はじめに
皮膚の下にできるしこりやできもの。触ると痛みを感じたり、次第に大きくなったりして不安を感じている方も多いのではないでしょうか。そのしこりは「粉瘤(ふんりゅう)」かもしれません。
粉瘤は皮膚の良性腫瘍の中で最も一般的なもののひとつで、年齢や性別を問わず誰にでもできる可能性があります。しかし、実は粉瘤ができやすい人には一定の特徴があることが知られています。
本記事では、粉瘤とは何か、どのような人にできやすいのか、その原因やメカニズム、そして予防法や治療法について、わかりやすく詳しく解説していきます。ご自身やご家族の健康管理にお役立てください。

粉瘤とは何か
粉瘤の基本知識
粉瘤は、正式には「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」または「アテローム」と呼ばれる皮膚の良性腫瘍です。皮膚の下に袋状の構造物(嚢腫)ができ、その中に本来は皮膚から剥がれ落ちるはずの角質や皮脂などの老廃物が溜まっていく状態を指します。
見た目は皮膚の下にある丸いしこりで、触れると弾力があり、動かすことができる場合が多いです。サイズは数ミリから数センチまでさまざまで、放置すると徐々に大きくなっていく傾向があります。
粉瘤の特徴的なサイン
粉瘤には以下のような特徴があります:
- 中心部に黒い点(開口部)が見られる:粉瘤の表面中央に、小さな黒い点のような開口部があることが多く、これを「へそ」と呼びます
- 独特の臭い:内容物を圧迫すると、白~黄色のドロドロした物質が出てくることがあり、特有の不快な臭いを伴います
- 痛みの変化:通常は痛みがありませんが、細菌感染を起こすと赤く腫れて痛みを伴います(炎症性粉瘤)
- 可動性:皮膚の下で袋状の構造が比較的自由に動く
粉瘤ができる主な部位
粉瘤は全身のどこにでもできる可能性がありますが、特に多い部位があります:
- 顔(特に頬や耳たぶの周囲)
- 首筋や耳の後ろ
- 背中
- 胸
- 腋の下
- 臀部
- 陰部周辺
これらの部位は皮脂腺や毛包が多く、また摩擦や圧迫を受けやすい場所でもあります。
粉瘤ができやすい人の特徴
粉瘤は誰にでもできる可能性がありますが、統計的にできやすい人には一定の傾向があることが分かっています。以下、詳しく見ていきましょう。
1. 年齢による傾向
粉瘤は20代から40代の比較的若い年代に多く見られます。これは皮脂の分泌が活発な年代と重なっており、毛穴が詰まりやすい時期であることが関係していると考えられています。
ただし、10代の思春期や50代以降でも発症することがあり、年齢は一つの要因に過ぎません。特に思春期はホルモンバランスの変化により皮脂分泌が増加するため、粉瘤のリスクが高まります。
2. 性別による違い
粉瘤は男性にやや多い傾向があります。これは男性ホルモンが皮脂の分泌を促進することと関連していると考えられています。男性ホルモン(アンドロゲン)は皮脂腺を刺激し、皮脂の産生を増やすため、毛穴が詰まりやすくなり、結果として粉瘤ができやすくなります。
ただし、女性でも十分に発症する可能性があり、特に生理周期やホルモンバランスの変化が影響することもあります。
3. 遺伝的要因
粉瘤には家族性の傾向があることが知られています。親や兄弟姉妹に粉瘤ができたことがある場合、自分にもできる可能性が高くなります。
これは皮膚の構造や皮脂腺の特性、毛穴の形状などが遺伝的に受け継がれることが関係していると考えられています。ただし、必ず遺伝するわけではなく、環境要因も大きく影響します。
4. 体質的な要因
皮脂分泌が多い体質
皮脂の分泌が多い体質の方は、毛穴に皮脂が詰まりやすく、粉瘤ができるリスクが高まります。顔がテカりやすい、頭皮がべたつきやすいといった特徴がある方は注意が必要です。
毛深い体質
体毛が濃い、毛深い体質の方も粉瘤ができやすい傾向があります。これは毛包(毛の根元の部分)が多く存在することと、毛穴が大きいことが関係しています。毛包は粉瘤の発生源となることが多いため、毛深い方はリスクが高くなります。
ニキビができやすい肌質
思春期や成人後もニキビができやすい方は、粉瘤のリスクも高まります。ニキビは毛穴の詰まりから生じる疾患であり、その延長線上に粉瘤の形成があるとも言えます。
特に嚢胞性ニキビ(大きく膨らんだニキビ)を繰り返す方は、皮膚の深部に炎症が起きやすく、その結果として粉瘤が形成されることがあります。
5. 過去の外傷や皮膚損傷の経験がある方
過去に以下のような経験がある方は、粉瘤ができやすくなります:
- 切り傷や擦り傷:傷が治癒する過程で皮膚の表皮細胞が皮下に入り込み、嚢腫を形成することがあります
- 手術痕:過去に手術を受けた部位の周辺
- ピアスの穴:特に耳たぶは粉瘤の好発部位です
- 虫刺され:強くかきむしった部位
- 火傷(熱傷):治癒後の瘢痕組織の近く
これらの損傷により、皮膚の構造が変化し、表皮細胞が皮下に迷入しやすくなることが粉瘤形成の一因となります。
6. 特定の基礎疾患がある方
以下の疾患がある方は、粉瘤ができやすいことが報告されています:
ガードナー症候群
家族性大腸ポリポーシスと関連する遺伝性疾患で、全身に多発性の粉瘤ができることが特徴の一つです。大腸ポリープや骨腫瘍なども合併します。
尋常性痤瘡(ニキビ)が重症の方
慢性的に重症のニキビがある方は、炎症の繰り返しにより粉瘤が形成されやすくなります。
7. 生活習慣による影響
不規則な生活リズム
睡眠不足や不規則な生活は、ホルモンバランスを乱し、皮脂分泌のリズムを狂わせます。これにより毛穴が詰まりやすくなり、粉瘤のリスクが高まります。
偏った食生活
脂質や糖質の多い食事を好む方は、皮脂の分泌が増加しやすく、結果として毛穴が詰まりやすくなります。特にファストフードやスナック菓子、揚げ物などを頻繁に摂取する習慣がある方は要注意です。
ストレスの多い生活
慢性的なストレスはホルモンバランスに影響を与え、皮脂分泌を増加させます。また、免疫機能の低下により、毛穴に細菌が侵入しやすくなることも粉瘤形成のリスクとなります。
8. 皮膚のケア習慣が不適切な方
過度な洗顔や強い摩擦
「清潔にしよう」という思いから、過度に洗顔したり、強くこすったりする習慣がある方は、かえって皮膚のバリア機能を損ない、粉瘤のリスクを高めることがあります。
保湿不足
皮膚の乾燥は、かえって皮脂の分泌を促進させることがあります。乾燥から肌を守ろうとして、身体が過剰に皮脂を分泌してしまうのです。
化粧品やスキンケア製品の使用法
毛穴を塞ぎやすい化粧品(コメドジェニックな製品)の使用や、クレンジング不足によるメイク残りも、毛穴の詰まりを引き起こし、粉瘤形成のリスクとなります。
9. 職業や生活環境による影響
高温多湿な環境で働く方
調理場や工場など、高温多湿な環境で長時間働く方は、発汗が多く、皮膚が蒸れやすいため、毛穴が詰まりやすくなります。
粉塵や油分に接触する機会が多い方
工場勤務や整備士など、職業上、粉塵や油分に接触する機会が多い方は、これらの物質が毛穴を塞ぎ、粉瘤のリスクを高めます。
長時間の座位や同じ姿勢を続ける方
デスクワークなどで長時間座っている方は、臀部や背中に圧迫や摩擦が加わり続けるため、これらの部位に粉瘤ができやすくなります。
10. 特定の薬剤使用中の方
一部の薬剤は副作用として皮脂分泌に影響を与えることがあります:
- ステロイド剤:長期使用により皮膚の構造が変化し、粉瘤ができやすくなることがあります
- 一部のホルモン剤:ホルモンバランスの変化により、皮脂分泌が影響を受けます
粉瘤ができるメカニズム
粉瘤がどのようにして形成されるのか、そのメカニズムを理解することは予防にも役立ちます。
正常な皮膚の構造
まず、正常な皮膚の構造について簡単に説明します。皮膚は外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」の三層構造になっています。表皮の最も外側には角質層があり、古くなった細胞は垢として自然に剥がれ落ちます。
粉瘤形成の基本的なプロセス
粉瘤は以下のようなプロセスで形成されます:
- 表皮細胞の迷入:何らかの原因で、本来は皮膚表面にあるべき表皮細胞が皮膚の内部(真皮や皮下組織)に入り込みます。
- 嚢腫(袋)の形成:皮膚内部に入り込んだ表皮細胞は、その場で増殖を続け、袋状の構造(嚢腫壁)を形成します。この袋の内側は表皮と同じ構造を持っています。
- 内容物の蓄積:嚢腫の内壁から角質や皮脂などの老廃物が産生され、袋の中に次々と蓄積されていきます。これらの内容物は通常、外に排出される経路がないため、どんどん溜まっていきます。
- 増大:内容物が増えるにつれて、嚢腫は徐々に大きくなっていきます。
表皮細胞が皮膚内部に入り込む原因
表皮細胞が皮膚内部に入り込む主な原因には、以下のようなものがあります:
毛包の閉塞
最も一般的な原因です。毛穴(毛包開口部)が何らかの理由で塞がれると、毛包上皮が内側に向かって増殖し、皮膚内部に嚢腫を形成します。皮脂や角質の詰まり、炎症、ホルモンの影響などが毛包の閉塞を引き起こします。
外傷
切り傷や刺し傷などの外傷により、皮膚表面の表皮細胞が物理的に皮膚深部に押し込まれることがあります。
先天的な要因
生まれつき表皮細胞が皮膚内部に迷入した状態で存在している場合もあります。これは胎児の発育過程での異常によるものです。
炎症性粉瘤への進行
粉瘤自体は良性の腫瘍ですが、以下のような場合に炎症を起こすことがあります:
- 細菌感染:嚢腫に細菌が侵入すると、内部で感染が起こり、膿が溜まります(感染性粉瘤)。
- 嚢腫の破裂:外部からの圧迫や自然に嚢腫が破れると、内容物が周囲の組織に漏れ出し、強い炎症反応を引き起こします。
- 慢性的な刺激:摩擦や圧迫などの慢性的な刺激により、炎症が持続します。
炎症を起こした粉瘤は、赤く腫れ、痛みを伴い、時には発熱することもあります。
粉瘤と間違えやすい疾患
粉瘤は皮膚の下のしこりとして現れますが、似たような症状を示す他の疾患もあります。自己判断せず、正確な診断を受けることが重要です。
脂肪腫
皮下脂肪組織が増殖してできる良性腫瘍です。粉瘤よりも柔らかく、中心に開口部(へそ)はありません。ゆっくりと大きくなりますが、通常は痛みを伴いません。
リンパ節の腫れ
感染症や炎症により、リンパ節が腫れることがあります。首や腋の下、鼠径部などに多く見られます。風邪などの感染症の際に腫れ、治癒とともに小さくなることが特徴です。
毛巣洞(もうそうどう)
主に臀部の正中部(尾骨の上あたり)にできる疾患で、毛が皮膚の下に入り込んで炎症を起こします。若い男性に多く、座る姿勢が多い方に見られます。
ガングリオン
関節や腱鞘の周囲にできる嚢腫で、主に手首や手の甲に多く見られます。中にゼリー状の粘液が溜まっており、触ると硬く感じます。
脂漏性角化症(老人性イボ)
加齢とともに増える良性の皮膚腫瘍で、表面が茶色や黒っぽく、やや盛り上がっています。通常、痛みはありません。
悪性腫瘍
まれですが、皮膚癌などの悪性腫瘍も皮膚の下のしこりとして現れることがあります。急速に大きくなる、潰瘍を形成する、周囲の組織と癒着しているなどの特徴があれば、早急に医療機関を受診する必要があります。
粉瘤の症状と進行
粉瘤の症状は、その状態により異なります。
通常の粉瘤(非炎症性)
- 皮膚の下に丸いしこりとして触れる
- 弾力性があり、可動性がある
- 通常は痛みがない
- 中心部に小さな黒い点(開口部)が見られることがある
- ゆっくりと大きくなる傾向がある
- 圧迫すると、臭いのある白~黄色のドロッとした内容物が出ることがある
炎症性粉瘤(感染性粉瘤)
- 急速に大きくなる
- 赤く腫れ上がる
- 熱感を伴う
- 強い痛みがある
- 触ると柔らかく、波動(中に液体が溜まっている感触)を感じる
- 発熱することがある
- 自然に破れて膿が出ることがある
粉瘤の自然経過
粉瘤は自然に消えることはほとんどありません。放置すると以下のような経過をたどることが多いです:
- 緩徐な増大:数ヶ月から数年かけて少しずつ大きくなります。
- 感染・炎症:何らかのきっかけで感染を起こし、急速に腫れ上がります。
- 破裂:炎症が強くなると皮膚を破って内容物が排出されることがあります。
- 再発:破裂しても嚢腫の袋が残っていれば、再び内容物が溜まり再発します。
合併症
放置したり、不適切な処置をしたりすると、以下のような合併症を起こすことがあります:
- 蜂窩織炎:周囲の皮膚や皮下組織に細菌感染が広がる
- 瘢痕形成:炎症を繰り返すと、治癒後に目立つ傷跡が残る
- 悪性化:非常にまれですが、長期間放置した粉瘤が悪性化する可能性がゼロではありません
粉瘤の予防方法
粉瘤を完全に予防することは難しいですが、リスクを減らすための対策はいくつかあります。
1. 適切なスキンケア
正しい洗顔・洗浄方法
- やさしく洗う:強くこすらず、泡で包み込むように洗います
- 適切な頻度:1日2回(朝・晩)を基本とし、過度な洗浄は避けます
- ぬるま湯を使用:熱すぎる湯は皮脂を過剰に奪い、逆効果です
- 清潔なタオルで優しく拭く:摩擦を避けるため、押さえるように水分を取ります
保湿ケア
皮膚のバリア機能を保つために、適切な保湿が重要です。特に洗顔・入浴後は速やかに保湿剤を塗りましょう。
毛穴ケア
- 適切なクレンジング:メイクや日焼け止めはしっかり落とします
- ピーリング:週1~2回程度、古い角質を除去するケアも有効です(ただし、やりすぎは禁物)
- ノンコメドジェニック製品の使用:毛穴を詰まらせにくい化粧品を選びます
2. 生活習慣の改善
バランスの取れた食事
- 脂質・糖質の適量摂取:過剰摂取は皮脂分泌を増やします
- ビタミン・ミネラルの摂取:特にビタミンA、C、E、亜鉛などは皮膚の健康に重要です
- 食物繊維の摂取:腸内環境を整えることも皮膚の健康につながります
十分な睡眠
- 7~8時間の睡眠:ホルモンバランスと免疫機能の維持に必要です
- 規則正しい睡眠リズム:できるだけ同じ時間に就寝・起床します
ストレス管理
- 適度な運動:有酸素運動はストレス解消に効果的です
- リラクゼーション:瞑想、深呼吸、趣味の時間などを取り入れます
- 十分な休息:疲れを感じたら無理せず休むことも大切です
3. 皮膚への外傷を避ける
- 丁寧な髭剃り:切り傷を作らないよう、シェービングフォームを使用し、清潔な刃で優しく剃ります
- むだ毛処理の方法:毛抜きでの無理な処理は避け、肌に優しい方法を選びます
- ピアスの衛生管理:新しくピアスを開ける際は、清潔な環境で行い、アフターケアをしっかり行います
4. 摩擦・圧迫の軽減
- 適切なサイズの衣服:きつすぎる服は避け、通気性の良い素材を選びます
- 座位姿勢の工夫:長時間座る場合は、クッションを使用したり、時々姿勢を変えたりします
- カバンの持ち方:同じ肩にばかり負担をかけないようにします
5. 基礎疾患の管理
ニキビなどの皮膚疾患がある場合は、適切に治療することが粉瘤の予防にもつながります。皮膚科専門医の診察を受け、適切な治療を継続しましょう。
6. 定期的なセルフチェック
皮膚の状態を定期的にチェックし、新しいしこりができていないか、既存のしこりが変化していないかを確認します。早期発見・早期治療が重要です。
粉瘤の治療について
粉瘤は自然治癒しない疾患であり、根本的な治療には手術が必要です。
診断
視診と触診により、経験豊富な医師であればほぼ診断可能です。必要に応じて、超音波検査やMRI検査などで嚢腫の位置や大きさ、周囲組織との関係を詳しく調べることもあります。
治療方法
手術的治療(根治的治療)
粉瘤の根本的な治療は、嚢腫を袋ごと完全に摘出する手術です。
くり抜き法(へそ抜き法)
- 粉瘤の中心部の開口部(へそ)から特殊な器具で嚢腫をくり抜く方法
- 切開する範囲が小さく、傷跡が目立ちにくい
- 比較的小さな粉瘤に適している
- 日帰り手術が可能
小切開摘出術
- 粉瘤の上に小さく切開を入れ、嚢腫を丁寧に剥離して摘出する方法
- 嚢腫を確実に完全摘出できる
- 再発率が低い
- 局所麻酔下で日帰り手術が可能
切除術
- 粉瘤とその周囲の皮膚を含めて切除し、縫合する方法
- 大きな粉瘤や炎症を繰り返した粉瘤に対して行われる
- 傷跡は残るが、再発率は非常に低い
保存的治療(対症療法)
炎症を起こしている粉瘤に対しては、まず炎症を抑える治療を行います。
抗生物質の投与
- 細菌感染による炎症を抑えるため、内服薬や外用薬を使用
切開排膿
- 膿が溜まっている場合、切開して膿を排出し、炎症を軽減
- あくまで対症療法であり、嚢腫の袋は残るため再発する
圧迫・安静
- 炎症部位への刺激を避け、安静にする
手術のタイミング
非炎症時の手術が理想的
- 炎症がない状態で手術を行うのが最も良いタイミング
- 嚢腫の摘出がしやすく、傷の治りも良い
- 再発率も低い
炎症時の手術
- 原則として、炎症が強い時期の手術は避ける
- まず炎症を抑える治療を行い、炎症が落ち着いてから手術を行う
- ただし、炎症を繰り返す場合や患者の希望により、炎症時でも手術を行うこともある
手術後のケア
- 清潔保持:傷口を清潔に保ち、感染を予防します
- 安静:手術部位に無理な力を加えないようにします
- 抜糸:通常、術後1~2週間で抜糸します
- 経過観察:再発の有無を確認するため、定期的に受診します
再発について
嚢腫を完全に摘出できれば、再発することはほとんどありません。ただし、以下のような場合に再発することがあります:
- 嚢腫の壁の一部が残ってしまった場合
- 炎症が強い時期に手術を行い、嚢腫の摘出が不完全だった場合
- 別の場所に新たな粉瘤ができた場合(これは厳密には再発ではなく新生)

よくある質問
A: 残念ながら、粉瘤が自然に治ることはほとんどありません。粉瘤は皮膚の下にできた袋状の構造物で、この袋がある限り内容物が溜まり続けます。自然に小さくなることはあっても、袋そのものが消失することは期待できません。根本的な治療には手術が必要です。
A: 絶対に自分で潰さないでください。無理に圧迫して内容物を出すと、以下のようなリスクがあります:
細菌感染を起こし、炎症が悪化する
嚢腫が破れて内容物が皮下に広がり、強い炎症反応を起こす
傷跡が残る
完全に内容物を出すことはできず、必ず再発する
どうしても気になる場合は、医療機関を受診してください。
A: 小さく、症状がない粉瘤であれば、すぐに治療が必要というわけではありません。ただし、以下の理由から、できるだけ早めに治療することをおすすめします:
徐々に大きくなり、見た目が気になるようになる
突然炎症を起こして、痛みや腫れが出ることがある
大きくなってから手術すると、傷跡も大きくなる
何度も炎症を繰り返すと、手術が難しくなることがある
Q4: 粉瘤は遺伝しますか?
A: 粉瘤そのものが遺伝する病気ではありませんが、粉瘤ができやすい体質(皮脂腺の特性や皮膚の構造など)は遺伝的要因が関与している可能性があります。家族に粉瘤ができたことがある方は、自分にもできる可能性が比較的高いと考えられています。
Q5: 粉瘤の手術は痛いですか?
A: 手術は局所麻酔下で行うため、手術中の痛みはほとんどありません。麻酔の注射時にチクッとした痛みはありますが、その後は感覚がなくなります。術後は多少の痛みや違和感がありますが、処方される鎮痛剤で十分コントロール可能です。
Q6: 粉瘤の手術跡は残りますか?
A: 手術である以上、全く傷跡が残らないということはありませんが、最小限に抑えることは可能です。粉瘤が小さいうちに、炎症がない時期に手術を行うことで、傷跡を最小限にすることができます。また、形成外科的な縫合技術により、目立ちにくくすることも可能です。
Q7: 粉瘤と脂肪腫の違いは何ですか?
A: どちらも皮下にできるしこりですが、以下のような違いがあります:
粉瘤
- 表皮細胞でできた袋に老廃物が溜まったもの
- 中心に黒い点(開口部)があることが多い
- 独特の臭いがある
- 炎症を起こすことがある
脂肪腫
- 脂肪組織が増殖したもの
- 開口部はない
- 臭いはない
- 通常は炎症を起こさない
- 粉瘤より柔らかい
Q8: 粉瘤が癌になることはありますか?
A: 非常にまれですが、長期間放置した粉瘤が悪性化する可能性がゼロではないという報告があります。ただし、その頻度は極めて低く、過度に心配する必要はありません。しかし、以下のような変化がある場合は、早急に医療機関を受診してください:
- 急速に大きくなる
- 硬くなる
- 周囲の組織と固着して動かなくなる
- 潰瘍(ただれ)を形成する
Q9: 粉瘤の手術は保険適用されますか?
A: はい、粉瘤の摘出手術は保険診療の対象です。ただし、美容目的で行う場合や、特殊な治療法を希望する場合は自費診療となることもあります。詳しくは医療機関にお問い合わせください。
Q10: 粉瘤は複数できることがありますか?
A: はい、一度に複数の粉瘤ができることもありますし、治療後に別の場所に新たな粉瘤ができることもあります。粉瘤ができやすい体質の方は、全身のどこにでもできる可能性があります。定期的なセルフチェックと、気になる症状があれば早めの受診を心がけましょう。
まとめ
粉瘤は皮膚の下にできる良性腫瘍で、誰にでもできる可能性がありますが、特にできやすい人には一定の特徴があります。
粉瘤ができやすい人の主な特徴:
- 20代から40代の比較的若い年代
- 男性(ホルモンの影響)
- 家族に粉瘤の既往がある方(遺伝的要因)
- 皮脂分泌が多い体質
- 毛深い体質
- ニキビができやすい肌質
- 過去に外傷や皮膚損傷の経験がある方
- 不規則な生活習慣や偏った食生活
- 不適切なスキンケア習慣がある方
- 高温多湿な環境や粉塵・油分に接触する機会が多い職業
予防と対策のポイント:
- 適切なスキンケア(優しい洗顔と保湿)
- バランスの取れた食事と規則正しい生活
- 皮膚への外傷を避ける
- ストレス管理
- 定期的なセルフチェック
治療について:
- 粉瘤は自然に治らず、根本的治療には手術が必要
- 小さく、炎症がないうちに手術すると、傷跡も小さく済む
- 自己判断で潰したりせず、医療機関を受診することが大切
粉瘤は良性の疾患ですが、放置すると炎症を起こしたり、大きくなったりする可能性があります。気になるしこりやできものがあれば、早めに皮膚科や形成外科を受診することをおすすめします。
アイシークリニック池袋院では、粉瘤の診断から治療まで、経験豊富な医師が対応いたします。小さな傷跡で済むよう、最適な治療法をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしました:
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A – 粉瘤(表皮嚢腫)」 https://www.dermatol.or.jp/
- 日本形成外科学会「一般の皆様へ – 粉瘤」 https://www.jsprs.or.jp/
- 厚生労働省「国民向けe-ヘルスネット」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
- 日本医師会「健康の森 – 皮膚の病気」 https://www.med.or.jp/
- 国立がん研究センター「がん情報サービス – 皮膚の腫瘍」 https://ganjoho.jp/
※本記事の内容は一般的な医学情報を提供するものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務