
口のまわりに赤みや小さなブツブツが出て、なかなか治らない——そんな経験はありませんか。もしかしたら、それは「口囲皮膚炎(こういひふえん)」かもしれません。口囲皮膚炎は、口のまわりを中心に赤みや丘疹(きゅうしん)、かゆみ、ほてり感などが現れる慢性的な皮膚トラブルです。症状が軽い場合はセルフケアで改善できることもありますが、間違ったケアを続けると悪化するリスクもあります。この記事では、口囲皮膚炎の基本的な知識から、自分でできるケア方法、受診すべきタイミングまでをわかりやすく解説します。
目次
- 口囲皮膚炎とはどんな病気か
- 口囲皮膚炎の主な原因と悪化要因
- 口囲皮膚炎の症状の特徴
- 口囲皮膚炎を自分で治すために見直すべきこと
- スキンケアの正しい方法
- 生活習慣の改善で症状を和らげる
- 市販薬・外用薬の使い方と注意点
- セルフケアの限界と受診の目安
- 皮膚科ではどんな治療が行われるか
- まとめ
この記事のポイント
口囲皮膚炎はステロイド長期使用やスキンケア用品が原因で口周りに生じる慢性皮膚炎で、ニキビと混同されやすい。セルフケアは2〜4週間が目安で、改善しない場合は皮膚科で抗生物質やカルシニューリン阻害薬による治療が有効。
🎯 口囲皮膚炎とはどんな病気か
口囲皮膚炎(perioral dermatitis)は、口のまわりを中心に炎症が起きる皮膚疾患です。主に20〜40代の女性に多く見られますが、男性や子どもにも発症することがあります。名前に「皮膚炎」とありますが、アトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎とは異なるカテゴリーの疾患です。
見た目はニキビに似ていることが多く、「口のまわりにニキビが続く」と思って市販のニキビ治療薬を使い続けてしまう人もいます。しかし、口囲皮膚炎とニキビは原因が異なるため、ニキビ向けの治療が逆効果になることもあります。まずは自分の症状が口囲皮膚炎かどうかを正しく把握することが、適切なケアへの第一歩です。
また、口のまわりだけでなく、鼻のまわりや目のまわりにも症状が広がることがあります。鼻まわりや目まわりに症状が出る場合は「顔面皮膚炎(facial dermatitis)」とも呼ばれることがあり、より広い範囲での炎症が特徴です。いずれにせよ、セルフケアと医療機関での治療を適切に組み合わせることが回復への近道です。
Q. 口囲皮膚炎とニキビはどう見分けるの?
口囲皮膚炎とニキビの最大の違いは「コメドン(毛穴詰まり)の有無」です。ニキビには白ニキビ・黒ニキビのもとになるコメドンが見られますが、口囲皮膚炎では細かい赤い丘疹が主体で、コメドンはほぼ見られません。また、唇のすぐ際に炎症が出にくい「蒼白帯」が現れる点も口囲皮膚炎に特徴的です。
📋 口囲皮膚炎の主な原因と悪化要因
口囲皮膚炎の原因は、現時点でまだ完全には解明されていません。しかし、さまざまな研究や臨床経験から、いくつかの因子が関与していることがわかっています。
🦠 ステロイド外用薬の長期使用
口囲皮膚炎の最も重要な原因のひとつとして挙げられるのが、ステロイド外用薬の長期・不適切使用です。顔の湿疹や赤みに対してステロイド剤を使い続けると、皮膚のバリア機能が低下し、口囲皮膚炎を引き起こすことがあります。また、一度ステロイドを塗り始めると、やめたときにリバウンド的に症状が悪化するため、なかなかやめられなくなるという悪循環に陥りやすい点も特徴です。
👴 化粧品・スキンケア用品の影響
保湿クリームやファンデーション、日焼け止めなどに含まれる油分や特定の成分が、口囲皮膚炎の引き金になることがあります。特に油分の多いリッチなテクスチャーのクリームや、フッ素入りの歯磨き粉との関連も一部で指摘されています。スキンケア用品を変えたり、使用量を増やしたりした後に症状が出始めた場合は、それが原因となっている可能性があります。
🔸 細菌・微生物の関与
皮膚常在菌の一種であるデモデックス(ニキビダニ)や、カンジダ菌などの真菌、フゾバクテリウムなどの細菌が関与しているという研究もあります。ただし、これらの微生物が直接の原因なのか、皮膚バリアが弱まった結果として増殖しやすくなるのかは、まだ議論が続いています。
💧 ホルモンバランスの変化
女性に多い疾患であることから、ホルモンバランスとの関係も指摘されています。月経周期や妊娠、ピルの使用などによってホルモン環境が変化すると、症状が出やすくなったり悪化したりすることがあります。
✨ 紫外線・乾燥・ストレス
紫外線による肌へのダメージ、乾燥による肌バリアの低下、精神的なストレスなども悪化要因として知られています。特にマスクの長時間着用によって口まわりの蒸れや摩擦が生じると、症状が出やすくなる人もいます。
💊 口囲皮膚炎の症状の特徴
口囲皮膚炎の症状は人によって異なりますが、いくつかの共通した特徴があります。これらの特徴を知ることで、他の皮膚疾患との区別がしやすくなります。
最も典型的な症状は、口のまわりに現れる細かい赤い丘疹(小さなブツブツ)です。丘疹は集まって分布していることが多く、境界がはっきりしない赤みを伴うことがあります。かゆみや灼熱感(ひりひり感)を伴う場合もありますが、まったく自覚症状がない場合もあります。
注目すべき点として、口唇(くちびる)の直接周囲(鼻唇溝と呼ばれる部分)には症状が出にくく、唇のすぐ際の皮膚には比較的炎症が少ないという特徴があります。このいわゆる「pale zone(蒼白帯)」と呼ばれる唇際の正常域は、口囲皮膚炎の診断の手がかりになります。
また、ニキビとの違いとして、コメドン(白ニキビや黒ニキビのもとになる毛穴詰まり)がほとんど見られないという点があります。ニキビではコメドンが典型的に認められますが、口囲皮膚炎では丘疹が主体で、コメドンはほぼ見られません。この違いがセルフチェックのポイントになります。
症状が長引く場合は、赤みが慢性的になったり、皮膚が乾燥して薄く剥けるような状態になったりすることもあります。軽症から中等症の場合はセルフケアで対処できることもありますが、広範囲に炎症が広がっている場合や、症状が重い場合は専門家の診断と治療が必要です。
Q. 口囲皮膚炎の主な原因は何ですか?
口囲皮膚炎の主な原因には、ステロイド外用薬の長期・不適切使用、油分の多い保湿クリームやファンデーションなどのスキンケア用品の影響、ホルモンバランスの変化、紫外線・乾燥・ストレスなどが挙げられます。マスクの長時間着用による摩擦や蒸れも悪化要因となる場合があります。
🏥 口囲皮膚炎を自分で治すために見直すべきこと
口囲皮膚炎のセルフケアの基本は、「皮膚への刺激を減らし、バリア機能を回復させること」です。以下に、自分でできる取り組みを具体的に紹介します。
📌 ステロイド外用薬をやめる
もし顔にステロイド外用薬を使用している場合、それが口囲皮膚炎の原因または悪化要因になっている可能性があります。ただし、急にやめると一時的に症状が悪化する「リバウンド」が起きることがあります。ステロイドを自己判断で急に中断するのは症状が一時的に悪化するリスクがあるため、使用している場合は皮膚科医に相談しながら段階的に減量することが望ましいです。
一方で、ステロイドをまったく使用していない場合は、この点を気にする必要はありません。重要なのは「自分が今どんな薬やケア用品を使っているか」を振り返ることです。
▶️ スキンケア用品を最小限にする
多くのスキンケア用品を重ね使いしている場合は、思い切って使用するアイテムを減らすことが改善への鍵となります。特に油分の多いクリームや、香料・防腐剤などの添加物が多い製品は一時的に使用を中止し、肌への刺激を最小限にするところから始めましょう。
具体的には、洗顔後は低刺激の保湿剤のみを薄く使用し、それ以外は何も塗らない「ゼロ塗布」を試してみる方法があります。症状が出ている間はリッチなクリームやオイル系の製品は避け、肌への余計な刺激を断つことが大切です。
🔹 化粧品を控える
症状が出ている間は、口まわりへのメイクをできるだけ控えることをおすすめします。ファンデーションやコンシーラーなどを使うと皮膚への刺激になるだけでなく、毛穴を塞ぎ炎症を悪化させる可能性があります。どうしてもメイクが必要な場合は、低刺激・ノンコメドジェニックと表示のある製品を選び、口まわりへの塗布を最小限にしましょう。
📍 歯磨き粉を見直す
フッ素入りの歯磨き粉が口囲皮膚炎の悪化要因になるという報告があります。すべての人に当てはまるわけではありませんが、フッ素フリーの歯磨き粉に変えることで症状が改善したという事例もあります。試してみる価値がある方法のひとつです。歯磨き後は口まわりをよく洗い流し、歯磨き粉が残らないようにすることも大切です。
⚠️ スキンケアの正しい方法
口囲皮膚炎があるときのスキンケアは、とにかく「低刺激」「シンプル」を心がけることが重要です。以下に、具体的なポイントを紹介します。
💫 洗顔の方法
洗顔は、泡立ちがよく低刺激な洗顔料を使い、ぬるま湯で丁寧に洗い流します。ゴシゴシとこするような洗い方は皮膚への刺激になるため、泡を肌に乗せてやさしくなでるようにして洗いましょう。洗顔料の成分は、硫酸系界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウムなど)が少ないもの、または含まれないものを選ぶと皮膚への刺激を抑えられます。
また、洗顔後にタオルでふくときも、擦らずに押し当てるように水分を吸収させましょう。肌の摩擦を極力減らすことが大切です。
🦠 保湿の方法
保湿は皮膚バリアを守るために必要ですが、口囲皮膚炎がある場合は選ぶ製品に注意が必要です。ワセリンや油分の多い製品は、炎症を悪化させる可能性があるため、一時的に使用を避けたほうがよいという意見もあります。一方で、適切な保湿は皮膚バリアの回復を助けるという考え方もあり、どちらが正解かは個人差があります。
一般的には、セラミドやヒアルロン酸を主成分とした、香料・防腐剤・着色料などの添加物が少ない保湿剤を選ぶことが推奨されます。使用量は少量にとどめ、伸ばすときも擦らずにやさしくなじませましょう。
👴 日焼け止めの選び方
紫外線は皮膚炎の悪化要因になります。日焼け止めは使ったほうがよいのですが、油分が多い製品や、ケミカル系(紫外線吸収剤)の日焼け止めは刺激になる場合があります。ミネラル系(紫外線散乱剤:酸化亜鉛・酸化チタン)の日焼け止めは比較的低刺激とされており、口囲皮膚炎がある時期には選択肢として考えられます。ただし、使用感や成分の合う・合わないは個人差があるため、少量から試してみることをおすすめします。
🔸 マスクの影響に注意する
マスクを長時間つけていると、口まわりが蒸れ、摩擦が生じて皮膚への刺激になります。マスクによって皮膚の状態が悪化していると感じる場合は、こまめに外して換気する、マスクの素材を通気性のよいものに変える、マスクの内側に清潔なガーゼを当てて摩擦を減らすといった工夫が有効です。
Q. 口囲皮膚炎のセルフケアの正しい方法は?
口囲皮膚炎のセルフケアは、皮膚への刺激を減らしバリア機能を回復させることが基本です。具体的には、顔へのステロイド外用薬の使用を見直す、スキンケア用品をシンプルにする、口まわりへのメイクを控える、フッ素フリーの歯磨き粉に変えるといった取り組みが有効です。目安は2〜4週間継続することです。
🔍 生活習慣の改善で症状を和らげる
皮膚の状態は、毎日の生活習慣と深く関係しています。スキンケアの見直しと並行して、生活習慣を整えることも口囲皮膚炎の改善に役立ちます。
💧 睡眠と休養をしっかりとる
睡眠中は皮膚の修復・再生が行われます。睡眠不足が続くと、免疫機能が低下し、皮膚のバリア機能も弱まります。毎日7〜8時間の質のよい睡眠を確保することが、皮膚の健康を支える基本です。就寝前にスマートフォンやパソコンの使用を控え、睡眠の質を高める工夫をしましょう。
✨ ストレスを管理する
ストレスは皮膚炎の悪化要因のひとつです。精神的なストレスが続くと、ホルモンバランスが乱れ、炎症を促進する物質が増加することが知られています。ヨガ、瞑想、軽い運動、趣味の時間を持つなど、自分に合ったストレス解消法を日常に取り入れることが大切です。
📌 食事のバランスを見直す
皮膚の健康に関わる栄養素を十分に摂ることも重要です。ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛などの栄養素は皮膚バリアの維持や炎症の抑制に関与しています。野菜・果物・魚・ナッツ類などをバランスよく摂る食生活を心がけましょう。一方で、砂糖の多い食品や加工食品、アルコールは炎症を助長する可能性があるため、過剰摂取は控えることが望ましいです。
▶️ 水分摂取を増やす
体内の水分が不足すると、皮膚も乾燥しやすくなります。1日1.5〜2リットルを目安に水分を摂ることを意識しましょう。ただし、カフェインの多いコーヒーや紅茶は利尿作用があるため、水やノンカフェインのハーブティーを中心にすることをおすすめします。
🔹 タバコを控える
喫煙は皮膚の血流を悪化させ、バリア機能を低下させます。タバコを吸っている場合は、禁煙または本数を減らすことが皮膚全体の健康にとってプラスになります。
📝 市販薬・外用薬の使い方と注意点
「病院に行く前に、まず市販薬で対処したい」と考える方も多いと思います。ここでは、市販薬の使い方と注意点について説明します。
📍 市販のステロイド外用薬は使わない
最も重要な注意点は、市販のステロイド外用薬を口囲皮膚炎に使用しないことです。ステロイドは一時的に赤みを抑える効果がありますが、長期的には口囲皮膚炎を引き起こしたり悪化させたりする原因になります。「赤みが引いたからいいや」と思ってステロイドを塗り続けると、依存性が生まれ、かえって症状が長引く可能性があります。
💫 市販のニキビ治療薬との違い
口囲皮膚炎はニキビに似た見た目をしていますが、ニキビ治療薬(過酸化ベンゾイル、サリチル酸など)が効くとは限りません。これらの成分は皮膚への刺激性があり、口囲皮膚炎を悪化させる可能性もあります。市販のニキビ治療薬を使っても改善しない場合は、口囲皮膚炎の可能性を考えて使用を中止することが賢明です。
🦠 抗ヒスタミン薬(かゆみ止め)の活用
かゆみが強い場合には、市販の内服抗ヒスタミン薬(アレルギー薬)がかゆみを抑える目的で使用されることがあります。ただし、これは根本的な治療ではなくあくまで症状を緩和するものです。使用する際は用法・用量を守り、長期使用は避けるようにしましょう。
👴 低刺激の保湿剤で肌を守る
治療薬としてではなく、皮膚バリアを守るための保湿剤として、セラミド配合の低刺激保湿剤を使用することは有効です。炎症が起きている部位への保湿は、バリア機能の回復を助ける可能性があります。ただし、先述のように使う量は最小限にとどめ、厚塗りは避けましょう。
🔸 天然・植物由来成分への過信に注意
「天然由来だから安心」と思いがちですが、ティーツリーオイル、ラベンダーオイルなどの精油(エッセンシャルオイル)は原液では皮膚への刺激が強く、炎症を悪化させることがあります。また、アロエベラやオリーブオイルなどもアレルギーや刺激の原因となる場合があります。自然由来の成分であっても皮膚に塗布する際は注意が必要で、口囲皮膚炎が疑われる期間は新しい成分の使用は控えることをおすすめします。
Q. 皮膚科ではどんな治療が受けられますか?
皮膚科では、抗炎症作用も持つテトラサイクリン系抗生物質(ミノサイクリンなど)の内服や、メトロニダゾールなどの外用抗生物質が処方されます。ステロイドを使わずに炎症を抑えるタクロリムスなどのカルシニューリン阻害薬が用いられることもあります。薬物療法と並行して、個人に合わせたスキンケア指導も行われます。
💡 セルフケアの限界と受診の目安

セルフケアはあくまで補助的な手段であり、すべての口囲皮膚炎が自分で治るわけではありません。以下のような状況では、皮膚科への受診を検討してください。
💧 2〜4週間セルフケアを続けても改善しない
スキンケアの見直しや生活習慣の改善を2〜4週間続けても症状が改善しない場合、または悪化している場合は、セルフケアだけでは対応が難しい状態と考えられます。皮膚科を受診して正確な診断と治療を受けることが必要です。
✨ 症状が広範囲に広がっている
口まわりだけでなく、目のまわりや鼻まわり、頬など広い範囲に炎症が広がっている場合は、より専門的な治療が必要です。また、皮膚の状態が非常に赤く、痛みや灼熱感が強い場合も早めの受診をおすすめします。
📌 ステロイド依存が疑われる場合
長期間にわたってステロイド外用薬を顔に使用していた場合、単純にやめると強いリバウンド症状が起きることがあります。このような場合、自己判断で急に中止するのは危険です。皮膚科医の指導のもと、適切な方法でステロイドを減量・中止することが安全です。
▶️ ニキビや酒さとの鑑別が必要な場合
口囲皮膚炎は、ニキビ(尋常性ざ瘡)、酒さ(酒さ様皮膚炎)、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎など、似た症状の皮膚疾患と区別が難しいことがあります。自己診断で間違った対処をし続けると症状が長引く原因になります。症状が続く場合は、皮膚科医による正確な診断を受けることが重要です。
🔹 精神的なストレスが大きくなっている場合
顔の見た目の変化は、精神的なストレスや自己肯定感の低下につながることがあります。「外出したくない」「人と会いたくない」といった気持ちが続く場合は、皮膚の治療と同時にメンタル面のサポートも必要です。早めに医療機関を受診し、適切なサポートを受けることが大切です。
✨ 皮膚科ではどんな治療が行われるか
口囲皮膚炎が疑われる場合、皮膚科ではどのような診察・治療が行われるのか、あらかじめ知っておくと受診のハードルが下がります。
📍 問診と視診による診断
皮膚科では、まず問診が行われます。いつから症状が出ているか、どんなスキンケア用品を使っているか、ステロイドを使用していたかどうか、これまでの経過などを詳しく聞かれます。その後、肌の状態を直接観察する視診によって診断が進められます。必要に応じてダーモスコピー(特殊な拡大鏡)を用いた詳細な観察が行われることもあります。
💫 抗生物質の内服・外用
口囲皮膚炎の標準的な治療として、テトラサイクリン系の抗生物質(ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど)の内服が選択されることがあります。これらの薬は抗菌作用だけでなく、抗炎症作用も持っています。通常、数週間〜数ヶ月にわたって使用します。また、外用抗生物質(メトロニダゾール、クリンダマイシンなど)が処方されることもあります。
🦠 外用のカルシニューリン阻害薬
タクロリムス(プロトピック)やピメクロリムス(エリデル)といったカルシニューリン阻害薬の外用薬が処方されることがあります。これらはステロイドを使わずに炎症を抑える薬で、顔面への外用薬として使用されます。ステロイドによる副作用を避けながら炎症を抑えられるため、口囲皮膚炎の治療に適していることがあります。
👴 アゼライン酸の外用
天然に存在する有機酸であるアゼライン酸は、ニキビや酒さの治療に使われることがありますが、口囲皮膚炎にも効果が期待される場合があります。抗菌・抗炎症作用を持ち、皮膚への刺激が比較的少ないとされています。日本では保険適用外のため、自費診療として処方されることがあります。
🔸 スキンケア指導
薬物療法と並行して、適切なスキンケアの方法について指導が行われます。使うべき製品・避けるべき製品、洗顔方法、保湿の仕方など、個人の状況に合わせたアドバイスを受けることができます。医師や看護師・薬剤師に、普段使っているスキンケア用品を持参して見てもらうのもよい方法です。
💧 治療経過と再発防止
口囲皮膚炎は適切な治療で改善することが多いですが、再発することもある疾患です。治療が終わった後も、引き金となっていたスキンケア用品や生活習慣の見直しを継続することが再発防止につながります。症状が落ち着いた後も定期的に皮膚の状態を観察し、再発の兆候があれば早めに受診することが大切です。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「当院では、口囲皮膚炎と気づかずにニキビ用の市販薬やステロイド外用薬を長期間使い続けた結果、症状が悪化してから受診される患者様が少なくありません。口まわりの赤みやブツブツが続く場合は、自己判断でのケアに限界を感じる前に、早めにご相談いただくことで、より早く適切な治療につなげることができます。正確な診断のもと、スキンケアの見直しと適切な薬物療法を組み合わせることで改善が期待できる疾患ですので、一人で悩まずぜひお気軽にご来院ください。」
📌 よくある質問
最大の違いは「コメドン(毛穴詰まり)の有無」です。ニキビには白ニキビや黒ニキビのもとになるコメドンが見られますが、口囲皮膚炎ではほとんど見られず、細かい赤い丘疹が主体です。また、唇のすぐ際の皮膚に炎症が出にくい「蒼白帯」が見られる点も口囲皮膚炎の特徴です。
口囲皮膚炎には使用しないことが重要です。ステロイドは一時的に赤みを抑える効果がありますが、長期使用により症状を引き起こしたり悪化させたりする原因になります。また、使用をやめるとリバウンドで症状が悪化することがあるため、すでに使用中の場合は自己判断で急にやめず、皮膚科医に相談することをおすすめします。
スキンケアのシンプル化や生活習慣の見直しなどのセルフケアを2〜4週間続けても改善が見られない場合、または悪化している場合は、セルフケアだけでの対応が難しい状態と考えられます。症状が広範囲に及ぶ場合や、痛み・灼熱感が強い場合は早めに皮膚科を受診してください。
主な治療として、抗炎症作用も持つテトラサイクリン系抗生物質の内服や、メトロニダゾールなどの外用抗生物質が処方されます。また、ステロイドを使わずに炎症を抑えるカルシニューリン阻害薬の外用薬が使われることもあります。薬物療法と並行して、個人の状況に合わせたスキンケア指導も行われます。
治療後も、症状の引き金となっていたスキンケア用品や生活習慣の見直しを継続することが大切です。油分の多いクリームやステロイド外用薬の不適切な使用を避け、洗顔・保湿はシンプルに保ちましょう。また、十分な睡眠・ストレス管理・バランスのよい食事など、日常生活の改善も再発防止に役立ちます。再発の兆候があれば早めにご相談ください。
🎯 まとめ
口囲皮膚炎は、口のまわりを中心に現れる慢性的な皮膚炎で、ニキビと混同されやすい疾患です。原因はステロイドの長期使用、スキンケア用品の影響、ホルモンバランス、ストレスなど多岐にわたります。セルフケアとしては、ステロイドの使用をやめる・スキンケアをシンプルにする・生活習慣を整えるといった取り組みが有効です。ただし、2〜4週間セルフケアを続けても改善しない場合や、症状が広範囲に及ぶ場合は皮膚科への受診が必要です。
口囲皮膚炎は適切なケアと治療で改善できる疾患です。「ニキビかな」「ただの荒れかな」と放置せず、気になる症状が続く場合は早めに専門家に相談することをおすすめします。アイシークリニック池袋院では、皮膚のトラブルに関するご相談を随時受け付けています。自己判断で悩み続けるよりも、専門家に診てもらうことで、より早く適切な解決策にたどり着けるでしょう。
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📚 参考文献
- 日本皮膚科学会 – 口囲皮膚炎の診断基準・治療方針・ステロイド外用薬の適正使用に関するガイドライン情報
- PubMed – 口囲皮膚炎(perioral dermatitis)の原因・症状・治療法(抗生物質・カルシニューリン阻害薬・アゼライン酸など)に関する国際的な臨床研究・査読論文
- 厚生労働省 – ステロイド外用薬の適正使用・副作用リスクおよび市販薬使用上の注意に関する公式情報
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務