目立たなくなります。皮下掻爬法や吸引法は傷口が小さく、最も傷跡が目立ちにくいです。傷跡の仕上がりには個人差があり、ケロイド体質の方は目立つ傷跡になる可能性があります。
📚 参考文献
- 📌 日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン」
- 📌 日本耳鼻咽喉科学会「多汗症に関する資料」
- 📌 慶應義塾大学医学部「多汗症の治療について」
- 📌 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「エクロックゲル添付文書」
- 📌 厚生労働省「保険診療に関する情報」
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務